研究室紹介
八戸工業大学大学院 機械システム工学専攻 博士前期課程2年 郡川 尚士
私が所属している制御工学研究室では,制御技術を用いた機械とコンピュータの融合に取り組んでいます.そのために中心となる技術は,サンサフュージョン,デジタル信号処理、モデリング・シミュレーション,制御理論応用,コンピュータ高度利用などです.本研究室では,(1)エンジンの診断・制御技術,(2)モデリング・シミュレーション技術,(3)移動体メカトロニクスの3つのテーマについて,ユーモアのある教授のもとで個性豊かな学部生13人,ちょっとクールな院生4人が研究に邁進しています.この3つのテーマの代表的なものについて説明します.
(1) エンジンの診断・制御技術
1.1 筒内圧力によるエンジンの燃焼診断
エンジンの燃費と排気の低減を両立させるために,燃焼状態を診断して運転条件に応じて最適に制御する方法を研究しています.クランク角度に対する筒内圧力を高速サンプリングし,各種デジタル信号処理,Wavelet解析などによる特徴抽出を進めています.
1.2 エンジン燃料噴射制御の動特性推定に関する研究
燃費低減・排気抑制にはエンジン制御が重要です.本研究では,燃料噴射装置に関係してあるスロットル開度センサと駆動トルクの時間的遅れに着目して,燃料消費率の瞬時測定法として,運転中の燃料供給量とトルク変化の動特性を推定して動的補償する方法を検討します.
(2) モデリング・シミュレーション技術
2.1 自動車エンジンアイドル回転数の高性能化
このテーマは私が研究しています.自動車の排気抑制・燃費向上の一つの方法としてアイドル回転数の低速化が挙げられます.アイドル回転数を低速化すると,トルク負荷や電気負荷などの外乱の影響を受けやすくなり,回転が不安定になり,ストールしやすくなります.この問題点を解決するため,エンジンをモデリングし,ロバスト制御理論を適用してシミュレーションにて制御性能を検討してエンジンへの実装を目指しています.
2.2 ハイブリッド車シミュレータの構築
近年,計算機シミュレーション技術が自動車の制御システム開発に利用されています.これは,新車開発の事前検討,オーバーロード試験,繰り返し試験に有効です.しかしながら従来のシミュレータは10-15modeなどの走行試験に対応しているのが少ないのが現状です.そこで,各種走行試験に対応可能,かつハイブリッド車の諸性能を予測して開発促進を図ることを目的としたシミュレータの構築を目指しています.現在,エンジンモデル,モータモデルが完成し,燃料電池モデルの構築を行っています.
(3) 移動体メカトロニクス
3.1 車椅子の段差乗り上げシステム
平成12年度から要介護者の自立を促すため,介護保険法が施行され,施設での介護から在宅での介護へ変わる割合が多くなってくると予想されます.これによって必要性の高くなる介護用品として電動車椅子を取り上げ,段差や坂道に対応できるように改良しています.
3.2 倒立振子の位置制御
手のひらの上に棒を立ててバランスを取る遊びを模擬したのが倒立振子システムです.倒立振子はメカトロニクスの領域で,ロボットの二足歩行やロケットの姿勢制御に応用されます.倒立振子はとても不安定特性をもったサーボ機構なので,制御モデル誤差による制御性の悪化が非常に問題になります.モデル誤差の影響を調べるため,様々な形状の振子の倒立実験を行い,各種制御理論を取り入れて,制御性能の改善を行っています.
3.3 自走型ロボットの試作
大学の実習で行われているロボットコンテストは現在,プロポ操作で行われています.今後はプロポ操作と自走を切り換えることを可能にし,ルールやロボット製作の幅を広げることを目標にしています.自走型ロボットの原理,センサなどについて調べ,現行のルールに適用できる自走型ロボットの試作を行っています.
制御工学研究室では現在,このようなことを研究しています.制御やメカトロニクスは面白そうだと思いますが,実際はかなり難しく,日々悪戦苦闘しています.私も「制御はおもしろそう」という軽い気持ちで,制御工学研究室を希望しました.4年生になってから現在にかけて,「制御工学は難しい」と実感しながら研究しています.「制御工学」は様々な分野に応用ができるのでとてもやりがいがあります.
これから,卒業論文や修士論文,学内での研究発表にむけて気を引き締めて研究していきたいと思っています. |