第101期(令和5年度)部門賞・部門一般表彰

部門賞「功績賞」、「社会業績賞」および部門一般表彰「貢献表彰」は部門員からの推薦に基づき、優秀講演表彰は2022年8月に開催されたICONE29 、同年9月に開催された年次大会、同年11 月に開催されたFDR2022、2023年6月に開催されたPATRAM22 、同年5月に京都で同時開催されたICONE30 、ICOPE2023 での座長、聴講者等による評価結果に基づき、部門賞委員会にて慎重に審議を重ね、運営委員会での議を経て、今般下記の諸氏(敬称略)に贈賞の運びとなりました。ここにご報告申し上げます。なお、ご所属・役職は2022年10月時点のものであり、優秀講演表彰については、ご講演時のご所属を記載しております。

【部門賞「功績賞」】


■ 阿部 豊(筑波大学名誉教授)

阿部 豊 氏は、日本原子力研究所において、日米独3ヵ国共同のPWR再冠水実証研究ならびにスリーマイルアイランド事故調査を担当するとともに、デブリベットのドライアウト熱流束に関する実験研究を通じてシビアアクシデント時の冷却限界の予測に貢献し、山形大学では、気液二相流に関する基礎研究を通じて軽水炉の安全評価に資する多大な成果を挙げ、その後、筑波大学では、水蒸気爆発や溶融燃料の冷却挙動などの超高速伝熱流動現象の研究をすすめ、原子炉のシビアアクシデント時の安全評価に資する多大な成果を挙げた。本部門では、部門長を務めるとともに、原子力工学国際会議ICONE技術委員長、組織委員長、動力エネルギー技術シンポジウム実行委員長、その他部門専門委員会委員・委員長ならびに学会標準事業委員会委員などを歴任、学会および部門活動の運営、活性化、発展に貢献した。社会活動では、内閣府原子力安全委員会専門委員ならびに原子力規制委員会新安全基準に関する検討チームの委員として新規制基準の作成に貢献した。以上の功績は功績賞に値するものである。

■ 石塚 達郎(株式会社日立製作所 元代表執行役 執行役副社長)
石塚 達郎 氏は、日立製作所において電力会社向け大型発電機の技術向上に大きく貢献するとともに、火力・水力・原子力発電設備の技術部門と事業部門のリーダーとして活躍し、国内のみならず世界の発電分野の技術発展と電力インフラの経済性・信頼性の向上に貢献した。東日本大震災後の復旧活動では陣頭指揮を執り、福島第一原子力発電所への対応と、停止した広野、原町をはじめとする火力発電所や変電設備の短期間での復旧に大きく貢献した。日立市のインフラ復旧を並行して進めた一連の取り組みは国内外の主要メディアでも取り上げられ、世界に向けて日本社会の底堅さを力強く発信した。海外においては、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)の英国での炉型認証の取得、超々臨界石炭火力プラント(A-USC)の輸出・建設など、日本技術の普及拡大に尽力された。2013年には、ポーランド共和国において、超々臨界圧発電設備納入の指揮を執ったことなどが評価され、同国のエネルギー産業発展への功績が認められ、「エネルギー功労章」を受章されている。以上の功績は功績賞に値するものである。

■ 島本 恭次(関西電力株式会社 取締役)
島本 恭次 氏は、関西電力に入社後、火力発電所の運転・保守、火力・原子力発電所保修課長として現場を指揮、以降も姫路第二発電所長、火力部長、火力センター所長を歴任し、2016年には常務執行役員、火力事業本部長として、火力発電所の高効率化・高稼動運用に尽力されてきた。特に、東日本大震災以降、海南発電所2号機の再稼働や姫路第二発電所におけるコンバインドサイクル発電への設備転換工事の大幅な工期短縮による供給力確保に貢献した。姫路第二発電所蒸気タービン最終段動翼の一部破損に対しては、応急対策工事を陣頭指揮された。さらには、火力事業本部長として、相生発電所における燃料調達の柔軟性・経済性向上を狙った多種燃料の利用を可能とすべくボイラ等の一部改良工事やバイオマス発電への転換に貢献した。社会活動では、海外への技術支援を通じて海外技術者育成に寄与され、火力原子力発電技術協会の第17代会長として、火力分野の技術向上や人材育成に貢献し、我が国の経済の持続的発展に貢献してきた。以上の功績は功績賞に値するものである。

