この度,第84期熱工学部門長岡崎先生の後を受け,85期熱工学部門長を仰せつかりました.熱工学部門のより一層の活性化に努めてゆきたい所存です.
部門登録の皆さんのご協力をお願い致します.
熱工学部門は,伝熱学,燃焼学,熱物性の学問分野を包括し,それらの基礎学理の構築と工学的応用を目的とした会員諸氏の集まりであるということは岡崎前部門長のご指摘の通りです.
これらの基礎分野に重心を置いているからこそ,多くの会員の注目を集め,現在の部門登録として,第1登録で2,555名,また第3登録までで6,188名となっており,全20部門中3番目に大きい会員の集まりとなっている.
これは,熱に関する基礎学理を源として,熱に関連する工学的応用分野,すなわち機械学会内においてもエンジンシステム,動力エネルギーシステム,環境工学へと良く言えば発展していると見なすこともできるであろう.
一方,この基礎学理の深化と更なる発展に向けて,日本伝熱学会,日本燃焼学会,日本熱物性学会や日本熱測定学会などが1,000人規模の学会としてそれぞれ活発に活動している.
そして,熱工学部門登録者の多くはそれぞれの学会においても等しく活動しているのが実情です.
学問の基礎は同じでも,その対象や応用範囲はまるで生き物のように進化し続けていることから専門分野学会が生まれるのは当然のことです.
しかし,それぞれの学会が自立的な活動に終始している時間的な余裕も少なくなって来ているのではないだろうか?
特に,独法化後の大学教員の多忙化は余裕のなさに拍車をかけている.
それぞれの学会が効率的かつ有機的な連携を進めることによって会員諸氏の期待に沿った活動や成果が得られるのではないだろうか?
たとえば,熱工学部門と日本伝熱学会の合同編集による英文誌「Journal of Thermal Science and Technology(JTST)」の出版は,素晴らしい試みと考えている.
一方,第7回日米熱工学会議は,両部門の目指すベクトルに多少の乖離が見られ,今回の会議にて次回の会議ではより質の高い研究発表でかつ相互交流の場となるように努めることを双方で確認できた.
熱工学部門として,米国との連携のみならず,韓国,中国や東南アジアの国々,更には豪州を含む環太平洋諸国に向けて,熱工学分野の進展を牽引する役割を担うことも近未来的には必要となるであろう.
ところで,筆者自身の杞憂であれば幸いだが,最近の研究動向として汎用の熱流体ソフトウエアーに頼りすぎて,熱移動(伝熱)の本質やそこでの素過程を蔑ろにしているように思える.
時間は掛かるけれども,実験事実をベースに,さらに汎用のソフトウエアーを利用出来れば,「鬼に金棒」となる.
「現象をよく観察し,心眼を磨き,現象を解析する」ように指導された筆者は,この考え方を研究活動の礎としている.
基礎学理の構築と普及に取り組む研究・学会活動の良きコミュニティーとして発展することを期待している.
さて,当部門の活動状況は,過去5年間の活動評価として,学術普及・発展活動(自己評価:a, 評点:A),対外活動(b, A),活性化活動(評価内容:サービス,他分野連携,社会貢献)(b, B),総合評価(b, B)でした.
総合評価Bとなった主な理由は,会員のための特別企画がない,将来戦術が特にないなどに起因している.
会員のための活動をすることは当然であるが,良い評価を得るための活動ではなく,地味では学術の基本・基礎に根ざした活動を今後も進めたい.
今年度の活動は,日米熱工学会議,熱工学コンファレンス,年次大会,部門講習会,出版活動などを計画しています.
特に,熱工学コンファレンスでは,意欲的な取り組みがなされており,魅力的な企画となっている.
会員各位の期待に応える活動を関係諸氏と一緒に取り組みたいと思います.諸先輩並びに会員の皆さんのご支援を賜りたく心からお願い申し上げます.
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