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行事報告


7回日米熱工学合同会議報告

日米熱工学合同会議委員会
委員長:岡崎 健
幹 事:花村克悟

 第7回日米熱工学合同会議が、200778日(日)〜12日(木)にわたり、カナダのバンクーバーにあるWestin Bayshore Resort ホテルで、ASME側がleading society として開催された。

会議名称:2007 ASME-JSME Thermal Engineering Conference and Summer Heat Transfer Conference /InterPACK’07
会  場:Westin Bayshore Resort Hotel, Vancouver, British Colombia, Canada

        General Chair: Dr. Rod Douglass (Los Alamos Nat. Lab.)
        JSME Co-Chair: Prof. Ken Okazaki (Tokyo Tech.)
        ASME Technical Program Chair: Prof. Ken Ball (Virginia Polytech. Inst. & State Univ.)
        JSME Technical Program Co-Chair: Prof. Katsunori Hanamura (Tokyo Tech.)

今回での新しい試み。
1.毎年ASMEで開催されているSHTCとの同時期同場所開催(実質的にはマージされている)。
2.会場をカナダのバンクーバーとした(通常、米国内)。
3.InterPACK’07との同時期同場所開催(1つの登録で全ての会議に参加可能)。

(1) 発表件数とセッション数

AJTEC/SHTC

AJTEC

Molecular, Microscale, and Nanoscale Thermal Engineering

80 (19 Sessions)

30 (7 Sessions)

Computational Heat Transfer

65 (15 Sessions)

14 (3 Sessions)

Bio-Thermal Science and Engineering

11 (3 Sessions)

07 (2 Sessions)

Thermal Engineering in Reacting Systems

49 (11 Sessions)

32 (7 Sessions)

Multiphase Transport

59 (14 Sessions)

16 (4 Sessions)

Thermal Engineering in Energy Systems

62 (16 Sessions)

28 (6 Sessions)

Heat Transfer Fundamentals

51 (11 Sessions)

38 (8 Sessions)

(SHTC07) Second International Heat Exchanger Symposium

10 (3 Sessions)

(SHTC07) Materials Processing and Manufacturing

08 (2 Sessions)

(SHTC07) Thermal Engineering in the Environment

09 (2 Sessions)

404 (95 Sessions)

165 (37 Sessions)

InterPACK’07;

287 (67 Sessions)


(2) キーノートスピーチ

Prof. Arun Majumdar
   (Univ. of California, Global Energy ? Demand, Supply, Consequences, Opportunities)
Dr. S. V. Patankar
   (Prof. Emeritus & President, Innovative Research, Inc., Micro and Macro Computational Models for the Prediction of Heat Exchanger Behavior)
Dr. Kathryn McCarthy
   (Deputy ALD, Idaho Nat. Lab., The Role of Nuclear Energy in Our Future)
Prof. Ishwar K. Puri
   (Virginia Tech., First Principle Simulations of Transport Phenomena at and near the Nanoscale)
Prof. Yuji Nagasaka
   (Keio Univ., New Frontiers of Micro- and Nanoscale Thermophysical Properties Sensing)
Prof. Shigeo Maruyama
   (The Univ. of Tokyo, Topics of Heat Transfer Related to Single-Walled Carbon Nanotubes)
Prof. Hiroshi Takamatsu
   (Kyushu Univ., Freezing of Cells: Role of Ice and Solute in Cell Damage)
Prof. Hideaki Kobayashi
   (Tohoku Univ., High-Pressure Combustion Phenomena)

(3) Max Jakob 賞記念講演

Prof. Kwan-Tzu Yang
   (The Univ. of Notre Dame, Role of Artificial Intelligence (AI) in Thermal Science and Engineering)

(4) 特別企画

Special Session: In Memory of Prof. Kenjiro Suzuki
Panel Discussion - 2nd International Heat Exchanger Symposium: Adopting Heat
   Exchanger Best Practice and Methodology for Thermal Management of Electronics
Heat Transfer Visualization Photo Gallery

(5) 参加者総数

およそ830名(AJTEC/SHTCInterPACK’07の合計登録者)

(6) 総 評

(6-1) プログラム編成などについて

今回の日米熱工学合同会議(以後はAJTEC07と記す)では、従来とは異なり、ASMEで毎年開催されているSHTC(Summer Heat Transfer Conference)との合同開催であった。このため、論文のsubmitAJTEC07への投稿と、SHTCへの投稿といった2系統で行われたため、多少、著者の戸惑いを招いた。
 また、AJTEC07としてのセッションは、JSMEのオーガナイザーのみで構成され、従来のように、各セッションASME1名、JSME1名とはならなかった。しかしながら、プログラム編成の際に、上記(1)のような枠組みをASME側が提案し、内容の近いセッションを集めて、可能な限りシリーズ(セッション数が多いものについてはパラレルとなる)で組むような努力がなされていた。
 
