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トレーナー

東北大学工学部機械知能工学科4年 武井 健一

 もうすぐ終わろうとしている4年間の大学生活は殆ど部活を中心に回っていた。

 自分が所属していたのはアメリカンフットボール部。学内では“ホーネッツ”と言ったほうが通りがいいかもしれない。かつて自分が抱いていた東北大生のイメージを覆してくれる、何とも人相の悪い大柄な男達の集団。この中に自分もいた。

 とはいっても自分の仕事はそのチームのトレーナー。トレーニングメニューの作成や選手がけがをした時の応急手当、復帰へ向けてのリハビリ、練習前のテーピング、ドクターとの連絡、練習場所の確保・・・。非常にけがの多いスポーツなので、学生のチームでもマネージャーのほかにトレーナーがいる場合が多い。

 アメリカンフットボールでは、相手の作戦を分析し、それに対応したゲームプランを立てられるかが非常に重要である。下級生が講義に出ている日中。4年生は部室のビデオで相手チームの試合を見て、システムを研究し、それに対応した作戦を練る。そして連日深夜まで続くミーティング。先生方には申し訳ないが、自分も含めて、まじめに勉強を始めたのは、つい先日、部活を引退してからのことで、それまでは進級できるかどうかのギリギリを進む超低空飛行を続けてきた。

 自分はプレーヤーではなかったので実際にフィールドでプレーするわけではないが、試合に勝つために何をすれば良いのか(自分の場合はトレーニング関係)を研究し、そのために必要なことは妥協せずに徹底的にやっていくという過程の中で、”ここ一番のがんばりどころ”での集中力を鍛えられたような気がする。逃げ出したくなるような緊張感の中でのいろいろな出来事は、終わってみればとても楽しかった。これからは今まであまりできなかった分まで取り返すつもりで卒論や大学院での勉強にその集中力を注がなくてはならないだろうけれど、気持ちまで部活を引退しきれるだろうか少し不安は残る。また春になったらグランドに顔を出してテーピングを巻いたりしている自分がいるかもしれない。



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