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機械工学年鑑2020
-機械工学の最新動向-

9. 動力

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章内目次

9.1 日本のエネルギー事情
9.2 火力発電
 9.2.1 日本の火力発電の動向
  a.電気事業者の発電設備/b.自家用発電設備/c.計画中の主な火力発電設備/d.火力発電の新技術
 9.2.2 海外の火力発電の動向
9.3 原子力発電
 9.3.1 日本の原子力発電の動向
  a.軽水炉/b.新型炉/c.核燃料サイクル
 9.3.2 世界の原子力発電開発の動向
9.4 新エネルギー技術
 9.4.1 燃料電池9.4.2 太陽電池9.4.3 バイオマス・廃棄物発電9.4.4 水素利用技術9.4.5 風力発電9.4.6 地熱発電9.4.7 電力貯蔵

 


9.1 日本のエネルギー事情

 2018年度の一次エネルギー国内供給(消費)は,資源エネルギー庁の「総合エネルギー統計(確報)」(1)によると,2017年度比-1.8%と2年ぶりに減少し,再び20,000PJを下回った(19,728PJ).内訳では,水力は2017年度を下回ったものの,引き続き非化石エネルギーが増加,化石燃料は減少という潮流が維持された.それでも,化石燃料比率は86%であり,東日本大震災以前より高い水準にある.一次エネルギーとして供給されたもののうち,エンドユーザーが実際に消費した分を表す最終エネルギー消費は-2.7%と,こちらも2年ぶりに減少した.厳冬であった2017年度から一転して暖冬となったことから,家庭部門が大きく減じ(-7.8%),消費量はこの26年で最少となった.実質GDP成長率が,前回の消費増税があった2014年度以降では最も低い0.3%にとどまり,またエネルギー多消費な素材系生産量では,東京オリンピック関連や北陸新幹線延伸などの工事が下支えしたセメントを除く粗鋼,エチレン,紙・板紙が減少したことなどが影響し,企業・事業所他部門も-2.1%と2年ぶりに減少した.運輸部門は,自動車燃費の継続的な改善などにより6年連続で減少した.結果,最終エネルギー消費の全主要部門で2017年度を下回った.同様に,エネルギー源別でも全主要エネルギー源が2017年度から減少した.中でも,暖房・給湯需要とエチレン生産が低下した影響で,石油が-4.1%と世界金融危機後で最大の落ち込みを示した.発電電力量は,電力需要の減少を反映して-0.8%と3年ぶりに前年度を下回った.電源構成では,原子力,太陽光,風力が伸びて火力発電を代替した.非化石エネルギー発電比率は23%まで上昇したが,2010年度にはこの値は35%であった.エネルギー消費の減少と低炭素化の進展により,エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)排出は,-4.6%と5年連続で減少し,統計が比較可能な1990年度以降では最少となる1,059Mtであった.パリ協定基準年の2013年度と比べると-14.2%である.

 2019年度は,貿易戦争の激化や消費増税に伴う景気の悪化,台風・水害や新型コロナウイルスの影響による経済活動の停滞に加え記録的な暖冬により,エネルギー消費も減少している.日本エネルギー経済研究所によると,2020年2月までの一次エネルギー消費は2018年度同期比-2.7%で,うち天然ガスの減少率は4.3%に達している.石炭,石油も2018年度を下回って推移していることで,CO2排出は-3.2%となっている.2019年4月に1バレル69ドルであった原油輸入価格は,OPECプラスによる協調減産や中東情勢の悪化などを下支えに$65/bbl~$75/bblで推移してきたが,新型コロナウイルスによる世界の石油需要減少観測から2020年2月から値を下げ,さらに3月のOPECプラスの協調減産決裂・一転増産競争により急落した.指標原油の1つであるウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物は,3月には一時$20/bblという2002年2月以来となる18年ぶりの価格を付けた.

〔栁澤 明 (一財)日本エネルギー経済研究所〕

参考文献

(1)総合エネルギー統計(2018年度確報),経済産業省資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/(参照日2020年4月27日)

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9.2 火力発電

9.2.1 日本の火力発電の動向
a.電気事業者の発電設備

 2019年9月末現在の電気事業者の発電設備は合計2億6,295万kWで,その内訳は火力1億6,699万kW(構成比63.5%),原子力3,308万kW(12.6%),水力4,963万kW(18.9%)などである(表2-1).2019年中に完成した主な火力発電設備は4地点となっている(表2-2)

表2-1 電気事業者の発電設備(1)出力単位:MW)

(注)数字は四捨五入であるため合計は必ずしも一致しない

 

表2-2 2019年中に完成した主な火力発電設備

*1:コンバインドサイクル発電

 

b.自家用発電設備

 2019年9月末現在の自家用発電設備は合計2,844万kWで,その内訳は火力2,127万kW(構成比74.8%),水力40万kW(1.4%),新エネルギー等(風力・太陽光など)677万kW(23.8%)などであり,昨年度と比較して新エネルギー等の発電設備が増加していることが分かる(表2-3)

 

表2-3 自家用発電設備(1)出力単位:MW)

(注)数字は四捨五入であるため合計は必ずしも一致しない

 

c.計画中の主な火力発電設備

 今後計画されている火力発電設備(環境アセスメント手続き実施中・実施済のものなど2019年末時点で公表されているもの)のうち,主なものは24地点,2,491万kWである(表2-4).そのうち,燃料別出力割合はLNG(Liquefied Natural Gas)・都市ガスが約64%,石炭が約35%,その他が約1%となっている.