AJTEC始まって以来の新しいことがいくつか含まれ、SHTCとの合同開催である以上、この形態をある程度認める必要があると思われる。

(6-2) テクニカルセッションについて

 上記の(1)にある発表件数をみると、日米の共通点や相違点が多少理解される。ここで、AJTEC/SHTCは、トータルの件数であり、AJTECは会議中JSMEセッションとして表示されたものを示し、この中で100件程度が日本からの発表になる。
 ナノ・マイクロあるいは分子スケールの熱工学に関する研究は、日米を問わず、多いことがわかる。次に多いのは、数値計算とエネルギーシステムに関するものであるが、前者は、SHTCでの件数が多く、米国での数値計算での研究がやはり多いことがわかる。一方、後者は日米ともに多く、エネルギーシステムへの関心が高いことが伺える。
 次に、混相における輸送であるが、混相流学会が、同時期に欧州で開催されているもの、米国からの発表が比較的多かった。

 また、伝熱の基礎に関するものでは、伝導、単相対流、ふく射、混相と含まれているが、日本からの発表が多く、米国ではアプリケーションを意識、あるいは基礎的な研究であってもアプリケーションのセッションに投稿する傾向にあるように思われる。もちろん、応用あっての基礎研究であることは、日米を問わない考え方であるはずである。

 化学反応を伴う熱工学としては、燃料電池のセッションが多く、時代の流行を感じさせる。このセッションに割り当てられた部屋が小さく、立見はもちろん、部屋に入れない方も見受けられた。一方、燃焼という一括りではなく、石炭・バイオマス燃焼というように明確なセッション名を立てるのも
ASMEの特徴といえる。
 バイオについては、当初より、このAJTECの前後あるいは同時期に、他の会議が行われているため、日米ともに参加者が少ないことが予想されていた。予想通り、上記(1)のような分類をすると、他に比べてかなり少なくみえるのは致し方ない。

 (6-3) キーノートについて

 キーノートについては、上記(2)に記したようにASME側とJSME側から、それぞれ4名ずつ話題提供していただいた。日米での依頼方法が統一されていなかったためか、話題内容にも大きな相違があったように思われる。ASME側からのキーノートは、将来展望や、戦略的な部分を強調した話が多かったが、JSME側から提供されたキーノートの内容は、お世辞ではなく、どれも学術的に興味深く、将来に向かってもその分野の展望がおのずと開けそうな情報を提供していたように思われる。

 (6-4) 特別企画について

 今年4月にご逝去された故鈴木健二郎先生を偲ぶセッションが設けられた。SHTCにおける2nd International Heat Exchanger Symposiumを推進されていたことから、そのセッションの一つを偲ぶ会とした、粋な計らいであった。通称Ken Suzuki としてASMEでは知られていたらしく、プログラム編成の際にお名前を修正させていただいた一幕もあった。改めてご冥福をお祈り申し上げます。このセッションの会場も、メイン会場から遠く、かつわかりにくい位置であった。

 (6-5) ふりかえって

先にも記したように、今回のAJTEC07は、初めてSHTCとの合同開催とした。また、InterPACK’07とも同時期同場所開催となった。互いに刺激をし合い、相乗効果が期待できるのであれば、こうした試みも、SHTCInterPACK’07だけでなく、他の学会とも融合することは意味が無いことではない。しかし、それに伴い、会議の本来の役割が影を潜めるようでは意味が無い。初めての試みとしては、プログラム編成など苦労・苦心の跡がみられ、それなりに良くできたものとなっていたように思う。ただ、あそこまでできるのであれば、もう一歩、早い段階で協調しながらセッションが組めなかったか、悔やまれるところである。また、セッションによっては、“ASMEも頑張っている”との評価も流れてきており、少なからずAJTECあるいはAJTEC/SHTCの役割が果たせたようにも思われる。
 最後に、ご協力をいただいた皆様、部門所属委員会「AJ会議委員会」構成員、オーガナイザーや座長、査読委員、4年前から各年度の部門長をはじめとする部門総務委員会構成員、その都度ご助言を頂いた国内外の皆様、会議に参加いただいた方々に厚く御礼申し上げます。

以上(文責:花村)