第76,77期委員長

冨田信之(武蔵工業大学)

ご挨拶

日本機械学会に宇宙工学部門が設置された最大の理由は、既存の部門に対する横断 的部門として、拡大しつつある宇宙分野に、学会として対応してゆく窓口が必要ということであった。 設置後約10年を経過した現在、その任務の重要性は益々増大しているように思われる. 最近、衛星、ロケットで起こった大きな不具合の大部分が、ETS-VIを初めとして、 みどり、かけはし、そして、H-II 8号機、いずれもその不具合の原因は、機械工学 の基礎分野に関係していた。その原因調査などにおいて、機械学会の各部門の活躍 は目覚ましいものがあったが、開発段階に於いて、宇宙工学部門が窓口となって、 もっと早くから他部門を引き込んでおけなかったかとの反省もある。 機械学会の宇宙工学部門としては、このような状況を謙虚に受け止めて、設立本来の趣旨に沿った横断部門として役割を果たす必要があると考えている。今後、宇宙工学部門が窓口となって、重点的に対処して行かねばならない分野は、 私見によれば5つある。 第一は、宇宙環境下における機械力学、機械要素、トライボロジー、伝熱、流体、 燃焼などの機械工学の基礎技術分野である。第二は、ロボティクスを中心とする制御技術分野である。第三は、宇宙空間への施設の展開までを視野に入れた先端材料・工法の分野である。第四は、推進系・推進機関への基礎技術、要素の分野である。第五は、機械要素・システムの信頼性・安全性技術、リスク評価の分野である。このような分野に興味のある方々の機械学会への入会、宇宙工学部門への参加を期待する次第である。