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 女子学生が入ったときに

 東北大学工学部
 機械工学第二学科4年 大久田友子

 最近だいぶ落ち着いてきたが、一時期マスコミが騒然としていた問題に"セクシャルハラスメント"、いわゆるセクハラがある。女性が、性的な嫌がらせを理由に会社を辞めざるを得なかったという深刻なものから、嫌いな人に声をかけられたといったものまで、この問題は実に多岐に渡っている。しかも境界があいまいで、当事者どうしの関係や立場でその受け取り方はかなり違ってくる。いずれにせよ、これからの社会において避けては通れない問題であるから、みんな十分に気をつけようという風潮がある。
 私たちが所属することになる研究室が決定したのは、ちょうどそんなころであった。私を含め、3人の女子学生が同じ研究室に配属されることとなり、しかもその研究室では初めての女子学生となった。時期が時期であったので、最初に行われたミーティングで助教授が、
「せっかく女子学生が入ったのだから、これを機会にセクハラについて考えるように。」
と、おっしゃったことを覚えている。先生は、
「女性だからといって掃除やお茶汲み等を強制するのはいけないが、そうかといって何もさせないのもいけない。」
ともおしゃっていた。
 私たちは、その心遣いにとても感謝した。しかし、いわゆるセクハラは起こらないであろうと予測した。今までの経験上、私たちにとって問題なのは、セクハラを受けることではなく、女性扱いされなくなることであることは明かであった。そしてその予測は見事に的中して、研究室において今までに不快な思いをしたことはあまりない。ここでは親切な先輩方や楽しい仲間達に恵まれ、とても快適な環境で学校生活を送っている。
 一方、女性扱いされなくなるだろうという予測もやはり当たった。私たちの前でも平気で着替えをしたり、とんでもない話をしていたり・・・・・、およそ女性の前ではしないであろう、と思われる言動や行動が目につく。
「そんなこと,彼女の前でもするの?!」
と言いたくなることもしばしぱある。してもいいことと悪いことの区別くらいはつくはずなのだが。
 研究室にいると、長い時間一緒に生活していくわけだから、慣れて気が緩んでしまうのは仕方がない。いちいち細かいことを気にしていてお互いぎくしゃくするのも嫌だから、少々のことには目をつぷってしまう私たちの態度も確かに悪い。でも、だからといって何も気にしないというのはあんまりな話で、多少の気遣いがあってもいいはずである。
 女性扱いしてほしいといっても、なにも特別なことを期待しているわけではない。皆でどこかに食事に出かげるときに自動車の運転手をしたり、飲みに行ったときに割り勘するのは一向にかまわない。そういうことはむしろ大歓迎であって、対等に扱われることは私たちの望んでいるところである。ただ頭の片隅にでいいから、自分たちのそばに年頃の女性がいるということを忘れないでほしいのである。
 もっとも、こうなった責任は私たちにもある、私たち自身、周囲の男性たちをあまり意識していないし、女性らしいこともそれほどしていない。もっとも、大多数を占める男性たちの前でいちいちそんなことを気にしていたら参ってしまうのだから、その辺は少し理解していただきたい。どうしても、同年代の女性たちと同じようなわけにはいかないのである。
 しかし、こうなってしまうのも、周囲の男性たちにだって責任があるのだ。私たちがたまに女性らしいことをしても、誰も何も言ってはくれない。新しい洋服を着てきても、きれいにお化粧してきても、誉めてくれるような人はまずいない。これではせっかく努力したって、ちっとも面白くない。そんなくだらないことと思う方もいるかもしれないが、そんなことの積み重ねが私たちを方向づけてしまうものなのである。
 セクハラについて考えるようにというと、どうしても男性が女性に不快感を与えないことについて考えがちである。しかし、それだけでは片手落ちである。どうすれば相手が喜ぶのか、また、とうすれば円滑なコミュニケーションをはかれるのかも考えなくてはいけない。しかもこれは女性側も考えなくてはならない問題なのだ。
 これからは、機械系の学科にもますます女性が増えるであろうと思われる。いままで男性主体であったところに少しづつ女性が入っていくのだから、双方なかなか大変である。でも、女性が進出すれば楽しみも増えるはずなのだから、ぜひ歓迎していただきたい。そして私たち女性側もいろいろな意味で男並みではなく、女性らしくしなければいけないし、男性方はそちらの方も応援していただきたいと思う。


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