 

表2-4 計画中の主な火力発電設備(2019年末時点)

*1:コンバインドサイクル発電
*2: 石炭ガス化複合発電

 

 発電設備においては,長期的な電力の安定供給,エネルギーセキュリティーの確保,地球温暖化防止など環境負荷低減の観点から,火力,水力,原子力を中心とした電源のベストミックスが進められてきた.このような中,LNGを燃料とする発電設備ではコンバインドサイクル発電(CC)が,石炭を燃料とする発電設備では超々臨界圧汽力発電(USC)と石炭ガス化複合発電(IGCC)が導入されており,現在,CC,USC,IGCCの建設が進んでいる.

 

d.火力発電の新技術

 LNGを燃料とする発電設備では,コンバインドサイクル発電においてさらなる高効率化が図られ,1,600℃級ガスタービンによる熱効率62%以上(低位発熱量基準)を達成する発電設備が運転を開始した.また,次世代の高効率ガスタービンの実用化を目指し,国家プロジェクトとして1,700℃級ガスタービンの要素技術開発が進められている.
 一方,石炭を燃料とする発電設備では,超々臨界圧プラントの蒸気条件を700℃級まで高温化させた先進超々臨界圧プラント(A-USC:Advanced Ultra Super Critical)の実用化要素技術開発が,国家プロジェクトとして進められている.また,石炭ガス化複合発電では,主に海外で運転されている酸素吹き方式よりも送電端効率が高い空気吹き方式の開発が進められており,25万kW級プラントの実証試験が2013年3月に終了(以降商用プラントとして運用を開始)し,54万kW級プラントの建設が進んでいる.また,酸素吹き方式においても16.6万kW級プラントの実証試験が2017年3月に開始され,全3段階のうちの第1段階を2019年2月に予定通り完了した.第2段階となるCO2分離・回収型の実証試験を2019年12月に開始しており,次の段階に進んでいる.

〔松浦 幹夫 (株)JERA〕

参考文献

(1)各種統計情報(電力関連),経済産業省資源エネルギー庁
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/electric_power/ep002/(参照日2020年3月18日)

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9.2.2 海外の火力発電の動向

 国連エネルギー統計2017によると,2017年における世界の火力発電設備容量/発電電力量は,43.0億kW/17.1兆kWhであり,それぞれ2016年比で0.9%/1.5%増加した.
 米国では,シェールガスの産出により天然ガスの生産量が増加し,2017年には天然ガスの純輸出国となったが,増産の影響を受け天然ガスの価格が低下している.取引の指標となるヘンリーハブは2019年6~8月の平均価格が2.31ドル/MMBTUとなり,夏場の平均価格として1998年以来最低価格となった.価格の下落を受け天然ガス火力の発電原価は3.18セント/kWhとなり,石炭火力の3.54セント/kWhを下回った.このように天然ガス価格の低下と再エネ導入の影響を受け,トランプ政権が石炭火力への規制を緩和したにも関わらず,競争力を失った石炭火力の廃止が続き,2018年は1,300万kWが廃止された.これは2015年の1,500万kWに次ぐ2番目の記録であった.さらに,2019年7月から2022年6月までに約1,700万kWが廃止されると予想されている.一方ガス火力は,高効率のコンバインドサイクルの他に需給調整用のガスエンジンが導入数を伸ばしている.
 欧州では,これまで石炭事業へのダイベストメントの動きが強まっていたが,さらに,化石燃料全体への融資を停止する動きがみられる.2019年11月にEUの政策金融機関である欧州投資銀行(EIB)が化石燃料関連事業への投融資を2022年以降停止することとした.2022年以降EIBは,CO2排出原単位が250gCO2/kWh以下の事業しか投融資できないことになるため,石炭火力は当然として,通常のガスコンバインド発電も投融資の対象外となる.また,欧州では『環境問題の緩和,解決に資する経済活動や技術を明確化し,「グリーンなもの」と定義づける取り組み』所謂「タクソノミー」が議論されている.2020年3月に発表されたタクソノミーに関する技術専門グループ(TEG)による最終報告書では,天然ガスを含む発電技術に関しては排出原単位の基準を「100gCO2/kWh」として,今後5年ごとに見直し,2050年には「0gCO2/kWh」を満たした技術が「持続可能」とされるという考え方が示された.この場合,CCUSなどのCO2排出対策を行っていない通常のコンバインドサイクルも対象から除外されることとなる.