■ 犬丸 淳(一般財団法人電力中央研究所 専務理事)
犬丸 淳 氏は、電力中央研究所に入所後、石炭ガス化複合発電の実用化に向けて、その中核技術である石炭ガス化炉の開発に取り組んできた。日本独自技術である「空気吹き加圧二段噴流床ガス化炉」の基本技術確立に貢献するとともに、パイロットプラントで発生したトラブル事象に対してプロトタイプを活用した現象再現試験等により原因究明と対策を示し、プロジェクトの成功に大きな役割を果たした。さらに、250MW級実証機の設計・運転、石炭ガス化炉数値シミュレーション技術等を活用した支援研究を行い円滑な運転試験に貢献した。当該技術は、500MW級勿来IGCCとして商用化されている。上記業績に加えて、バイオマスガス化技術開発の推進、CO2回収型クローズドIGCC技術の開発の立ち上げを主導するなど、火力発電の脱炭素化に向けた技術開発に大きく貢献した。本部門では、部門長を務めるとともに、動力エネルギー国際会議ICOPEでは実行委員長をはじめ、各種委員会委員・幹事・委員長を務めるなど、本部門の発展に大きく貢献した。以上の功績は功績賞に値するものである。

【部門一般表彰「貢献表彰」】


■「加圧流動床燃焼(PFBC)複合発電プラントにおける保守・運転技術の確立と長期運転」

受賞者:一丸 雄二(九州電力(株) 苅田発電所 所長)、石川 良一(九州電力(株) 新大分発電所 所長)、西村 秀幸(九州電力(株) 苅田発電所 副所長)、室角 尚宏(九州電力(株) 松浦発電所 グループ長)、内村 健一(九州電力(株) 火力発電本部 課長)
苅田発電所新1号機(36万kW)は、世界最大の加圧流動床燃焼(PFBC:Pressurized Fluidized Bed Combustion)として、2001年7月に営業運転を開始した。PFBCは、高効率、コンパクト、低公害という特徴があるが、PFBCの流動床ボイラは、層内管の摩耗が激しく、溶融灰(石炭中の灰分が溶けたもの)が時間の経過とともにボイラ下部に肥大化して流動が不安定になるなど、安定運転が難しい状況であった。そこで、受賞者らは、摩耗対策として最も摩耗が激しい炉壁へのプロテクター設置、層内管への耐摩耗材の溶射や計画的な管の取替などの設備面での対策、そして、運用出力パターン確立、灰融点に基づく炭種選定、石炭や石灰石の最適粒径の導出などの運用面の改善によってこれらの問題を克服し、世界記録となる4,580時間の連続運転を達成するとともに、大型石炭火力と遜色ない発電原価を実現した。これらの成果は部門一般表彰に十分値するものである。

■「フィルタベントの国内実装の実現」
受賞者:フィルタベント・実装ワーキンググループ(代表:奈良林 直)
日本機械学会動力エネルギーシステム部門では、フランスのショー発電所(PWR)と、スイスのライプシュタット発電所(BWR)のフィルタベントの海外調査を実施した。全交流電源喪失時にも、ベント弁を手動で開ける延長シャフトなど入念に対策されていた。福島第一発電所にフィルタベントがあれば、事故時に放射性物質飛散による周囲の汚染は無かったと分析し、本部門安全規制の最適化研究会内にフィルタベントWGを設置した。このワーキンググループでは、フィルタベントの海外調査を進めるとともに、小児甲状腺がんの原因物質となる気体状の有機ヨウ素を除去するヨウ素フィルタの設置を世界で初めて提案し、専門書出版や市民開放行事を通じて一般の理解につなげ、そしてPWR、 BWRの原子力発電設備へ実装されることとなった。これらの成果は部門一般表彰に十分値するものである。

