「研究室紹介 −ビニールハウス加熱におけるヒートパイプ利用の効果−」
八戸工業大学大学院2年 市川 法昭
私の研究室では、熱を有効利用する様々な研究を行っています。主なテーマとしては、氷点下冷熱の製造を目的とする吸収冷凍機の開発、冬季の放射冷却を利用して大型の氷を製造し、大規模な冷熱蓄熱を目指す研究、そして、私の研究テーマである、ヒートパイプを使ってビニールハウスの効果的な加熱・保温を目的とする研究、この三つです。そこで、私の研究テーマである『ビニールハウス加熱におけるヒートパイプ利用の効果』について、簡単にご紹介したいと思います。
  冬季の北海道や東北では、雪の影響に加え、外気温が著しく低下することから、農作物の成長が芳しくありません。そこで、これらの地域では、ガラス温室やビニールハウスなどの園芸施設を利用し、農作物の生育を促進しています。また、農業の重要性が見直されている現在、このような園芸施設は増加する傾向にあります。しかし、暖房設備を備えていても、効果的な加熱を施すことが難しいため、ハウス壁面付近の作物の成長はよくありません。よって、作付けする土壌面積が限られ、耕作面積は減少します。さらに、暖房負荷が高いことに加え、収益率が悪いため、冬の農業は休止状態にあるのが現状です。
しかし、日射量は冬季でも莫大な量であり、伝熱工学的見地から、効果的な断熱を施し、加熱方法を工夫すれば、冬の農業の収益が改善されると推察されます。
  ヒートパイプから伝達される熱は、ヒートパイプ周りの自然対流と放射伝熱の複合伝熱で伝わります。一般に用いられているブロアー加熱は強制対流による加熱方法であり、ハウスの隅々まで効率良く加熱する事が困難です。しかし、ヒートパイプ加熱では、ヒートパイプの温度均一性を利用できるので、寒い部分を効果的に加熱することが可能であり、大幅な省エネルギー化が期待されます。また、従来ビニール壁との放射伝熱で冷却され、生育が悪かった壁付近にも、ヒートパイプからの放射伝熱で加熱することが可能となり、作地面積の拡大が期待されます。
これまで、ヒートパイプ加熱により、放射伝熱による農作物への直接加熱が可能となり、効果的な加温ができること、また、ビニールハウス外への熱移動の殆どは、周囲空気との対流熱伝達で流出していること、さらに、ヒートパイプの設置本数及び加熱温度を最適化することで、ハウス壁面近傍の作物に対する効果的な放射伝熱が可能になり、イニシャルコスト低減につながることを明らかにしてきました。
現段階では、イニシャルコストが従来型のハウスに比べて多くかかるため、今後は、さらにコストを削減するための方法・手法を開発したいと考えています。
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