〔辺見 航次郎 (一社)海外電力調査会〕

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9.3 原子力発電

9.3.1 日本の原子力発電の動向
a.軽水炉

 わが国の原子力発電は,2019年12月現在,改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を含む沸騰水型軽水炉(BWR)が17基,加圧水型軽水炉(PWR)が16基の計33基が稼動している.また,3基が建設中であり,6基が計画中である.表3-1に,最近5年間の原子力発電所の基数,合計出力及び年平均の設備利用率の推移を示す.2019年は,玄海2号機(九州電力),福島第二1号機~4号機(東京電力)の5基(BWR:4基,PWR:1基)の廃止が決定し,合計出力は3,308万kWに減少した.一方,2019年に新たな営業運転再開はなかったが,2019年の平均設備利用率は2018年に引き続き上昇して21.4%となり,月別に見ても20%を超える月が8回となった.他の原子炉の運転再開についても,各電力会社からの申請に基づき,新規制基準に基づく安全性審査が進められている.

表3-1 最近5年間の原子力発電の推移


*BWR : 沸騰水型軽水炉,PWR : 加圧水型軽水炉

 

b.新型炉

 高温ガス炉に関しては,(国研)日本原子力研究開発機構(原子力機構)の高温工学試験研究炉(HTTR)の運転再開に向け,新規制基準への適合性確認のための審査が進められている.また,原子力機構とポーランド国立原子力研究センターとの間で研究協力実施取決めを締結し,英国原子力研究所とは既存の取決めを改定して協力を開始するなど,日本の高温ガス炉の国際展開に向けた協力が進められている.国際熱核融合実験炉(ITER)計画では,世界最大級のトロイダル磁場コイル初号機の組み立てが最終工程に移行するなど,日本が担当する機器の調達活動などによりITER建設が進展した.また,核融合エネルギーの早期実現を目指し,日本は欧州連合(EU)と国際協定を結び,ITER計画の支援と核融合炉原型炉の研究開発に取り組む活動(幅広いアプローチ(Broader Approach:BA)活動)を行っている.(国研)量子科学技術研究開発機構では,サテライトトカマク装置(JT-60SA)の建設が順調に進展するなど,BA活動が着実に進められている.

〔竹上 弘彰 (国研)日本原子力研究開発機構〕

 

 新型炉の開発を含めた原子力イノベーションの実現に向けた取組みとしてNEXIP(Nuclear Energy × Innovation Promotion)イニシアチブが,経済産業省と文部科学省との連携を含めて開始された.経済産業省では,従来の高速炉技術開発等への支援に加えて,民間の創意工夫を活かしたイノベーション促進のため,産業界等からの提案技術に対するフィージビリティスタディを目的とした補助事業が開始された.今後,提案技術を絞込み,熟度に応じて支援の方向性をカテゴライズするとしている.

 原子力機構は,高速炉開発の戦略ロードマップ(1)で示された今後の開発方針や原子力機構が果たすべき役割を考慮して,自らが進める今後の高速炉サイクル研究開発計画(2)を策定した.そこでは,先進的設計評価・支援手法や革新的な規格基準体系の整備,安全性向上技術の開発,及び燃料サイクル技術開発など,イノベーション促進のための技術基盤を開発し,その成果を民間の開発に提供するとともに,多様な選択肢からの絞込みと合わせて今後具体化される開発工程や将来の状況変化に柔軟に対応し,高速炉の開発に貢献していくこととしている.
 高速実験炉「常陽」は,再稼働に向けて新規制基準への適合性審査が進められている.

〔根岸 仁 (国研)日本原子力研究開発機構〕

参考文献

(1) 戦略ロードマップ,原子力関係閣僚会議
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku_kakuryo_kaigi/pdf/h301220_siryou.pdf(参照日2020年3月6日)
(2)今後の高速炉サイクル研究開発,日本原子力学会誌ATOMOΣVol.61,2019年11月

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c.核燃料サイクル

 日本原燃(株)が事業展開を進めている六ヶ所再処理施設では,主工程が完成し,ガラス固化体を製造するガラス溶融炉の社内試験が終了した.また,2014年1月より新規制基準への適合性確認を受けており,竣工に向けた対応を進めている.ウラン濃縮工場では,新型遠心機を導入し,2012年3月に生産運転を開始しており,順次生産能力を拡大していく予定である.MOX燃料工場は,建設工事中である.

 原子力機構の東海再処理施設では,2018年6月に廃止措置計画の認可を受け,廃止措置段階に移行した.当面,保有する放射性廃棄物に伴うリスクの低減を最優先課題として,2019年7月上旬から高放射性廃液のガラス固化処理を開始したが,ガラス固化体容器へのガラス流下において,ガラス流下停止事象が発生したため,7月下旬に処理を停止した.現在,早期の再開に向け,原因調査の結果を踏まえ対策を進めている.再処理技術開発としては,高放射性廃液のガラス固化を着実に進めるため,ガラス固化技術の高度化に係る研究開発を継続している.

 プルトニウム燃料技術開発施設では,MOX燃料に関する研究開発,核燃料施設の廃止措置やプルトニウム系廃棄物の処理に関する技術開発等を実施している.

