2024年 JSME 技術ロードマップワークショップ(WS)開催報告
報告者 山崎 美稀(技術ロードマップ委員会委員長、(株)日立ハイテク)
日本機械学会(JSME)技術ロードマップ委員会は、2030年の技術動向レビューおよび2050年の社会像の具体化を目的としたワークショップ(WS)を開催した。本WSは第1回目が3時間のハイブリッド形式のチームで7月30日行われ、第2回目は4時間の対面形式のチームで12月26日実施された。参加メンバーは日本機械学会技術ロードマップ委員会メンバー、JSME会員や産学官関係者が参加した。
本WSは、2050年の理想的な社会像を実現するための技術と戦略を検討する場として設定され、特に持続可能な共存(Sustainable Coexistence)、包括的な接続性(Inclusive Connectivity)、調和された持続可能性(Harmonized Sustainability)の三つの柱に焦点を当てて議論が行われた。持続可能な共存では、環境・エネルギー・資源リサイクル問題への技術的アプローチや、地方と都市の均衡、インフラの最適化、生産性向上、物流・製造技術のイノベーションについて議論された。包括的な接続性では、地域社会の多様性と包摂性の確保、サイバー空間と現実世界の統合、AI・ロボティクス技術による社会貢献について検討された。調和された持続可能性では、デジタルリアルとバーチャル空間の融合、サステナビリティ技術の革新と実装、AIやデータ活用による新たな社会モデルについて話し合われた。
表1 WSのプログラム
項目 | 議題 |
0 | 全体説明・Q&A |
1 | 2030年のレビュー: 技術キーワード分析 |
2 | 持続可能な社会への私たちのビジョンの確認 |
3 | 私たちの未来社会の三つの柱の確認 |
4 | 2050年社会像に向けたビジョン: 未来への計画 |
5 | 融合による価値創生 |
6 | 全体共有・Q&A 50分 |
(下線の部分はリンクが付けられているのでクリックすると資料がダウンロードできます)
ワークショップの全体説明では、技術ロードマップとは何か、その重要性、そして2030年のレビューと2050年社会像との関連性が示された。技術ロードマップ委員会のビジョンとして、社会のニーズに応じた技術の将来予測と、持続可能な社会の実現に向けた技術戦略の構築が強調された。過去の技術ロードマップの実績と成果が紹介され、特に持続可能なエネルギー、マテリアルリサイクリング、CCUSなどの環境技術の役割が議論された。また、社会と技術の関わりの中でどのように未来の社会像を設計していくかについて説明され、技術革新だけでなく社会的要因や政策的アプローチの重要性も確認された。JSME技術ロードマップ委員会が果たす役割として、技術の未来を描き、社会と技術の進展をリードしていくことが改めて強調された。
社会像1の持続可能な共存の議論では、環境・エネルギー問題の解決に向けた技術革新やサーキュラーエコノミーの推進が注目された。地方と都市の格差解消に向けたエネルギー供給やスマートシティ技術の活用が重要視され、持続可能なエネルギー生産と効率的な利用を支える新材料や熱工学的最適化の必要性が指摘された。
社会像2の包括的な接続性の議論では、サイバー空間と現実世界の統合がもたらす新たな価値創出に焦点が当てられた。デジタルインフラの拡充やAIを活用した地域社会の包摂性向上、ロボティクス技術による医療・教育支援の可能性が検討された。特にQoW(Quality of Work)の向上を目指した技術開発が求められた。
社会像3の調和された持続可能性に関する議論では、デジタルとリアルの融合による持続可能な社会構築が議題となった。メタバース技術の発展やパーソナライズされた移動・生活体験の実現、瞬間体験共有技術の社会実装が提案された。感情認識AIを活用したエンパシックコミュニケーションや、ウェアラブル医療デバイスの普及による個人の健康管理の高度化が今後の課題として挙げられた。
本WSを通じて得られた知見を基に、JSME技術ロードマップ委員会では今後の技術戦略を策定し、2050年の社会像に向けた具体的なアクションプランを推進する。今後の活動として、ワークショップの継続的開催、産学官連携による技術ロードマップの改訂、2050年の社会課題に即した技術開発と政策提言を進めていく予定である。
お知らせ 2025/02/03