第81期部門長就任にあたって
第81期部門長 則次俊郎(岡山大学)


 第81期ロボティクス・メカトロニクス部門部門長に就任させていただきました. 私自身,若い頃よりロボティクス・メカトロニクスの分野に強い夢と憧れを抱いて研究活動を進めてきましたので, 部門長として本部門の運営に携わらせていただきますことは大変光栄に存じます.

 ロボティクス・メカトロニクスは極めて広範な技術分野を対象とします. 従来の機械工学の体系は,材料,エネルギー,機械設計などの専門分野に深化した縦割りの編成となっています. これに対して,ロボティクス・メカトロニクスは機械工学,制御工学,電子工学,情報工学など多分野の横断的編成に基づいています. このため,部門活動を通して,種々の専門分野の人々との情報交換や交流が可能です. このことが本部門活性化の要因の一つであると考えられます. 平成15年2月末現在において,本部門の第1位登録者は1431名,第2位登録者は1847名,第3位登録者は1768名となっています.

 1920年にカレル・チャペックによるSF戯曲「ロッサム・ユニバーサル・ロボット会社」によって誕生した「ロボット」は, 1962年にアメリカにおいて産業用ロボットのバーサトランとユニメートとして現実のものとなりました. 我が国では,1970年代の要素技術や制御手法に関する基礎研究の成果に基づいて1980年代初頭に第1次ロボットブームが訪れました. この時期に,種々の産業用ロボットが開発され,我が国はロボット技術において世界をリードする地位を獲得しました. 1990年代のバブル崩壊後の安定成長期を経て,1990年代後半に,ヒューマノイドロボットやエンターテインメントロボットが開発され, 第2次ロボットブームを迎えました. それ以後,人間共存・協調型ロボット,医療・福祉ロボット,レスキューロボットなどの研究開発が活発になっています.

 これらの経過の中で,本部門は1988年に設置され,我が国のロボティクス・メカトロニクス技術の発展を牽引してきました. 本部門は,ロボティクス・メカトロニクス講演会(ROBOMEC講演会), ロボティクスシンポジア,FANシンポジウムなどを主催するとともに,ロボットグランプリを開催しています. さらに,本年度は福祉工学シンポジウムを開催する予定です. また,これまでに3回の先端メカトロニクス国際会議(ICAM)を開催するなど, 本部門は名実ともに我が国におけるロボティクス・メカトロニクスをリードする組織に成長しています.

 ROBOMEC講演会は本部門を代表するイベントであります. 松江で開催されたROBOMEC’02では,講演論文数684件,参加者は861名に達しました. ROBOMEC講演会の規模は回を重ねる毎に拡大しています. これは,実行委員長を始めとする関係各位の創意工夫とご尽力の賜であることは言うまでもありませんが, 全セッションをポスター講演とする本講演会の特徴が大きな魅力であると考えられます. ロボティクス・メカトロニクスに関する先進的研究者,技術者,学生が一同に会して, 発表者と質問者が納得するまで議論できる時間と場所を提供するものです. 本年5月23日〜25日に函館で開催されるROBOMEC’03では775件の講演発表が予定され,1000名を超える参加者が見込まれています. ROBOMEC講演会は,今や,我が国におけるロボティクス・メカトロニクス技術の方向を左右する一大イベントであると言っても過言ではありません.

 本部門の活動に対して,支部・部門活性化委員会の評価委員より下記のような所見が示されています.
・独自の英文ジャーナルを出版するなど,先導的活動をしており活性化に努力している.また,ロボットグランプリも特筆される.
・他学会,協会と共同で多くのイベントを行っている.また,部門所属の研究会も多彩であり,先端的テーマ発掘の努力をしている.
・「地区技術委員会」を全国に設け,地域のニーズとシーズを吸収している.
・ロボティクスとメカトロニクスを融合させて,学会内でその領域を定着発展させた功績は高く評価できる.
・21世紀のロボティクス,メカトロニクスの学術的展望を更に明確にして 欲しい.
(日本機械学会誌 2003.1 Vol.106, No.1010より引用)
 かなり高い評価結果であると考えられます. これは,歴代部門長を始めとする運営委員各位のご尽力と会員諸兄のご協力の賜であります. 21世紀におけるロボティクス・メカトロニクスは,引き続き生産手段として生産性の向上に貢献するとともに, 人間との共存・共生や人類と地球環境との共存などの視点に基づいた方向性を確立する必要があります.

 現在,低迷する経済状況の打開と将来の持続的発展の方策として, 大学の研究成果を知的財産として社会に還元し有効に活用することが期待されています. また,大学においては,国立大学の独立行政法人化などを控え, 研究成果を特許等の知的財産として保護・運用することにより更なる研究開発資源を獲得することが求められています. 全国的に叫ばれている産学官連携の基本概念はこのような「知的創造サイクル」を構築することであります. これまで,産学官連携の議論において学会の存在はほとんど考慮されませんでしたが, 産学の会員から構成される学会も産学官連携の推進に積極的に貢献するべきであると考えます. 特に,ロボティクス・メカトロニクスは産学の融合によって初めて完成される技術であります. 部門主催の講演会が産学相互のシーズとニーズが効果的に融合する場となることが望まれます. このような観点からの部門活動の在り方についても議論したいと考えています.

 ロボティクス・メカトロニクスは,我々の夢や憧れを実現する無限の将来性を秘めた技術です. また,講演会や懇親会での若い研究者や学生諸君の活気に溢れた議論は本部門の貴重な財産であります. 本部門のますますの発展のため,先輩諸氏ならびに会員諸兄のより一層のご指導とご鞭撻をいただきますようお願い申し上げます.

目次にもどる


Copyright(C) 2003 日本機械学会ロボメカ部門

Last Update :  2003/05/12

掲示責任者   : 日本機械学会ロボメカ部門広報委員会