2015年度 宇宙工学部門賞・一般表彰等受賞者
宇宙工学部門
2015年度部門賞・一般表彰等受賞者の紹介
宇宙工学部門の2015年度部門賞・一般表彰スペースフロンティアの受賞者,本部門推薦の日本機械学会若手優秀講演フェロー賞受賞者が決定し,表彰式が行われました.2015年11月14日に開催されました第23回衛星設計コンテスト最終審査会,並びに,2016年3月30日に開催されました宇宙工学部門2015年度部門賞・一般表彰 記念講演会において受賞者の紹介と表彰状の授与が行われました.以下に受賞者の方々を紹介します.
[部門賞受賞者]
功績賞
古谷 寛(東京工業大学)
古谷氏は,第91・92期の宇宙工学部門部門長を務め,同部門の発展・活性化に寄与するだけでなく,展開宇宙構造物の研究・教育ならびに宇宙実証の研究開発プロジェクトへの参加を通じて,長年にわたり日本の宇宙工学の発展に貢献するとともに,若手育成への貢献も大きい.以上の業績について部門委員会で協議を行い,功績賞にふさわしいとの結論に至った.
宇宙賞
金星探査機「あかつき」プロジェクトチーム(代表 石井信明 宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所)
金星探査機「あかつき」は2010年5月21日にH-IIA-F17で打上げられた.約半年後の12月7日メインエンジンの不具合により軌道投入に失敗した.金星再会合まで早くても5年,それまで探査機を健全に維持することが最大の課題となった.1998年打上げの火星探査機「のぞみ」では,途中電源制御機能が喪失し,火星周回軌道への投入を断念した.
太陽周回中は,地球軌道上の約3倍,設計仕様(金星環境)の約1.5倍の入熱があり,スラスタ,姿勢センサ,アンテナなど外部露出機器を中心に熱解析を実施し,システムへの負荷が少ない運用を継続した.メインエンジンを失ったが,長期間に渡る過酷な宇宙環境を克服して,金星周回軌道への投入を成功,日本初の惑星周回衛星になった.
本プロジェクトチームは,過去の「のぞみ(火星探査機)」の失敗で得られた経験をもとに,「あかつき」の最初の軌道投入の失敗を乗り越えて成功を勝ち取り,これからの惑星探査の,まさにその出発点になる技術を獲得した,という点で高く評価できる.以上の業績について部門委員会で協議を行い,功績賞にふさわしいとの結論に至った.
[一般表彰受賞者]
スペースフロンティア
深宇宙通信実験機「しんえん2」プロジェクトチーム(代表 奥山圭一 九州工業大学)
本チームは,アマチュア衛星として初となる超低電力の送信機による超遠距離通信を行う基礎技術の構築,炭素繊維強化熱可塑性プラスチックを用いた軽量で組み立て工程を大幅に簡略化した衛星構体の宇宙実証など挑戦的なミッションに成功し宇宙工学の発展に貢献をした.以上の業績について部門委員会で協議を行い,一般表彰スペースフロンティアにふさわしいとの結論に至った.
微小重力環境下加熱調理器Dekitate 東京工業大学大学院チーム(代表 小沢尭也 東京工業大学)
本チームは,第23回衛星設計コンテストにおいて,宇宙ステーションでの使用を想定した微小重力下で使用する加熱調理器具について検討し,実現性のあるコンセプトを示すとともに定量的な検討結果を示し,優秀な成績をおさめた.その内容は最終審査会でも高い評価を得たので一般表彰スペースフロンティアに値すると判断した.
優秀学生講演賞
宮里和良(東京工業大学)
2015年度スペース・エンジニアリング・カンファレンス(SEC’15)における講演において,研究テーマの有益性と重要性に関する評価が特に高かった.また,発表者の研究内容に対する貢献度や理解度も高く,発表や質疑応答においても内容をよく理解している様子が伺えた.以上の理由から,部門委員会で協議を行い,日本機械学会宇宙工学部門優秀学生講演賞にふさわしいとの結論に至った.
[日本機械学会若手優秀講演フェロー賞受賞者]
深谷和貴(名古屋大学)
2015年度年次大会における講演において,研究テーマの独創性・斬新性の評価が特に高かった.講演発表の内容は構成がよく練られており,理解し易かった.質疑応答においても質問に対する回答が的確で,深い理解を基盤として研究に取り組んでいる様子が伺えた.以上の理由から,部門委員会で協議を行い,日本機械学会若手優秀講演フェロー賞にふさわしいとの結論に至った.