〔内田 直樹 (国研)日本原子力研究開発機構〕

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9.3.2 世界の原子力発電開発の動向

 2020年1月1日現在,世界で稼働中の原子力発電の設備容量は,437基,4億1,192万4,000kWで,2019年1月1日と比較して6基,253万kW分減少した.これは,中国で3基,ロシア,韓国でそれぞれ1基の新たな営業運転開始とアルゼンチンで1基の運転再開があり,合計6基,732万kW分が増加した一方で,それを超える12基,1,073万kW分が閉鎖されたためである.2013年から増加し続けていた合計設備容量は,6年ぶりに減少した.

 2018年に中国で世界初の営業運転開始となった第3世代+(プラス)の特性を有する3種類の炉型は,2019年にもウェスチングハウス社製のAP1000が海陽2号機,フラマトム社製の欧州加圧水型炉(EPR)が腰古(台山)2号機,ACPR1000が陽江6号機としてそれぞれ1基ずつ運転開始された.ACPR1000は,フランスの技術に基づいて中国広核集団有限公司(CGN)が開発したCPR1000に31項目の安全技術改良を加えたものである.AP1000やEPRの建設は他国のものよりも短い期間で建設され,欧州で先に着工されたものを追い抜いて運転開始に至っている.韓国では,第3世代+炉であるAPR1400の2基目として新古里4号機が運転開始された.APR1400は140万kW級PWRで,米国コンバッション・エンジニアリング(CE)社(現在はウェスチングハウス社に統合)の130万kW級PWR設計「システム80+」をベースに,韓国電力公社(KEPCO)の指揮の下,韓国の原子力産業界が約10年かけて開発したものである.現在韓国で建設されている原子炉はすべてAPR1400で,韓国が受注してアラブ首長国連邦(UAE)で建設されている4基もこの炉型である.ロシアでは第3世代+の120万kW級ロシア型PWRであるVVER-1200の3基目として,ノボボロネジII-2号機が営業運転を開始した.

 また,2019年には中国で漳州1号機(華龍一号),太平嶺1号機(華龍一号)が,イランでブシェール2号機(VVER-1000),ロシアでクルスクII-2号機(VVER-TOI),英国でヒンクリー・ポイントC-2号機(EPR)が着工し,2020年1月1日現在の建設中基数は59基,6,312万7,000kWとなった.

 一方, 1970年代から40年以上運転を続けてきた出力100万kW以下の原子力発電所が6基,430万kW分(米国2基(ピルグリム1号機:BWR,スリーマイルアイランド1号機:PWR),韓国1基(月城1号機:PHWR),スウェーデン1基(リングハルス2号機:PWR),スイス1基(ミューレベルク発電所:BWR),台湾1基(金山2号機:BWR))が閉鎖されたことに加え,日本やドイツにおいて1980年代に営業運転を開始した運転歴40年未満の原子炉6基,643万kW分(日本5基(玄海2号機:PWR,福島第二1~4号機:BWR),ドイツ1基(フィリップスブルク2号機:PWR))が閉鎖され,ここに100万kWを超える大型炉が5基含まれていることが合計設備容量の減少につながった.
 国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)発行の「2019年版世界エネルギー見通し」によれば,公表政策シナリオにおいて世界の原子力発電設備容量は,2030年に4億3,600万kW,2040年に4億8,200万kWへと増加することが見込まれているが,増加を牽引するのは中国,インド,中東欧諸国,中東や中南米の国であり,先進国に限れば現状の4分の3程度に減少すると予測されている.

〔冨野 克彦 (社)日本原子力産業協会〕

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9.4 新エネルギー技術

9.4.1 燃料電池

 (一財)コージェネレーション・エネルギー高度利用センター(コージェネ財団)によると,家庭用燃料電池(エネファーム)の2019年度の販売台数は4.1万台と,2018年度の4.7万台から一割強減少した.この減少理由として,固体高分子形エネファームへの国の導入支援補助金が,2018年度で終了したことが考えられる.なお,固体酸化物形エネファームへの国の導入支援補助金は,2020年度まで支給される.固体酸化物形では,マイクロガスタービンと組み合わせた加圧ハイブリッド型250kW級システムが2017年度に市場投入され,MW級システムに向けた技術開発も進められている.りん酸形,溶融炭酸形もそれぞれ百kW級,MW級定置用システムが内外で着実に導入された.燃料電池自動車に関しては,2015年にトヨタMIRAIの販売が,2016年にホンダCLARITYのリースが開始され,水素・燃料電池戦略協議会の官民目標として2020年までに4万台の普及が掲げられている.また,水素ステーションに関しては,2019年末の設置数は112カ所で,2020年度までに160カ所整備する計画である.水素ステーション普及に向けて,トヨタやJXTGエネルギーなど11社が日本水素ステーションネットワークを2018年2月に設立した.

〔麦倉 良啓 (一財)電力中央研究所〕

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9.4.2 太陽電池

 (一社)太陽光発電協会(JPEA)によると(1),2019年の太陽電池モジュールの総出荷量は6,390MW(2018年比110%)であった.総出荷量は,2014年をピークとして減少傾向にあったが,2019年は前年に比べ増加した.性能別では,公称最大出力300W以上のモジュール出荷量が3,882MWと,2018年比で187%と前年に続き大きく伸び,大出力化の傾向が見られている.

