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性能だけじゃなくて

 秋田大学工学資源学研究科 博士前期課程1年 小野 仁子

 今私たちは機械工学科で,色々なことを習っている.ここでの知識が,社会で様々な製品の作成等に役立てば良いと思うし,そうでなくとも学習で得た知識は,何らかの形でこれからの私たちの生活に生かされていくのだろうと思う.日本には技術力があり,日本製品は全体的な品質水準が高いと言われている.私は日本の技術的な面はこれからも伸びてゆくと信じている.

 しかし,将来的には技術力だけでやっていけるだろうか?

 自分は工作が好きで,小さい頃から布や紙や木や粘土,塗料等で,暇があれば何かを作っていた.しかしある日,自分の作ったものよりお店で売られている商品の方がずっと格好良いと知人に言われて自分でもそう実感したとき,それまで気付かなかった自分に対してかなりがっかりした思い出がある.

 職人的な手作業で物を作っても,全体の格好が悪ければ魅力があるとは言い難い.考えてみれば当たり前のことなのだけれど,もの作りに掛けた手間や精度,作業時間に対する評価と他の人が欲しいと思うかどうかということは必ずしも一致しないのである.

 他の人が欲しいと思うものは,技術や性能・機能のみならず,デザインや使いやすさ等の付加価値とのバランスが重要だと思う.しかし,商品の良いバランスは製品の種類や人の趣向によって大きく異なるから話が厄介になる.

 例えば,インテリアにこだわりを持つ友人は,パソコンを性能ではなく外見で決める.ラジカセ一つにしても,性能はどうせどの会社も一緒だよとか言いながら,格好良いものをその場の直感で決める.友人にとってデザインは他の全てに優先する.

 使いやすさが重要な時もある.例えば自分はドライバーでねじを回すときに,自分の力では回せないことが多々ある.そのため私は折に触れ,グリップの材質や半径が適当で,トルクを大きく掛けられるような工具を探している.工作機械についても同様で,力の弱い人や女性,高齢者の視点に立った,人にやさしい製品がもっと発売されれば良いなとか思っている.この場合,適正範囲であれば価格よりも使いやすさが優先される.

 これからは大量生産では人件費の安い外国にはかなわない.そこで我々は,今後何らかの付加価値で勝負していけるように,専門の追求のみならず,広い視点でもの作りを行う能力も得られたら良いなと思う.

 幸い,日本には独自の文化や芸術が根付いていると思う.将来はこれら文化・芸術も技術と一緒に武器にすることで,国際社会でも独自の地位を築いていけたら良いだろうなと思う.

 …という訳で,専門バカにならないように今日も元気に(社会)勉強に行って来ま〜す!

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