第82期部門長就任にあたって
第82期部門長 大築康生(川崎重工業株式会社)
このたび,第82期ロボティクス・メカトロニクス部門長をおおせつかりました.
本学会の中でも活発な活動を行っている本部門の運営に携わらせていただくことは,
大いなる光栄であるとともに,責任の重さに身の引き締まる思いでおります.
ロボティクス・メカトロニクスは非常に広範囲な学術分野,技術分野から成り立っております.
機械工学一般はもとより,電気・電子工学,制御・情報工学を基盤技術としていますが,
適用分野によっては医学,物理学さらには心理学等,通常の工学分野を超えた分野も包含し,
これらを適切に組み合わせていくシステム志向の強い学術といえます.
この点が,従来の機械工学各分野では専門領域を深めていく傾向が強いのに対しての本部門の特徴であり,
広い学術分野の人々の交流が刺激となって,本部門の高い活性度の大きな要因になっていると思います.
本部門の登録者を見ますと,機械学会の平成15年10月末現在,
本部門への第1位から第3位までの登録者は5,269名であり,21部門中6位と上位に入っています.
本部門の活動では,毎年ロボティクス・メカトロニクス講演会(ROBOMEC講演会),
ロボティクスシンポジア,福祉工学シンポジウムを主催し,ロボットグランプリを開催する他,
他学会協会と協力し,多くの国内外のシンポジウムを開催,共催しています.
また,部門独自の英文誌を発行する,「地区技術委員会」を全国に設け地域のニーズとシーズの吸収に勤める,
各種研究会を設置して先端的テーマの発掘を行う等の活動を活発に行っており,
これらは支部・部門活性化委員会からも高く評価されています.
当部門を代表する活動であるROBOMEC講演会を例に挙げますと,
平成15年5月23日〜25日に函館で開催されたROBOMEC’03では770件の講演と991名の参加者があり,
本年6月18日〜20日に名古屋で開催されるROBOMEC’04でも多数の発表と参加者が見込まれています.
全講演はポスターセッションで行われ,発表者と質問者の間で熱い討議が繰り広げられています.
またロボティクスシンポジアでは,毎回「オーバーナイトセッション」と称して,深夜まで活発な論議が交わされます.
当部門では,30台,40台を中心とした若手研究者が部門活動でイニシアティブを取っていることがこれらきわめて高い活動性に大きく寄与しており,
1988年発足という若い当部門の大きな特色と言えると思います.
次に実社会におけるロボットの現状を見ますと,産業用ロボット業界は5,000億円規模の出荷額で,
好不況の波はありながらも漸増の傾向にあります.
加えて近年は,エンタテイメントロボット,医療福祉ロボットが実用の域に達しつつあり,
災害ロボット等も実用化に向けて活発に開発されつつあります.
さらに,ロボットという形にとらわれず,
ロボット関連技術(Robotics Technology:RT)を広く社会に適用しようと言う機運が高まり,
政府も新規プロジェクトや法整備に意欲的であります.
このような状況下で各種ロボットやRTの発展に,当部門が期待されるところは大であり,
それに応えていかなければならないと考えます.
そのためには,より自由で闊達な部会活動が必要であり,その環境作りに努力したいと思います.
このように順調に発展してきている当部門ですが,
今後の課題として,大学・研究機関と産業界との関係強化を挙げたいと思います.
これまで多くの優れた学術成果が当部門から出ておりますが,
成果の産業界への適用という面では十分とは言いがたい面があります.
学界と産業界間でニーズとシーズを突合せて研究テーマを抽出し,
共同開発を推進することが望まれます.
この実現には多くの困難があるでしょうが,効果は非常に大きなものと思われますので,
皆様のお知恵を借りながら実を上げるべく努力する所存であります.
ロボティクス・メカトロニクスは若く今後大いに発展する技術であると同時に,
主要な社会基盤となる技術でもあります.
その牽引力となるべき本部門の更なる発展のため微力を尽くしたいと思いますので,
会員の皆様には一層のご指導とご鞭撻をいただきますようお願いいたします.
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Last Update : 2004/05/13
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