 太陽電池モジュールの国内向け出荷量は,6,026MW(2018年比111%)で全体の94%であった.用途別では,住宅用が1,067MW(2018年比106%)であり,非住宅用が4,958MWと全体の82%を占めた.2019年度の買取価格が,10kW以上500kW未満ではkWhあたり14円へ引き下げられ,500kW以上では入札制度に移行したが,2018年比112%と増加に転じた.非住宅用の内訳は,一般事業用途が2,033MW(2018年比125%),発電事業用途が2,925MW(2018年比104%)であった.

 技術動向としては,ペロブスカイト太陽電池において,インクジェットを用いた大面積塗布法等の開発により開口面積802cm2のモジュールが作製され,世界最高となる変換効率16.09%を達成した(2)

〔岡島 敬一 筑波大学〕

参考文献

(1)太陽電池の出荷統計, 一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)
http://www.jpea.gr.jp/document/figure/index.html(参照日2020年3月28日)
(2)ペロブスカイト太陽電池大面積モジュールで世界最高変換効率16.09%を達成, 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101261.html(参照日2020年3月28日)

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9.4.3 バイオマス・廃棄物発電

 環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課資料「一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成30年度)について」(1)によると,国内のごみ排出量は4,272万t(前年度4,289万tに対して0.4%減)で,2000年度をピークに減少傾向が続いている.直接焼却量は3,262万t(直接焼却率は80.1%)で,2003年度以降減少傾向である.ごみ焼却施設数は1,082施設で,このうち発電設備を有する施設数は379となっている.これは,全ごみ焼却施設の35.0%を占め,発電能力合計は2,069MW,平均発電効率は13.58%で高効率化傾向が続いており,処理量100t/日以下の比較的小規模な施設でも,高温高圧ボイラを採用した高効率発電が導入されるケースが多くなってきている.

 さらに2011年7月に施行された「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT:Feed in Tariff)」により,バイオマス発電の導入が順調に進展中で,2019年9月末の時点で制度開始後から新たに認定を受けた設備の認定量は850.6万kWとなっている(2)

〔田熊 昌夫 三菱重工環境・化学エンジニアリング(株)〕

参考文献

(1)環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課資料,一般廃棄物処理事業実態調査の結果(平成30年度)について
https://www.env.go.jp/press/files/jp/113665.pdf(参照日2020年3月31日)
(2)固定価格買取制度,情報公表用ウェブサイト
https://www.fit-portal.go.jp/PublicInfoSummary(参照日2020年3月31日)

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9.4.4 水素利用技術

 経済産業省は,水素社会の実現に向けて,2019年3月に「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を改訂するとともに(1),2019年9月に「水素・燃料電池技術開発戦略」を策定し(2),目標達成に向けての具体的な技術開発事項をまとめた.IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)は,水素の現状を定量的に分析し,将来展望や提言をまとめた「The Future of Hydrogen」を2019年6月に発表した(3)

 燃料電池自動車の登録台数は,2019年3月末現在で3,009台(4),運用中の商用水素ステーションは2019年12月現在で112箇所となった(5).水素ステーションについては,経済産業省の「水素・燃料電池自動車関連規制に関する検討会」において,無人運転するための技術基準の検討等が進められている(6).(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では,国際的な水素サプライチェーンの構築に向けて,海外から日本に水素を輸送する実証事業を進めており,2020年度の実証に向けて,2019年12月に世界初となる液化水素運搬船が進水した(7).また,再生可能エネルギー由来の電力を用いて水素を製造・利用する取り組み(Power-to-Gas)も進めており,世界最大級の水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」が2020年3月に稼働を開始した(8)

〔飯田 重樹 (一財)エネルギー総合工学研究所〕

参考文献

(1)水素・燃料電池戦略ロードマップ(2019年3月12日),経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190312001/20190312001.html(参照日2020年4月3日)
(2)水素・燃料電池技術開発戦略(2019年9月18日),経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2019/09/20190918002/20190918002.html(参照日2020年4月3日)
(3)The Future of Hydrogen,IEA(International Energy Agency)
https://www.iea.org/reports/the-future-of-hydrogen(参照日2020年4月3日)
(4)EV等 保有台数統計,一般社団法人次世代自動車振興センター
http://www.cev-pc.or.jp/tokei/hanbai.html(参照日2020年4月3日)
(5)水素ステーション整備状況,一般社団法人次世代自動車振興センター
http://www.cev-pc.or.jp/suiso_station/index.html(参照日2020年4月3日)
(6)水素社会の実現に向けた高圧ガス保安規制の見直しの動向(2019年10月31日),経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/koatsu_gas/pdf/015_02_00.pdf
(7)世界初,液化水素運搬船が進水(2019年12月11日),国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101250.html(参照日2020年4月3日)
(8)再エネを利用した世界最大級の水素製造施設「FH2R」が完成(2020年3月7日),国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101293.html(参照日2020年4月3日)

