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ピエゾトラクションドライブ
−卒業研究紹介−

鶴岡工業高等専門学校

機械工学科5年  井上 大輔

 この原稿を書いている時点(12/17)で、これまで僕が行なった卒業研究の9割は電気に関することでした。機械工学科である自分にとって、この研究は大変なものでした。

 僕の研究テーマは、トラクションドライブを精密位置決めに用いることです。そのためには超低速駆動ができ、なおかつ、微小な動きを制御できる必要があります。そこで、駆動源にピエゾアクチュエータ(圧電素子)を用いることにしました。  圧電素子は「電位」を「変位」に変える装置で、コンデンサに近い性質を持っています。そのため交流駆動するには、周波数に比例した電流が必要になります。つまり、高周波駆動するには、高い出力電流を持つ電源が必要になるのです。  でも、初めのうちはそのことを知らず、電源装置の改良に多くの時間を費やしました。結局、現在の電源では無理だということがわかり、より高出力のアンプを買うことになりました。しかし、カタログを見ても、分からない専門用語が次々に出てきて、どのアンプを買えばよいのか選ぶのにも、また一苦労しました。

 これ以外にも、電気的な問題は山積みでした。

 そのひとつは「圧電素子の分極」です。加藤研に入って一番最初の仕事がこれでした。圧電素子は、逆方向に電気を流したり、長い間使わなかったりすると、電位−変位の変換特性が変化してしまうため,分極処理を施す必要があります。(といっても、電圧を一度加えるだけですが)そのために分極処理用の回路まで作りました。

 また、「圧電素子の変位測定」も大変でした。測定にはレーザ光を用いていますが,これがなかなかの曲者で、測定法をマスターするのに一苦労しました。

 でも、分からないことも、調べてみると昔の教科書に載っていたり、ただの勘違いだったりして、改めて自分の勉強不足を実感しました。また、問題が解決したときのうれしさは、これまでに味わったことのないものでした。そして、それがなによりも研究を進める力になっています。

 今は、新しいアンプで研究を続けています。ある日、実験をしていると、加藤先生がさりげなく近づいて来て「機械学会学生会に申し込んでおいたよ」「1月末には原稿を出すからネ。逆算して、計画を立てておくこと。正月休みも学校に来ていいんだよ」と、ヤサシク(?)ささやいて行きました。

 あと一ヶ月、忙しくなりそうです。



  
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