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技術ロードマップ委員会

2024年度JSME技術ロードマップ委員会第2回ハイブリッドセミナー開催報告

報告者 山崎 美稀(技術ロードマップ委員会委員長、(株)日立ハイテク)

 

2024年8月2日、日本機械学会技術ロードマップ委員会は、第2回ハイブリッドセミナー「環境とエネルギーの未来共存の展望」を開催した。本セミナーは、持続可能な社会の実現に向けた技術ロードマップの展開を議論し、技術開発者と社会が直面する課題についての共感と理解を深めることを目的とするものである。今回のセミナーでは、エネルギー分野における脱炭素化技術の最新動向と、持続可能な資源循環のための複合計測ソリューションに焦点を当てた。

 

表1 ハイブリッドセミナーのプログラム

時間 内容 発表者(敬称略)
15:00~15:05 開会の挨拶・委員会活動紹介 山崎 美稀(技術ロードマップ委員長、(株)日立ハイテク)
15:05~16:30 特別講演「エネルギー分野における脱炭素化技術の最前線 小原 健一郎(三菱重工(株)技術統括・主任技師)
16:30~17:00 講演「環境とエネルギーの相互変革に向けた統合型ソリューション 山崎 美稀(技術ロードマップ委員長、(株)日立ハイテク)
17:00~17:30 パネルディスカッション モデレータ:山崎 美稀(技術ロードマップ委員長)、パネリスト:各講演者、参加者

(下線の部分はリンクが付けられているのでクリックすると資料がダウンロードできます)

 

特別講演「「エネルギー分野における脱炭素化技術の最前線」では、三菱重工業株式会社の小阪 健一郎 技監・主幹技師が登壇し、同社のエナジートランジション戦略、水素技術、高砂水素パークにおける実証実験の進捗について詳しく解説した。まず、三菱重工業が推進する水素・アンモニア発電技術の現状が説明された。従来の化石燃料発電からの脱却を目指し、水素ガスタービンの開発が進められていることが強調され、また、高砂水素パークにおける実証実験では、ガスタービン発電への水素燃料導入の試験が進行しており、その成果が報告された。水素・アンモニアの混焼技術に関する取り組みや、今後の商用化へのロードマップも示され、技術革新の方向性についての具体的な見解が述べられた。さらに、カーボンニュートラルの達成に向けた課題として、水素の製造・貯蔵・輸送インフラの整備が必要であることが議論された。特に、水素の低コスト化と安定供給のための技術開発が今後の重要な鍵となることが強調され、参加者との質疑応答を通じて、技術的・経済的な課題について活発な意見交換が行われた。

講演「環境とエネルギーの相互変革に向けた統合型ソリューション」では、委員長より、CCUS(Carbon Capture, Utilization, and Storage)技術の最新動向や、再生可能エネルギーの統合、持続可能な資源循環を支える計測技術の進展についての説明と環境とエネルギーの相互補完的共存をテーマにした技術ディスカッションが行われた。CCUS技術については、CO₂回収・利用技術が持続可能なエネルギーシステムにおいて不可欠な要素であり、特に産業界との連携による技術実装が急務であることが指摘された。さらに、精密な環境モニタリングとデータ解析を可能にする計測技術の進化が、脱炭素化における精度向上と効率化に寄与することが述べられた。また、2050年に向けた持続可能な社会の実現に向けて、技術ロードマップの活用と政策との連携が求められることが議論された。特に、エネルギーの効率的利用とカーボンニュートラル技術の開発・普及が今後の主要課題となることが確認された。

本セミナーを通じて、脱炭素技術の進展や持続可能な社会像の実現に向けた具体的な取り組みについて、多くの示唆が得られた。JSME技術ロードマップ委員会では、今後も2050年の社会実現に向けた技術戦略の議論を継続し、学術界、産業界、政策立案者の連携を強化していくことが重要であると考えている。本セミナーの成果を踏まえ、引き続き技術開発と社会実装の両面から課題を検討し、持続可能な未来に向けた実践的な議論を推進していく。

お知らせ 2025/02/05