熱工学コンファレンス2007開催報告
熱工学コンファレンス2007(京都)を終えて
実行委員会委員長吉田英生
実行委員会幹事岩井 裕
実行委員会幹事齋藤元浩

 2007年11月23日(金)と24日(土)の2日間,京都大学吉田キャンパスで標記コンファレンスを無事終えることができました.
 この時期は熱工学に関係する国内講演会だけでも,9月に機械学会年次大会,11月に熱物性シンポジウム,12月に燃焼シンポジウムと,立て続けに開催されます. 当委員会では,そのような状況下で無理をせずに自然体で,しかも個性的なコンファレンスを提供できたらと考えました.そこで,立ち上げに際して,以下のような開催趣旨を宣言しました.

http://www.kuaero.kyoto-u.ac.jp/laboratory/heat/thermal2007/syushi.html
 もちろんオーガナイズドセッションをやめると講演件数が激減するのではないか,という不安は少なからずありました. しかし,本来のニーズや期待から自ずと集まって下さる方々でコンファレンスを開催することこそ意義深いのではないかと信じて,実行させていただきました. 結果的には,特別講演1件,キーノート講演14件,一般講演170件,合計185件,参加者数403名で,ほぼ例年並みとなり,数値的な面でもほっとした次第です.
 今回のコンファレンスの最大の特徴は,なんといっても各分野の第一線でご活躍中の14名の方々にお願いしたキーノート講演だと思います. 講演時間も,討論を含めて60分ずつとしましたので,国際会議でのキーノート講演に匹敵あるいは凌駕する充実したものといえるのではないでしょうか. また,キーノート講演に限って,機械学会会員に限定せず無料で一般公開して聴講できるようにしたところ, 多数の申し込みを受け,さらにコンファレンス終了後は,キーノート講演(と特別講演)はコンファレンスHP http://www.kuaero.kyoto-u.ac.jp/laboratory/heat/thermal2007/ から講演論文のPDFファイルをダウンロード可能としています.

 23日の昼休み時間には,7ヶ月前の4月25日に逝去された鈴木健二郎先生(京大名誉教授・芝浦工大シニア教授)の追悼会を開かせていただき, 鈴木先生に縁の深い牧野俊郎 京大教授,荻野文丸 京大名誉教授,越後亮三 元芝浦工大副学長に思い出をお話いただきました. 鈴木先生ご自身が以前教鞭をとられた工学部の大教室は,昼休みにもかかわらずほぼ満員となり,鈴木先生の誠実で暖かいお人柄とご業績を偲びました.


 本コンファレンスの開催された2日間は,京都の紅葉が最も美しい時季で,観光客も年間を通じてピークに達します. さらに,京大では学園祭である11月祭も開催されたため会場周辺は模擬店が多数並んで若者がごったがえすという,街も大学も人人人というありさまでした. 市内のホテルは半年前でも予約が取りにくく,バスは動かずタクシーもつかまらずということで,そんな京都に全国の熱工学研究者をお呼びしてしまったのは,なんとも罪深いことであったとも思います. しかし,月桂冠椛麹研究所所長の秦洋二氏による特別講演

『清酒の機能性:解明されつつある「酒は百薬の長」』

を23日の懇親会直前に時計台記念館で企画させていただけたことは,わざわざ京都にまで足を運んでいただいた皆様への何よりのおもてなしとなったのではないかと思います. 秦氏の軽妙洒脱な語り口に会場はおおいに沸きました.その中で,極めて印象的であったことは,講演1週間前の11月16日に急性脳梗塞で倒れたオシム日本代表サッカーチーム監督を含め, 誰しも突然病気になるのではなく,コップにたまった水が突然あふれるように病気が発覚するのだという例えでした. 本コンファレンスに参加されたほとんどの方が超多忙で健康管理も十分に行き届かない場合が少なくないと思います. ぜひともこれを座右の銘として,(お酒もほどほどに飲んで)健康な毎日を送っていただきたいと思いました. なお,ご講演いただいた11月23日は,くしくも以下のようにお酒(お米)にとって特別の日だったそうです.
「新嘗祭」は「しんじょうさい」ともいい,「新」は新穀を「嘗」はご馳走を意味します.毎年十一月二十三日に全国の神社で行われ, 新穀を得たことを神さまに感謝する新嘗祭は,五穀の豊穣を祈願した二月十七日の祈年祭と相対する関係にあるお祭りで, この日,宮中では天皇が感謝をこめて新穀を神々に奉るとともに,御自らも召し上がります.新嘗祭の起源は古く,『古事記』にも天照大御神が新嘗祭を行ったことが記されています. 現在では「勤労感謝の日」として,国民の祝日となっていますが

 特別講演の行われた時計台記念館2階大ホールでは,仕切り壁をはさんで裏側に移動して懇親会も開催されました. 総務委員会からのご提案で,今回から部門表彰を,懇親会に先だって行うようにして,懇親会参加者全員で祝福するようにしたことは,すばらしいことであったと思います. (詳細は部門表彰の記事を参照願います.)

 そして,清酒に関する特別講演に引き続いては,これしかないでしょうということで,秦氏の音頭に合わせた酒樽の鏡開きです. 門出政則部門長,宮内敏雄副部門長,鈴木雄二部門幹事に加え,岩井と齋藤も参加させていただきました. また参加者には,檜が香しい『熱工学コンファレンス京都2007』の焼き印が入った枡もおみやげとして配布されました.









 以上のように,学術の面でも心の面でもおおいに交流を図ることができる場を提供できたことは,実行委員会メンバーとしてたいへん嬉しいことであります. 総数2500通に達するおびただしいメールを毎日毎日処理しましたが,その苦労も報われたという思いを強くします. ただ一点だけ,今後このような講演会を準備される方々のためにも,残念だったことをこの場を借りてあえてお伝えしたいと思います. それは,全部で9件の講演辞退があったことです.しかも,うち8件はプログラム編成をしている最中あるいは決定後の9月あるいは10月のことで, なかにはきわめて無造作な文章のメールで講演辞退を連絡してこられる心ない講演者がおられたという事実です. タイトルや講演者名の変更等の比較的ちいさなことは可能な限り対応させていただきましたが,全体の枠組みを崩す講演辞退だけは絶対しないということを当然の了解としていただくことを切に望みます.
 最後になりましたが,貴重な特別講演やキーノート講演をして下さいました皆様や多数の参加者の皆様, 本コンファレンスを企画運営する上で力強くバックアップして下さいました熱工学部門総務委員会の皆様,機械学会事務局の村山ゆかり様に心からお礼申し上げます. また実行委員会の皆様,とりわけ,昨年の熱工学コンファレンス2006から多くのノウハウを提供いただいた小川邦康委員(慶大), HPの背景や講演論文集表紙を美しくデザインしていただいた巽和也委員(京大),そして当日の会場係を一所懸命務めてくれた学生諸君に感謝します.