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「日本とフランスの学生」

八戸高専機械工学科 機械・電気システム工学専攻2年  大池 大知


  去る2006年3月,私は八戸高専とフランスのリール科学技術大学(以下IUT)の交換留学生として2週間,フランスのリール市に滞在しました.リール市はフランス北部のノール県の県庁所在地で,パリからTGVで1時間程度の距離にあります.パリよりもベルギーとの国境が近く,電車で20分程度でベルギーに行くこともできます.そのリール市にあるIUTは初代学長が有名な細菌学者であるルイ・パスツールという名門の大学です.
  ここで,約2週間研修を行いましたが,途中,フランスの雇用に関する新法律であるCPEをめぐって,IUTを含むフランス中の大学がストライキをおこし,研修が中断するなど,今の日本ではありえない奇特な経験もしました.研修は主に,IUTでの研究の紹介と3DCADであるAutoCAD Inventorの実習でした.ほかにもいろいろ予定されていましたが,ストライキで結構つぶれてしまいました.実習も僕にとっては印象に残るものでしたが,それ以上に,印象に残ったのは学生との交流でした. 実習の休憩時間に,機械科の学生と話す機会がありましたが,そのときの会話が日本の同級生とまったく同じ感覚で話せたのは,今となっても不思議です.もちろん,こちらはフランス語がほとんど話せませんし,向こうも日本語が話せません.しかも,お互い英語はそれほど得意ではないので,完璧な表現はできません.それでも,自己紹介や趣味などの話題になると,相手の言うことが完璧に理解でき,しかも,相手もこちらの言うことを完全に理解してくれました.まして車などの趣味の話題になると完全に以心伝心です.
「マツダのMX5(ロードスターの欧州名)って,乗ったことないけど,面白そうだよなぁ.俺,あれ欲しいんだよね」
「ああ,わかるわかる.面白そうだよね.俺の友達がはまって乗ってて,いろいろいじってたぜ.パーツも多いからいじりやすいんだよね.」
とまあ,こんな感じの会話が英語でお互いペラペラ出てくるわけです.なんといっても同じ機械科の学生同士,類は友を呼ぶとはよく言ったもので,脇から脇からほかの学生も加わって,すっかり駄弁りモードです.言葉の壁なんかありません.日本にいる友人とまったく同じです.読んでいる雑誌も,パソコンのデスクトップの壁紙も,休み時間の話題もまったく同じ.違うのは言葉と体格くらいです.そんなことをしみじみと感じながら廊下に出ると,コピー機の前で一生懸命コピーをとる学生が….なにしてんの?と声をかけると
「いや,明日テストだからさ,過去問とノート借りてコピーしてる・・・」
こんなところまで同じだと,親近感というレベルを超えています.IUTでの研究やフランスの文化・芸術など,もちろん多くの刺激を得ることができましたが,研修で一番の刺激は,国は違へど機械の学生はどこまで行っても機械の学生であるということでした.



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