部門合同オーガナイズドセッション(交通・物流部門/エンジンシステム部門/熱工学,動力エネルギーシステム部門)
J-25「交通機械と進化するエネルギー技術」
オーガナイザ:高田 博 (いすゞ自動車),大聖 泰弘 (早稲田大学)
報告:高田 博 (いすゞ自動車)
交通・物流部門、エンジンシステム部門、熱工学部門/動力エネルギーシステム部門共催の部門横断オーガナイズドセッションを、オーガナイザ 高田 博(いすゞ自動車)大聖 泰弘(早稲田大学)という構成で開催致しました。皆様もご存知の通り、COP3で定められた数値6%削減目標の達成には多様な交通機械全般において全般的な削減が必要であり、分野を横断した情報交換の場が必要不可欠と考え、新しく企画致しました。
まず大聖先生が「自動車用燃料技術の将来展望」について基調講演され、その後8編の論文が発表されました。
基調講演の内容をごく簡単にまとめますと、「現状としては日本の車は世界で排出されるCO2の1%を占めており、日本の石油の4割を車が消費している。効率はWell-to-Wheelで見るとディーゼルハイブリッドと燃料電池がいい勝負(負荷の程度により変わる)。10年後には都市の大気環境対策は一段落し、温暖化対策がメインとなる。さらに10年後には脱石油対策がメインとなる。水素社 会の到来にはまだ確信が持てない。」最近の石油の値段の高騰がどの程度続くのかは不明ですが、石油枯渇が視野に入れば水素燃料の実用化研究は猛烈に進むのではないかと私は思いました。
8編の発表の内訳は、燃料電池2編、高効率クリーンエネルギー自動車(NEDOのACEプロジェクトの成果発表)5編、NOx吸蔵還元触媒1編でした。
燃料電池は、日大のHILSによる簡易評価装置の製作、鉄道総研の鉄道車両駆動への適用の研究の2編の発表がありました。燃料電池のHILSを利用した評価方法は、面白いアプローチであると思いました。鉄道車両ではディーゼル車を水素駆動に切り替えることでクリーン化を狙うが、一方ではディーゼルハイブリッドの研究も行う予定とのことであった。鉄道では自動車に比較すると水素インフラ整備コストの制約が小さいので、自動車よりも先に実用化されるかもしれないと思いました。
高効率クリーンエネルギー自動車は7年間の研究プ ロジェクトであり、04年3月に完了した。それぞれ開発目標は達成したが、実用化のネックとなるのは、やはり投資コスト(導入コスト約5割アップ+社会インフラ整備コスト)である。いすゞは、CNGセラミックエンジン搭載ハイブリッドトラック、日野は、DMEエンジンハイブリッドバスと尿素SCRについて発表した。
ちょうど台風18号が札幌を直撃しようとしていたためそちらに関心が集まっていたせいか質疑はあまり活発ではありませんでした。強い風のため北大構内は倒木が多くて大会後半は気が散る環境でありましたが、交通機械のエネルギー課題について異なる分野間の情報交換の場として有意義であったと自画自賛して、報告を終わります。