■「世界初の液化水素運搬船の開発と実証」
受賞者:村岸 治(川崎重工業(株) 液化水素運搬船開発部 特別主席)、浦口 良介(川崎重工業(株) 技術研究所)、山城 一藤(川崎重工業(株) 液化水素運搬船開発部)、奥村 健太郎(川崎重工業(株) 技術研究所)、上田 雄一郎(川崎重工業(株) 技術研究所)
カーボンニュートラル実現に向けて、再生可能エネルギー大量導入や化石燃料利用時のCO2の回収、利用、貯留(CCUS)が求められている。エネルギー貯蔵によるエネルギー供給の時間シフトや海外でのCCUSを伴うエネルギー輸入において、水素が二次燃料として期待されている。国家間を含む広範な領域で水素を輸送するには、LNGと同様に液化した状態で大量に輸送できるシステムの構築が必要である。川崎重工業が開発した「すいそ ふろんてぃあ」は、水素を大量に海上輸送できる世界で初めて建造された液化水素運搬船である。日豪間往復航行において、侵入熱による蒸発分を蓄圧し、外部に放散させることなく安全な海上輸送実証試験を世界で初めて成功させた。また、LNG運搬船と同様、貨物操作員が特殊技能を必要とせず運用可能な輸送荷役システムを構築した。これらの成果は部門一般表彰に十分値するものである。
なお、本事業の一部は、NEDO課題設定型産業技術開発費助成事業「未利用褐炭由来水素大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業(2015~2020年度)」におけるものである。

【日本機械学会 若手優秀講演フェロー賞】


〇第16回動力エネルギー国際会議(ICOPE2023)

  • 大竹 晶(東京理科大学)「High-frequency oscillation of vapor bubbles in microbubble emission boiling」

【部門優秀講演表彰】


〇日本機械学会2022年度年次大会

  • 小寺 毅(早稲田大学)「回転機の非接触予知保全における機械学習法の最適化」

〇第29回原子力工学国際会議(ICONE29)

  • 奥田 貴大(日本原子力研究開発機構)「Effect of the plasticity of piping and support structures on the seismic response of piping systems」
  • 青木 健(日本原子力研究開発機構)「Transient thermal hydraulic analysis for thermal load fluctuation test using HTTR」
  • 古市 肇(日立製作所(株))「Development of liquid film thickness measurement considering effect of curved gas liquid interface based on optical waveguide film」

〇福島廃炉研究国際会議2022(FDR2022)

  • Michal Cibula(東京電力ホールディングス(株))「Recent findings from Fukushima Daiichi Unit 1 primary Containment vessel investigations」

〇放射性物質輸送容器及び輸送に関する国際シンポジウム(PATRAM22)

  • 中河 良太(三菱重工業(株))「Structural design of MSF-type dual purpose cask for horizontal storage」

〇第30回原子力工学国際会議(ICONE30)

  • 植田 翔多(電力中央研究所)「Multi-dimensional two-phase flow measurements in simulated particle debris using wire mesh sensors and high-speed camera」
  • 藤原 広太(電力中央研究所)「Parametric study on reproductivity of tornado-like vortex in Ward-type chamber by using OpenFOAM」

〇第16回動力エネルギー国際会議(ICOPE2023)

  • 濵村 龍(東京工業大学)「Development of hydrogen permeable membrane for high-purity hydrogen production」
  • 長澤 剛(東京工業大学)「Visualization of oxide ion incorporation in LSCM-based fuel electrodes of SOEC during CO2 electrolysis」
  • 甲斐 玲央(九州大学)「A study on precise estimation of laminar burning velocity of hydrogen premixed flame: Effect of species diffusion models」
  • 黒瀬 築(東京理科大学)「Numerical simulation of heat transfer from combustion gas to the steam at superheaters with wrapper tubes in a coal-fired thermal power plant radiant boiler」