2022年度第1回オンラインセミナー 開催報告
報告者 山崎 美稀(技術ロードマップ委員会委員長、(株)日立ハイテク)
2022年8月3日(金)に技術ロードマップ委員会主催の2022年度第1回オンラインセミナーを開催した。
本セミナーでは、「持続可能な未来の実現のための技術ロードマップ」をテーマに、「サーキュラーエコノミーに向けたロードマップ設計」の講演および「サーキュラーエコノミーに関する技術・政策動向」の招待講演の話題提供と議論を通じて、日本機械学会および機械工学分野における技術ロードマップ策定の今後の活用に反映していくことを目的とした。オンライン開催であることやサーキュラーエコノミーという社会課題の重要テーマに対する関心の高さを反映して232名と予想を上回るご参加をいただいた。
表1 セミナーのプログラム
15:30~15:40 | 開会の挨拶と技術ロードマップ委員会の活動紹介
(日立ハイテク・山崎美稀、技術ロードマップ委員会委員長) |
15:40~16:20 | 講演 「サーキュラーエコノミーに向けたロードマップ設計」
(東京大学・木下 裕介、技術ロードマップ委員会委員) |
16:20~17:00 | 招待講演 「サーキュラーエコノミーに関する技術・政策動向」
(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 技術戦略研究センター・中村 勉 ユニット長) |
(下線の部分はリンクが付けられているのでクリックすると資料がダウンロードできます)
本セミナーのプログラムを表1に示す。冒頭の「開会の挨拶と技術ロードマップ委員会の活動紹介」では、委員長から、本委員会の活動軌跡、ビジョン、本年度の目的・計画などの活動内容の紹介と本員会の活動を今後どのように社会の期待と要請に応えて行くかについて説明がなされた。
講演「サーキュラーエコノミーに向けたロードマップ設計」では、東京大学の木下委員より、将来の製造業・ものづくりのあるべき姿についての問題定義と、未来を描くアプローチの一つであるロードマップの研究について紹介がなされた。ロードマップ研究の歴史的背景、技術ロードマップ委員会による機械工学全体のロードマップの取り組み、技術ロードマップの作成方法、サーキュラーエコノミーに向けたロードマップ研究の必要性と課題について説明がなされた。ロードマップ作成活動には不可避的に繰り返しが発生することから、作業効率化(アジャイル)のためのデジタル技術の活用が有望視されている点が指摘された。
招待講演「サーキュラーエコノミーに関する技術・政策動向」では、NEDO技術戦略研究センター・中村勉ユニット長より、NEDO技術戦略研究センターの紹介、資源循環の政策動向・インパクト・デジタル技術の活用、CCUS/カーボンリサイクルの技術・政策動向について紹介がなされた。資源循環のインパクトについては、関連データを用いて定量的に資源循環による産業分野のCO2削減への期待,生産量への影響について説明がなされた。各種資源材料のリサイクルに対する研究戦略策定では、現状の技術体系と課題の把握と先端融合技術やデジタル技術による実現したい将来像を提示し、フォアキャストとバックキャストの2つの視点で計画の策定へと落とし込んでいく点に特徴がみられた。
講演後のQ&Aでは、チャットで質問を受け付け、講演者が回答するという方式を採用した。参加者からは、ロードマップ作成活動を企業の事業戦略策定に落とし込むための方法、ロードマップ作成プロセスと結果の関係性、社内のロードマップを作成するための具体的な方法など、多岐にわたる質問が寄せられた。また、環境とエネルギーの相互補完的関係から、2050年に向けての再生エネルギー関連の材料のリサイクルの課題やビジネスのチャンスについて質問が寄せられ、電池や複合材料のリサイクル・リユースの取り組みについて議論が交わされた。
本セミナーを通して、持続可能な未来の実現のための技術ロードマップ作成へのニーズの高さがあらためて浮き彫りとなった。今後も技術ロードマップ委員会では、年次大会でのシンポジウムやオンラインセミナーの開催などを通して、ロードマップ作成と実践に関する手法・事例の収集と知識基盤の構築、そして学会員等への情報提供を進めていく予定である。
以上
お知らせ 2022/08/10