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9.4.5 風力発電

 世界全体の風力発電の累積導入量は,GWEC(Global Wind Energy Council)の統計によると2019年末で6億5,056万kW(2018年末の5億9,097万kWから10%増加)に達した(表4-1).これは日本国内の原子力・火力を含む発電設備の合計3億kWの2倍である.2019年の新規導入は6,035(2018年は5,070)万kWで,年成長率は前年比19%増(2018年は2%減)となった(1).陸上設置が主流ではあるが,洋上風力発電も累計で2,914万kW(全体の4.5%),新規導入は615万kW/年(全体の10%)と増えてきており,2020年2月には総出力121.4万kWの洋上風力発電所Hornsea Oneが英国北海沖120kmで運転を開始した(写真4-1).広大な面積で開発可能な洋上風力発電は,グリーン電力の本命と見られており,世界の関係団体は競って壮大な将来像を発表している.

・IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関):2040年までに20倍に成長し,累計で約1兆ドルが投資される(2)

・IRENA(Internaltional Renewable Energy Agency:国際再生可能エネルギー機関):2050年までに1,000GWの洋上風力が導入される(3)

・WindEurope:2040年までに欧州は450GWの洋上風力が必要(4)

 

表4-1 世界の風力発電の導入状況(1)(5)

注:○は世界順位(10位以内)を示す.
出典:GWEC Global Wind Report 2019他 単位は1GW=千MW=百万kW

写真4-1 Hornsea One洋上風力発電所
(7MW風車×174基=1,214MW,2020年2月運開.出典:同発電所のWeb Site)

 

 風力発電は気象条件で出力が変動するが,広域連系で変動を相殺することで,送電網への悪影響は緩和可能である.2019年に世界の年間電力需要の6%(2018年も6%),EUでは15%(2018年は14%)を風力発電が供給した.デンマーク,アイルランド,ポルトガル,ドイツ,英国,スペインの6国では20%以上,スウェーデン,オーストリア,リトアニア,ギリシア,オランダ,ルーマニア,ベルギーの7国では10%以上を供給している(5)
 国別では,累計で1位中国,2位米国,3位ドイツ,新規では1位中国,2位米国,3位英国である.特に中国は累計で36%,新規は43%の世界シェアを持つ.環境保護に熱心とは言えない中国と米国が世界一を争い,原子力依存のフランス,島国の英国とアイルランドも,風力発電を大量導入している(表4-1)風力発電は安価に短期間に大量導入できる「国産エネルギー源」として多くの国々で活用されている.
 日本の風力発電は2019年12月末時点で,累計で392万kW,2,414台(2018年12月末時点で340万kW,2,310台),2019年は新規で27万kW,104台(2018年は26万kW,100台)が建設された(6).新規は僅差ではあるが過去最多の増加となったが,累計,新規共に世界の1%に満たない.年間電力供給に占める風力発電の比率も0.6%にすぎず,10%以上が並ぶ先進諸国に大きく後れを取っている(表4-1).日本では大型風車建設には,環境アセスメント(EIA:Environmental Impact Assessment),農地転用,系統連系協議,工事計画届(強度審査)等の多数の許認可が必要であり,7,8年は掛かる.このため,2012年7月の固定価格買取制度(FIT:Feed in Tariff)導入後も,太陽光発電のような大量導入は達成できていないが,2019年末時点で開発中(EIA手続中)の案件が2,500万kW以上(内,約1,300万kWが洋上風力)ある(JWPA:(一社)日本風力発電協会調べ).これは政府の長期エネルギー需給計画の風力発電分(2030年に1,000万kW)を軽く凌駕している.
 日本の洋上風力発電の累計導入量は,2019年末で65,600kW,29基(含むセミ洋上風力)である.2019年5月には北九州市響灘沖で,NEDOの3MW浮体式洋上風車が竣工した.その一方で,10月に同じ響灘沖の着床式の2MW風車は撤去された.洋上風車の撤去事例は日本初であり,撤去には五洋建設が建造した洋上風力建設専用船(Jack Up Vessel)「CP-8001」(写真4-2)が利用された(7).2016年の港湾法改正,2019年4月に再エネ海域利用法が施行され,洋上風力はFITから入札制に移行した(但し,浮体式はまだFIT適用).秋田県の秋田港(4.2MW風車×13基=5.5万kW),能代港(4.2MW風車×20基=8.4万kW)(8)と,福岡県の北九州港(9.5MW風車×23基=22万kW)では,既に事業者と建設会社が決まっており,2021年から据付工事が開始され,2022年末頃には運開する見込みである.

