研究以外で学んだ事 いわき明星大学大学院 理工学研究科 物理工学専攻 修士1年 大塚菊雄 私はこの研究室に来てから研究以外に二つ学んだ事がある.一つは“チャンスを活かす”と言う事,もう一つは“全ての物事は自分次第である”と言う事だ. 私はメカニカルハンドの研究を行なっている.メカニカルハンドと言うと“機械的な手”と言う事になるが,私が目指している最終目標は義手を開発する事である.現在使用されている義手には,見た目を重視した装飾用義手と作業性を重視した作業用義手の二種類がある.しかし,この二つを同時に満たす義手は数少ない.そこで私は見た目と作業性の両方を併せ持つ,人間の手により近い義手を開発する為に研究を行なっている.このような義手を開発するには人間の手の構造がどのようになっているか,製作する義手の構造をどのようにするかなどの様々な問題が出てくる.しかし,私の場合は幸せな事に,それぞれの分野に精通する先生方が大学の内外にいらっしゃる為,いろいろと手助けをして頂ける.手の構造は整形外科医の先生,構造及び制御に関しては他大学の助教授,設計に関しては本研究室の客員研究員の先生と言うようにとても恵まれている.だから私がこの与えられたチャンスを活かせば,きっと目標とする義手を開発できるだろう. 私は今年の春休みに三週間程,英語を勉強する為にオーストラリアのアデレードに一人で行き,ホームステイをして来た.オーストラリアに行くまでにはいろいろな不安や問題があった.一人で行く事.お金,時間,パスポート,ビザ,飛行機の予約や乗り方,ホームステイをする場所やそこの人達,などとにかく海外に行く事は勿論,ホームステイするのも飛行機に乗るのも初めて,全てが初めての経験だったので絶えず不安が付きまとっていた.そんな不安の中,私はシドニー空港からアデレード空港への飛行機に乗り遅れると言う普通の人ならば起こり得ない体験をした.これはシドニー空港の男性スタッフが私に間違えたゲートナンバーを教えたからであるが.私は海外が初めてだったし,英語もさほど話せない,おまけに一人と三拍子揃っていたので,本当に一時はどうなる事かと思った.しかし,シドニー空港の日本人女性スタッフがいろいろと助けてくれたお陰で,無事?アデレードに行きホームステイする事ができた.ホームステイをして私が感じた事は,自分にとっての英語の大切さは勿論の事,オーストラリアの広さ,世界の広さ,国民性,生活習慣の違い,考え方の違いなど,とても言葉だけでは言い表せないものだった.“百聞は一見にしかず”と言う諺があるがまさにそれである.また,自分が如何に小さな存在で,今まで“井の中の蛙”であったかと言う事も実感した.ホームステイと言うのは,その国のルールに従った生活をするので,その国の本当の姿を知る事ができる.私はホームステイをした事でオーストラリアと言う国を知る事ができたし,自分自身を見直す事もできた.そして良き思い出と共に語り尽くせぬほどたくさんの経験をする事ができた.私がこのようなたくさんの経験をする事ができたのは,周りの人の助けやアドバイスなどがあったからこそであるが,最も大きな要因はオーストラリアに行くと言う事の中に存在していた,様々な形のチャンスを活かす事ができたからだと考えている. チャンスと言うのは自分で掴んだり,人から与えられたり,その時はチャンスだとわからずに後でチャンスだったと気付いたり,時にはチャンスをチャンスだとわからずに見過してしまったりと,一言では表現できない形をしている.また,チャンスは人それぞれ捕らえ方が違い,捕らえる人によって姿を変えるので,その形は無限に存在する.このチャンスを活かすと言う事は楽しく楽な事ばかりではなく,辛く厳しい場合もある.しかし,その辛さや厳しさから逃げずに少しだけ無理をしてそのチャンスを活かせば,自分にとって必ずプラスになる.そしてそのチャンスを活かす事により,また新たなチャンスが生まれると言う事を私は学んだ.私がオーストラリアに行た事によって生まれた新たなチャンスは,ホストファミリーの人達と手紙と言う手段を使って,現在も連絡を取りあっている事が一つの例として挙げられる.この事は私がオーストラリアに行かなかったら生まれる事の無かったチャンスだろう.今回この Compass に私が研究以外で学んだ二つの事について掲載できるのも,一つのチャンスがあったからだろう. 自分次第と言う言葉も非常に幅広い意味を持っている.この言葉は自分が行なう全ての物事について当てはまる言葉だろう.研究を例に考えると,研究は自分で学びたいからするわけで,研究をいやいやしていたのでは全然楽しくない,つまらないだけである.勿論研究はとても辛いものでもあるが,楽しくするかつまらなくするかは自分次第であるし,それは自分の気持ちの持ちようで変える事ができる,先にも述べたが,私はとても恵まれた環境でメカニカルハンドの研究を行なっている.この恵まれた環境(チャンス)を活かせるかどうかも,自分次第である.オーストラリアでは,自分の意思表示をしっかりしなければならなかった.例えば自分が今とても困っているとしたら,“私は今とても困っています”と言う事を意志表示しなければ誰も救いの手を差し伸べてはくれない.しかし,意思表示さえすれば快く助けてくれる.助けてもらえるかどうかは,意思表示と言う行動を起こすか起こさないかによって決まり,それは自分次第である. 今回“チャンスを活かす”と言う事と“全ての物事は自分次第である”と言う事について,私の身の回りの環境や経験談を例に簡単に書いてきが,この二つの事を良く考えて見ると,いろいろな所で密接に関わり合っている気がする.ある事をチャンスだと考えるのは自分の判断であり,それを活かすも活かさぬも自分次第で,その選択は誰も助けてくれるものではない.私が学んだこの二つの事を行なうのは,けして簡単な事ではないと思う.しかし,今後私がこの二つの事をきちんと行なう事ができたなら,今行なっている研究だけでなく人生についても納得の行く結果が得られると信じている. |