メカトロで遊ぶ会(ロボコンジュニア)
東北学院大学 岩本正敏(メカトロで遊ぶ会代表)
子供たちの「モノづくり教育」について考える市民グループとして1996年に「メカトロで遊ぶ会」は発足しました。会の趣旨に賛同したエンジニアの殆どが子供の頃にラジオを組み立てたり、レコードプレーヤのカートリッジを交換したり、工業製品を分解するといった体験から、モノの仕組みや工具の使い方等多くのことを学んだ経験をもっています。ところが、現在の工業製品は電子化、小型化が進みその仕組みを理解することは難しくなってきました。また、仕組みを理解してないとしてもそれらを使用することにも支障はありませんし、交換部品はすべてモジュール化されておりだれでも簡単に扱えるようになってきました。利用者にとっては便利になってきているいるのですが、子供たちが工業製品を扱うことで、モノの仕組みに興味を持ちエンジニアの道に進むことは次第に難しくなって行くと考えます。子供たちの遊びにも変化が現れてきております。昔からある「コマ遊び」、「凧あげ」等は遊ぶためにも技術の修得が必要であり、遊びから体験的にモノの仕組みについて多くのことを学ぶことができたと考えますが、現在ではモノを手で動かす遊びの機会が減り、電子的なゲームが主なる遊びに変わってきております。ゲームを批判するつもりはありませんが、モノを直接触る機会が減ってきていることは次世代を担うモノづくりのエンジニアの減少に繋がるのではと危惧します。「メカトロで遊ぶ会」の発足時に私たちは、現代社会においては子供たちが技術に親しみ、遊びからモノの仕組みを学べる環境整備を大人の手で新たに準備することが必要になってきたのではと考えました。
そこで、3つの事を実行することにしました。コンピュータ、センサー、アクチェータの技術について学べる学習用ロボットを開発すること。ワークショップでエンジニアと子供たちが一緒に活動し遊びを創出すること。技術の向上が行える環境を整備することです。具体的な活動として、1997年に学習用ロボットの開発を行い、仙台市科学館を会場にワークショップ、そしてロボコンジュニアを開催いたしました。学習用ロボットを開発するにあたり、ロボットの仕組みが理解しやすいように、少ない部品で構成するようにしました。このことでロボットは廉価になり、子供たちが自分のロボットを持てるようにしました。また、ロボットの構成部品には子供たちにとって身近な物を使うことに心がけ、センサーとしてはテレビ、ビデオデッキ等で利用されている赤外線受光モジュールを1つ、モーターは模型用の130型モーター、ギヤボックスも市販の模型用のものを利用することにしました。市販品を使うことで子供たちがロボットを改良できる余地を持たせています。このロボットは1つの光学センサーしかもたない仙台生まれですから、仙台の殿様で独眼竜で有名な伊達政宗の幼名「梵天丸」をロボットの名前としました。「梵天丸」のワークショップは1999年には月1回から2回のペースで開催され、すでに60回を越えております。1回のワークショップには10名程度の子供と数名のボランティア講師が参加し、午前中にロボットの組み立て、午後からはプログラミングの指導を行います。ボランティアスタッフには、大学教員、学生、エンジニア、そして様々な職種の方々、そして年齢は「梵天丸」ワークショップに参加した経験を持つ中学生からシニアまでと広く、女性スタッフの参加もいただいております。子供たちとの交流はスタッフにとっても学ぶことは多く、毎回新しい発見があり、それが仕事へのヒントにもになっているようです。
子供たちにとって自分で作ったロボットには愛着があり、技術向上の機会としてこれを使った競技会、ロボコンジュニアを開催することになりました。ルールは一畳の畳の上に2つのポールを置き、それらを8の時に回り戻ってくる時間を競うものです。ルールを簡単にし、子供でも簡単に参加することができますが、プログラム、センサー感度、ギヤ、タイヤ等を調整することで記録が向上できるように配慮しました。ロボコンジュニアは知能ロボットコンテストに合わせて仙台市科学館で開催されます。知能ロボットコンテストを子供たちは応援し、ロボコンジュニアでは選手としてロボコンを楽しみます。昨年の知能ロボットコンテストの表彰式では、ロボコンジュニアの入賞者の競技を紹介しました。会場からは子供たちに特に大きな拍手が送られ子供たちが喜ぶことは言うまでもありませんが、拍手を送る大人たちも子供たちの姿に感動を覚えたようです。ワークショップ等で子供たちと接していると、一般的に言われている理科離れ、モノづくり離れは大人がその環境を作ってしまったのではと考えてしまいます。子供たちは科学技術について強い興味を持っており、ワークショップでは次々に様々な質問をスタッフに問いかけます。子供たちの周りに科学技術についての質問に答えられる人材が少ないことが理科離れを引き起こしている要因の一つではないでしょうか、エンジニアと子供たちが一緒に活動することで、子供たちの質問に答え、子供たちの夢に耳を傾け、科学技術を継承していく環境の整備が求められていると考えます。
メカトロで遊ぶ会:
http://www.robotics.is.tohoku.ac.jp/TORO/Asobu/index.html
仙台市科学館:
http://www.smus.city.sendai.jp/
ロボコンジュニアでのスナップ
ワークショップ(仙台市科学館)
ワークショップ(仙台サンプラザ)
ワークショップ(仙台市科学館)
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Last Update : 2000/7/7
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