報告
日本機械学会2008年度年次大会 熱工学部門報告



年次大会熱工学部門実行委員会

委員長 奥山邦人(横浜国立大学)

 日本機械学会主催の2008年度年次大会が、8月4日-6日に亘り、横浜国立大学常盤台キャンパスで開催されました。5月の「伝熱シンポジウム」と11月の「熱工学コンファレンス」の狭間にあって、年次大会への熱工学部門の会員の参加は、例年低調の傾向にあると言われています。しかしながら、年次大会は機械学会のすべての部門が一堂に会するという点で異なる趣旨をもっていると考えられること、また最近の熱工学は、燃料電池、マイクロ・ナノ、バイオなどの新しい分野や他分野との複合領域への進出が目覚ましいことからも、年次大会では他部門との共同企画が相応しいと考え、実行委員の方々と企画いたしました。

 熱工学部門のオーガナイズドセッションとしては、「J16燃料多様化と燃焼・化学反応制御」、「J17燃料電池」、「J18ガスタービンにおける熱流動問題」、「T06マイクロ・ナノ熱流体システム」、「T07流体及び界面におけるナノ構造と流動特性」、「J08電子情報機器、電子デバイスの強度・信頼性評価と熱制御」の6件すべてが他部門とのジョイントセッションとして企画され、流体工学部門、動力エネルギーシステム部門、エンジンシステム部門、材料力学部門、計算力学部門、情報・知能・精密機械部門などとの間で多数の参加者による研究内容の情報交換が進められました。特に、セッションT06とT07は、今回の年次大会テーマのうちの一つ「マイクロ・ナノ領域における機械工学」に関連して、機械学会の部門横断型組織であるマイクロ・ナノ工学専門会議から全部門への呼びかけに応じて当部門でも企画されたもので、微細な視点に基づく先端アプローチに関する数多くの講演(T06は31件, T07は19件)に対して活発な討論がなされました。また熱工学部門の単独企画として、ワークショップ「高温面の濡れと熱伝達」を開催いたしました。 高温面の水冷却などにおいて重要となるとなる濡れと相変化を伴う熱伝達に関して、大学側と企業側それぞれから研究の現状と解決すべき問題点の指摘がなされ、討論を通じて共通理解が進められました。また上記の企画に属さない講演論文からなる一般セッションにも25件の講演申し込みがあり、伝熱、燃焼の基礎研究あるいはその応用に関する研究成果が発表され、質疑応答も活発で充実した内容となりました。オーガナイズドセッションと一般セッションのいずれにおいても大学院生など学生による優れた発表が多くなされました。年次大会は熱工学部門の講演論文表彰並びに若手優秀講演フェロー賞の候補者推薦の対象となる講演会ですが、学生の発表者で機械学会の会員の方が意外に少ないように見受けられました。指導教員の先生におかれましては、講演申し込み登録より前に会員となることを是非お勧めいただければと存じます。 その他、当初熱工学部門で企画した水素エネルギー協会前会長太田健一郎横浜国立大学教授による特別講演は、大会テーマ「エネルギーと環境」に関する特別企画として開催された日本機械学会・日本工学アカデミー共催の合同シンポジウム「温室効果ガス排出削減への展望」において、「持続型成長を支える水素エネルギー」なる題目にて実施されました。

 機械学会の年次大会は、これまで9月に開催されていましたが、今回の年次大会は機械の日(8月7日)・機械週間(8月1日-7日)に近い日程で開催することが決まったことから、熱工学部門においても、他の国際会議あるいは国内の学会講演会と日程が接近あるいは重なって年次大会への参加者が減るのではないか、との懸念がありました。このことも考慮しながら企画にあたりましたが、結果としては、予想に反して多くの参加者が得られたことはなによりでした。上記の企画、他部門との調整、プログラム編成などに関して、熱工学部門の年次大会委員はもとより、セッションオーガナイザーの方をはじめ、多くの方のご協力をいただきましたことを厚く御礼申し上げます。

 部門同好会は、横浜中華街の揚州飯店別館にて、昨年度と同じく、熱工学部門、流体工学部門、材料力学部門、計算力学部門の4部門で開催されました。一昨年度までは、熱工学部門の表彰式を、部門同好会の前、あるいは熱工学部門のセッションの終了後の講演会場で開催していましたが、昨年度から表彰式を熱工学コンファレンスで行うこととなったため、同好会は純粋に熱工学部門の会員間および合同開催の関連部門の会員との交流の場となっています。本年度の同好会には、熱工学部門からは11名、全体で約60名の参加を得て行われました。宇高義郎年次大会委員長のご挨拶に続いて長島 昭 元機械学会会長の乾杯でスタートし、終始和やかな雰囲気の中、部門の垣根を越えて会員間の交流が計られました。

 来年度の年次大会、部門同好会には、さらに多くの会員に参加いただき、研究発表を通しての情報交換と会員相互の交流を深めていただくことを祈念いたしまして、2008年度年次大会熱工学部門のご報告とさせていただきます。