写真4-2 五洋建設の洋上風車建設船「CP-8001」(出典:GustoMSC社のWeb Site)

 

 風力発電の発電コストは,条件の良い立地では既に火力発電並み(10円/kW未満)になっており,ここ数年の欧州の洋上風力入札でも補助金なしでの落札が相次いでいる.このコストダウンの大きな要因は,風車の大型化(定格出力増加,ロータ直径拡大,高高度タワー)である.風力発電の初期コスト(CAPEX:Capital Expenditure)の1/3(陸上)~2/3(洋上)を建設費が占める.建設費は出力ではなく工数(風車台数)に比例するため,大型化して建設台数を減らした方が全体コストは小さくなる.賃貸料の高いJack Up船(隻数が少なく賃貸料が約1千万円/日と高い.例:写真4-2)を使用するため建設費の比率が大きい洋上風力発電ではそのニーズが大きく,次々と超大型風車が開発,投入されている(図4-1)(表4-2).2019年に欧州で新規設置された洋上風車の平均定格出力は7.8MWである(9).日本市場でも,最初の秋田港,能代港こそ4.2MW風車だが,北九州港の洋上風力サイトでは9.5MW風車が採用されている.

図4-1 欧州で新規設置された洋上風車の平均定格出力の推移(9)

表4-2 プロトタイプ(初号機)が試運転中の洋上風車

 2020年3月時点で世界最大の洋上風車は,試運転中のプロトタイプではGE社のHaliade X風車(定格出力12MW,ロータ直径220m,写真4-3(10),量産中の商用機ではMVOW社(Mitsubishi Vestas Offshore Wind:日本の三菱重工業とデンマークのVestas社の洋上風力のJV)のV164 9.5風車(定格出力9.5MW,ロータ直径164m)である.最近の10MW級の風車の開発,検証,量産には,500億円以上の開発投資が必要である.このため洋上風車の量産は,世界的大企業のSGRE (SiemensGamesa),MVOW,GEの3社が寡占している(表4-2).その他では,自国産業保護の強い中国洋上風力市場向けに,中国政府の支援を受けた中国風車メーカ(Goldwind,Mingyang,Envision他)が6~10MW級の風車を製造している.


写真4-3 世界最大のHaliade X風車(定格出力12MW,ロータ直径220m.2019年にオランダのRotterdam港で運開.出典:GE Renewable EnergyWebサイト)(10)

 陸上設置の風車でも大型化が進んでいる.世界の主流は既に定格出力3MW以上に移っており,2MW級風車は中国以外では商用生産は終了しつつある.Vestas社のEmVentusシリーズ(定格出力3~5MW,ロータ直径138~165m),GEのCypress風車(定格出力5.3MW,ロータ直径158m)等,各社が5MW級風車の市場投入を始めている.日本は台風と地震を考慮した風車の強度審査が厳しいため,世界の大型化の潮流には遅れをとっているが,数年後には5MW級の陸用風車が導入される見込みである.
 陸上設置では,交差点や屈曲の激しい山道があるため,長大なブレードは輸送が難しい.この輸送制約を解決するために,Cypress風車では分割翼(split blade, 2 piece blade, modular blade)の採用を始めている.2019年末時点ではまだ少数派だが,ロータ直径が150m以上(ブレード長75m以上)に大型化が進めば,大型風車利用と輸送費低減のメリットがより顕著になるので,分割翼の普及が拡がると予測されている(11)
 風力発電の立地拡大に向けた技術開発では,浮体式洋上風力発電計画が活発化している.最近の実績と2022年までに建設予定のプロジェクトを表8に示す(9).建設単価は2017年のHywind Scotlandでは約100万円/kWであり,陸上風力の3~5倍,着床式の2~3倍程度高い.今後は風車の大型化と複数台設置による量産効果で,商用化レベルまでのコストダウンを狙っている.浮体式洋上風力発電は,水深数百mの深海域でも設置可能なので,ポテンシャルは莫大である.特に浅海域に乏しいフランスとスペイン,米国のカリフォルニアとハワイ,日本は,浮体式洋上風力発電の将来的な大市場になると期待されている.

表4-3 世界の浮体式洋上風力発電の実証事業(2017~2022年運開予定)

〔上田 悦紀 (一社)日本風力発電協会〕

参考文献

(1)Global Wind Report 2019,GWEC
https://gwec.net/global-wind-report-2019/(参照日2020年3月25日)
(2)Offshore wind to become a trillion industry, IEA
https://www.iea.org/news/offshore-wind-to-become-a-1-trillion-industry(参照日2019年10月25日)
(3)Future of wind, IRENA
https://www.irena.org/publications/2019/Oct/Future-of-wind(参照日2019年10月)
(4)OUR ENERGY, OUR FUTURE How offshore wind will help Europe go carbon-neutral,WindEurope
https://windeurope.org/about-wind/reports/our-energy-our-future/(参照日2019年11月26日)
(5)Wind in Power 2019 European statistics, WindEurope
https://windeurope.org/about-wind/statistics/european/wind-energy-in-europe-in-2019/(参照日2020年2月21日)
(6)2019年末日本の風力発電の累積導入量:392.3万kW,2,414基(速報),JWPA
http://log.jwpa.jp/content/0000289708.html(参照日2020年1月15日)
(7)洋上風力関連工事においてSEP型多目的起重機船「CP-8001」を活用,五洋建設
http://www.penta-ocean.co.jp/news/2019/191001.html(参照日2019年10月1日)
(8)秋田港・能代港の洋上風力発電の概要が発表されました,JWPA
http://log.jwpa.jp/content/0000289728.html(参照日2019年3月27日)
(9)Offshore Wind in Europe, key trend and statistics 2019,WindEurope
https://windeurope.org/about-wind/statistics/offshore/european-offshore-wind-industry-key-trends-statistics-2019/(参照日2020年3月)
(10)洋上風力発電の更なる拡大へ―世界最大出力の風力タービンが稼働開始,GE Reports
https://www.gereports.jp/power-up-the-worlds-most-powerful-wind-turbine-generates-first-electrons/(参照日2019年11月15日)
(11)Global wind turbine technology trends 2019,WoodMackenzie
https://www.woodmac.com/reports/power-markets-global-wind-turbine-technology-trends-2019-371859(参 照日2019年12月19日)

