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「文武両道」

鶴岡工業高等専門学校 機械工学科5年  長坂 泰明


  私は高専に6年間在学していました.つまり1年留年したのです.傍から見れば1年間無駄にしたと思われるかもしれません.しかし,私にとって留年した期間は決して無駄ではありませんでした.その1年間で自分自身が少し成長できたからです.1番は勉強と部活の両立です.私は剣道部に在籍し,剣道が大好きで,留年する以前は剣道ばかりしていました.そして,『今日は部活で疲れたから』と自分を甘やかし勉強から逃げていました.しかし留年が決まり,『両親に勉強と剣道を両立できないのであれば,剣道をあきらめなさい』と言われました.私が剣道の試合に出て活躍するのを誰よりも楽しみにしていた両親の言葉にとても大きな衝撃を受け,休部することにしました.大好きな剣道をできない日々は,私にとって大変苦痛であり,今までの自分の甘さに初めて気づきました.どうしても剣道を続けたかった私は,勉強と剣道の両立を両親と約束し部活を再開しました.その後少しずつではありましたが,勉強から逃げなくなり,同時に剣道に対する心構えも変わったせいか,近年合格率が低くなっている四段の昇段審査にも合格することができました.念願の5年生に進級でき,剣道以外にもやりがいのある物を見つけることができました.それは卒業研究です.私の卒業研究のテーマは『ステントの剛性に関する研究』ですが今年はほぼゼロからのスタートでした.ステントについて何も知らなかった私にとって,日々新しい物,新しい知識と触れ合う事や,よりよい実験をするため装置や実験方法を考えることは,とても新鮮味があり有意義なものでした.自分が研究に没頭していることは以前の私からは想像できません.きっとこれも自分の中の何かが変わったからではないかと思います.
  2ヶ月後,卒業を控えもう1度6年間の高専生活を振り返ると,やはり留年した1年間が1番印象に残っています.無事就職も決まりなんとか卒業できそうな今,今まで私を支えてくれた人たちへの感謝の気持ちでいっぱいです.留年した自分を暖かく受け入れてくれたクラスメートのみんな,落ちこぼれ寸前だった私を最後まで見捨てずご指導してくださった先生方,私を研究に没頭させてくれた指導教員の先生,剣道部のみんな,そして何よりいつも私の支えになってくれたお父さん,お母さん.みなさんいままで本当にありがとうございました.これから,社会にでればますます,色々なことの両立が要求されると思います.あの留年した1年で学習したことをこれらも無にしないよう,ますます精進していきたいと思います.



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