熱工学部門長あいさつ |
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第88期熱工学部門長 慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科 教授 菱田 公一 hishida@sd.keio.ac.jp |
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2010年4月27日 2010年4月より第88期熱工学部門長を仰せつかりました.これまでの熱工学部門の実績を踏まえ,本年度もより一層の進展を目指して努めて参りたいと考えておりますので,皆様にはご協力のほど,何卒宜しくお願い申し上げます. さて,本年度の熱工学部門を運営するにあたり, まず一つのキーワードとして“原点回帰”という言葉を掲げたいと考えております.皆様もご存じのように,熱工学部門は熱力学・伝熱学,燃焼学,熱物性といった学問分野を基盤に,昨今では低炭素化社会の実現に向けての環境対策からナノ・マイクロ分野における熱現象の解明や応用という様に,多岐に渡る横断的・融合的な分野へと進展しています.私たちのような熱工学に携わる者としましては,こういった新たな次世代技術への発展は非常に重要であり大歓迎であることは間違いありませんが,一方で,目新しさのある華やかな部分のみに集中・偏向し過ぎると,重要な現象や発見をつい見落としてしまうこともしばしば起こり得えます.ここで再度,目を向けてもらいたいのが基盤技術としての熱工学です.貧困な土壌からは良質な果実・作物は育たないように,良質な熱工学の基盤・根幹が存在しなければ,先進的な熱技術の発展も有り得ません.新規な領域へとステップアップする時ほど,足元の土台となる基礎的な知識・技術をもう一度見直し,しっかりとした基盤を整える必要がある,つまり“原点回帰”の心意気が大切であると考えます.本年度はこの“原点回帰”というキーワードを念頭に,将来の熱工学の発展へと繋げていければと考えております. 次に本年度のもう一つの大きなテーマとして,“連携の強化”という言葉を挙げたいと考えています.昨今,特に欧米などでは,国境を越えた国策としての大きなプロジェクトが多数進行しつつあります.グローバル化という時代の流れから当然のことではありますが,一方,日本に目を向けてみると,国際的な共同研究等の数は増えつつあるものの,まだまだ欧米諸国に比べると劣る部分もあり,それは熱工学の分野においても同様であると言えるでしょう.幸いなことに,日本の周辺には昨今の発展が目覚ましい中国をはじめとするアジア諸国,さらにはアメリカ・オーストラリアといった先進各国が存在し,いずれの国々も国際的な協調関係の構築に意欲的に取り組んでいます.そこで,熱工学部門としましても,国際会議などの企画・運営を積極的に行い,各国の研究者・技術者間にて親密な交流が行えるような機会を提供してゆければと考えています.また,海外との連携に加え,国内の連携も大変重要です.先にも述べましたように,近年の欧米各国では,政府が先導するような巨大なプロジェクトが熱工学の分野においても盛んに実施され,その成果は目覚しいものがあります.一概に,大きなプロジェクトであれば質の高い研究や技術開発が行えるというわけでもありませんが,やはり豊富な資金や多くの人材が揃えば多様性・発展性の点から有利であることは確かです.低炭素社会実現に向けての方策を考えるならば,そこには熱工学分野をはじめとする多種多様な分野,また,産学官を含む多くの組織が複雑に関係しています.そして,その実現のためには,各関係者が自身のフィールドを生かしながら互いに協力し合い最終的に一つの目標へ向かっていく,つまり各関係者の横断的な“協調と共存”による取り組みが非常に大切であると考えています.熱工学部門では,こういった連携・プロジェクト化が実施されやすい環境の整備のために,各学会や企業,公的機関等との関係強化にも力を入れてゆければと考えております. 以上のことを念頭に,本年度の熱工学部門では,第8回日米熱工学合同会議(2011年3月,ハワイ),湘南セミナー等の部門講習会,熱工学コンファレンス,年次大会などの開催や,伝熱学会との合同編集による英文誌「Journal of Thermal Science and Technology」及び和文機関誌「日本機械学会論文集」のさらなる知名度の向上など,各種活動を精力的に実施してゆきたいと考えております.会員の皆様には,是非とも積極的な御協力と御支援を頂き,熱工学部門のさらなる発展にお力添え頂ければ幸いに存じます. |