目次へ戻る   

研究内容紹介

いわき明星大学大学院 理工学研究科 物理工学専攻1年 手塚 俊文

 私の研究は、高温下において高強度を有し、比強度に優れる炭素繊維炭素複合材料(以下C/C複合材料)という強化炭素繊維と炭素マトリックスから形成される超高温耐熱材料の高強度化に関する研究をJAXA宇宙科学研究本部と共同で行っています。C/C複合材料は、このような特性を有していることから、次世代宇宙機であるスペースプレーンの船体材料として研究、開発が進められています。さらに、これまで固体ロケットのノズルスロートにはグラファイトが使用されてきましたが発射直後の急激な温度上昇に伴う熱衝撃により破損するという事例が報告され、このノズルスロートにもより靭性の高いC/C複合材料の適用が検討されています。しかしながら、C/C複合材料は複合則という一般の複合材料の強度を算出することのできる式がありますが、C/C複合材料はこの複合則から求められる理論強度と実験により得られる強度には大きな差があり、低い強度発現率が実用上大きな問題となっています。C/C複合材料は一般にCFRPに熱処理を施すことにより作製されますが、これまでの研究で、CFRPの強度発現率が100%近い値を示すのに対して、C/C複合材料では20%の値しか示さないという結果が報告されています。そこで、C/C複合材料の低い強度発現率が繊維と母相界面の接着性に起因すると考え、繊維-母相界面性状の詳細な解析を行うと共に、機械的性質に及ぼす界面性状の影響を明らかにすることが私の研究目的です。

 これまでの研究により、CFRPの組織観察より、繊維とマトリックスの密着性が良好であるために高い強度発現率を有し、また、C/C複合材料の組織観察では、熱処理を施すことにより繊維とマトリックスで剥離が起こってしまうためだと考えられています。さらに、このような剥離などが原因で密度が低いことも低い強度発現率を示す問題の1つとなっています。そこで熱処理と、マトリックス前駆体であるフェノール樹脂を含浸させるというこの工程を何回も繰り返すことにより高密度化することができます。この高密度化処理されたC/C複合材料の組織観察を行った結果、熱処理を繰り返したことによりマトリックスに結晶化した部分と結晶化していない部分が観察されました。さらに、このC/C複合材料には繊維とマトリックスの剥離だけではなく、結晶化した部分と結晶化していない部分での剥離も観察されました。このような部分によりC/C複合材料の強度発現率が低下したものだと考えられています。今後の私の目標は、これらの結晶化した部分と非結晶の部分がどのような温度で観察されるかを調査すると共に強度と熱処理の関係について調査し、C/C複合材料を超強度超耐熱材料として実用化させることです。

 このように、私の行っている研究は、スペースプレーンという未来の有翼飛翔体の材料の開発に携わっています。もし私の研究により、このC/C複合材料の強度が改善され、使われたとしたらこんなうれしいことはありません。そのためには今後、この研究に没頭し、さらなるC/C複合材料強度低下の原因の発見を追求し、人類のために貢献できればと思っています。

目次へ戻る