はじめに
宇宙工学部門は,その前身である宇宙工学委員会の発足(1989年)から始まりました.
1991年から「宇宙工学部門」となり,機械工学の基礎的各分野を総合・システム化し,宇宙開発への適用を図る横断分野の一つとして組織されました.日本機械学会では小さい部門ですが,わが国の宇宙開発に関わる研究者の多くが会員登録している特徴のある部門です.
宇宙工学の特徴と今後
天気予報の画像(気象観測衛星)やGPSなど宇宙利用は一般化していますが,一方で,宇宙開発はロケットや人工衛星などの開発を国家事業として取り扱う特定の企業や研究者だけのもの,という印象があります.しかし,最近では宇宙商業化や民間企業の参入が活発化し,かつ民生技術の宇宙への適用の重要性が急浮上しています.次世代の有人宇宙,惑星探査などを進める基盤として国家規模のプロジェクトだけでなく,小型人工衛星を活用したプロジェクトも注目されており,先端民生技術の将来的な適用領域の一つとなろうとしています.
技術的には,宇宙機器の軽量化,振動・衝撃,宇宙環境,メンテナンスフリーなど極限的要求が多く,機械工学の基盤分野(材料,機構・潤滑,熱,流体など)の適用とそれらの高いレベルでの融合・調和が求められます.
宇宙工学部門の活動
宇宙工学部門では,宇宙開発に携わる技術者間の情報交換の場を提供するとともに,機械工学技術者へ宇宙工学の情報を提供することを目的として活動を行っています.おもな活動は以下の通りです.
・「宇宙サロン」:宇宙の面白さ,宇宙利用の有用性などを伝えるため,ふだん接触できないような異分野の専門家のお話を伺う企画です.一般の方々を対象とすることもあります.
・ 「宇宙工学講座」:若手研究者・技術者を対象に,実際の宇宙開発を感じ,学べる場を提供する企画です.
・ 「宇宙実践セミナー」:宇宙工学を学ぶ学生,若手研究者・技術者を対象に,宇宙開発・利用に関するより実践的な内容を学ぶための講習会です.
・ 「機械学会年次大会」:部門OSや特別企画を実施するとともに,部門横断OSについても積極的に企画しています.また,市民フォーラム行事として他部門との共催でのイベントを実施しています.
・ 「スペース・エンジニアリング・コンファレンス(SEC)」:部門講演会です.小規模部門ならではの密度の濃い議論の場を提供します.
・ 「衛星設計コンテスト」:宇宙開発・利用に興味ある学生を対象とした,衛星設計,利用アイデアに関して競うコンテストを主催しています.
おわりに
「宇宙工学部門」は小さい部門ですが,その特徴を生かして日本機械学会の多様な基礎技術分野と密接な連携を実現するとともに,長期的かつ挑戦的な分野で会員の活躍の機会を提供しつつ他学会との連携も活用しながら当学会の発展に貢献しております.