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9.4.6 地熱発電

 再生可能エネルギーの利用拡大が推進されている中,地熱発電については,日本をはじめ地熱資源を保有する米国,ケニア,インドネシア,トルコ等で,国家レベルで導入拡大に向けた取組が実施されている.わが国では,2018年7月に閣議決定された第5次エネルギー基本計画において,地熱発電は発電コストも低く,安定的に発電を行うことが可能なベースロード電源を担うエネルギー源と位置付けられている(1).2019年5月には,再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT: Feed in Tariff,2012年7月開始)(2)がスタートしてから最大規模となる山葵沢地熱発電所(秋田県,出力46,199kW)が営業を開始した(3).また,安比地熱発電所(岩手県,出力14,900kW,運転開始2024年4月予定)や鬼首地熱発電所(宮城県,出力14,900kW,運転開始2023年4月予定)の新規建設工事も進捗している.
 (国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では,新規地熱発電所の立地促進,および既存地熱発電所の発電能力の回復・維持・向上に資する技術開発を行っている.他にも,2016年4月に内閣府が策定した「エネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI2050)」(4)の中で,温室効果ガス排出量を削減し,ポテンシャル・インパクトが大きい有望な革新技術と位置付けられた超臨界地熱発電(図4-2)の技術開発を目指すプロジェクト「超臨界地熱発電技術研究開発」(5)を推進している.2018年度から2020年度までの3か年のプロジェクトで,複数地域での超臨界地熱資源量の評価,および調査井に必要とされる要素技術開発を実施している.

図4-2 超臨界地熱系(概念図)(5)

〔和田 圭介 (国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構〕

参考文献

(1)第5次エネルギー基本計画,経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/kihon_seisaku/saisei_kano/pdf/001_s02_01.pdf(参照日2020年 3月23日)
(2)固定価格買取制度,経済産業省エネルギー資源庁
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html(参照日2020年 3月23日)
(3)地熱発電の現場,経済産業省エネルギー資源庁
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/chinetsuhatsuden_yuzawa01.html(参照日2020年3月23日)
(4)エネルギー・環境イノベーション戦略,内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/nesti/index.html(参照日2020年3月23日)
(5)超臨界地熱発電技術研究開発(事業・プロジェクト概要),NEDO
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100145.html(参照日2020年3月23日)

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9.4.7 電力貯蔵

 災害時における非常用電源確保など,再生可能エネルギーと蓄電池の組み合わせを一例とした分散型エネルギー供給システムの普及が進んでいる.(一社)日本電機工業会(JEMA)の自主統計によると(1),定置用リチウムイオン蓄電システムの2019年度上期の出荷台数は5万台を,出荷容量は37万kWhを超え,2018年度下期比でそれぞれ115%,120%である.このように蓄電システムの普及が進む中で,蓄電池の安全性確保と低コスト化は重要である.例えば京セラ(株)は,電極材料を粘土状にして高安全性と低コスト化を実現した“クレイ型リチウムイオン蓄電池”を開発し,これを搭載した蓄電システムを2020年秋に量産開始することを計画している(2)
 一方,電気自動車等に使用されている車載用電池の二次利用(リユース)に関する動きも活発となっている.経済産業省は2019年7月に,電動車の普及とその社会的活用を促進するため「電動車活用社会推進協議会」を設立した(3).この協議会の下に「車載用電池リユース促進WG」を設置し,残存性能の“見える化”やリユース促進に向けたユースケースの開発を行う計画である.

〔紀平 庸男 (一財)電力中央研究所〕

参考文献

(1)JEMA蓄電システム自主統計 2019年度上期結果(2019年11月22日),(一社)日本電機工業会
http://jema-net.or.jp/Japanese/data/jisyu/pdf/libsystem_2019kamiki.pdf(参照日2020年 4月1日)
(2)住宅用蓄電システム「Enerezza(エネレッツァ)」を製品化,京セラ株式会社
https://www.kyocera.co.jp/news/2019/1002_chio.html(参照日2020年4月3日)
(3)電動車活用社会推進協議会 設立シンポジウムについて,電動車活用社会推進協議会
http://www.cev-pc.or.jp/xev_kyougikai/event/plenary_meeting/(参照日2020年4月3日)

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