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機械工学年鑑2020
-機械工学の最新動向-

8. エンジンシステム

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章内目次


8.1 エンジンシステムにおける研究の動向
8.2 各種エンジン
 8.2.1 乗用車用エンジン
  a.全体概要/b.日本の動向/c.ヨーロッパの動向/d.北米の動向
 8.2.2 トラック・バス用機関
  a.市場動向/b.国内の動向/c.海外の動向
 8.2.3 オートバイ用機関および全体概要
  a.全体概要/b.全体概要
 8.2.4 汎用機関
 8.2.5 建設機械および鉄道車両用機関
  a.建設機械の市場動向/b.建機用機関の技術動向/c.鉄道車両用機関の技術動向
 8.2.6 舶用および発電用機関
 8.2.7 ガスタービン
 8.2.8 スターリング機関
 8.2.9 燃料電池


8.1 エンジンシステムにおける研究の動向

 2018年8月,経済産業省が所管する自動車新時代戦略会議の中間整理が示された(1).CASE(Connectivity,Autonomous,Shared&Service,Electric)などの技術革新と地球規模の気候変動対策への積極貢献が自動車に求められる新時代に向けた今後5年間の重点的アクションとして,内燃機関脱炭素化に向けたオープンイノベーション促進(最大限の高効率化やバイオ燃料・代替燃料の早期普及),自動走行時代を見据えたオープン開発基盤構築(モデルベース開発基盤やAIを活用した高度開発基盤の整備)などが挙げられた.この方針を受けて,自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)は戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)革新的燃焼技術のスキームを引き継ぐかたちで,内燃機関脱炭素化に向けたオープンイノベーション促進,内燃機関モデルベース開発環境構築を目指した産学官連携による種々のプロジェクト研究を企画し(2),2019年度,新時代に向けた研究をスタートさせた.

 2019年度,エンジンシステムに関わる主要な学術講演会として年次大会(9月8日(日)~11日(水),秋田大学手形キャンパス),第22回スターリングサイクルシンポジウム(11月30日(土),早稲田大学西早稲田キャンパス),第30回内燃機関シンポジウム(12月10日(火)~12日(木),広島国際会議場)が開催された.

 年次大会ではエンジンシステム部門の企画として基調講演「エンジン研究の国際連携/森吉泰生(千葉大)」,先端技術フォーラム「RED(Real Driving Emissions)」,ワークショップ「ディーゼル燃焼の相似性」が設けられた.先端技術フォーラム「RED(Real Driving Emissions)」では「リアルドライブエミッション(RED)試験で何が変わるのか/鈴木央一(千葉大)」,「日本における重量車実路排出ガス(PEMS)の計測法,評価法の課題/南 利貴(いずゞ自動車)」,「Hondaのエンジン環境技術への取り組み/浦田奏弘(本田技術研究所)」,「サスティナブル・モビリティ 燃費向上エンジンに対応する排気浄化システムの基本と今後の開発方向/竹島伸一(トヨタ自動車)」,「直噴ガソリンエンジンのPM生成メカニズムの解明およびPN低減技術に関する研究/今岡佳宏(日産自動車)」という5件の講演が行われた.ワークショップ「ディーゼル燃焼の相似性」では「燃焼の相似理論と簡易噴霧燃焼モデルの実機合致性から見えるディーゼル燃焼のシンプル構造/近久武美(北大)」,「エンジンサイズに対するディーゼル噴霧構造の相似則に関する考察/千田二郎(同志社大)」,「ディーゼル燃焼の相似性に関する考察(確率過程論燃焼モデルを用いた検討)/堀部直人(京大)」,「ディーゼルエンジンにおける燃焼および熱効率のサイズ依存性/小橋好充(北大)」という4件の講演が行われた.また,技術と社会部門との共同企画として市民フォーラム「温めて動く機械スターリングエンジン」,機素潤滑設計部門との共同企画として一般講演セッション「持続可能社会に貢献するエンジン燃焼・潤滑・後処理技術(1)・(2)」,流体工学部門,動力エネルギーシステム部門,熱工学部門,バイオエンジニアリング部門との共同企画として一般講演セッション「熱・流れの先端可視化計測(1)・(2)」が設けられた.一般講演セッション「持続可能社会に貢献するエンジン燃焼・潤滑・後処理技術(1)・(2)」では合計25件の発表が行われた.

 第22回スターリングサイクルシンポジウム「スターリングサイクル機器の応用展開に向けて」では特別講演「スターリング冷凍機の開発動向」,一般講演セッションとして「スターリングサイクル機器等の外燃機関及び関連要素と応用システム(1)・(2)」,「冷凍機,熱音響機器及び関連要素と応用システム(1)・(2)」,「模型エンジン・冷凍機並びに教材用熱音響機器(1)・(2)」が設けられた.特別講演「スターリング冷凍機の開発動向」では「スターリングクーラー事業の取り組み/駒田 淳(ツインバード工業)」,「宇宙用スターリング冷凍機を取り巻く最新動向/篠崎 慶亮(JAXA)」,「住重の宇宙用スターリング冷凍機の開発について/楢崎 勝弘(住友重機械工業)」という4件の講演が行われた.一般講演セッション「スターリングサイクル機器等の外燃機関及び関連要素と応用システム(1)・(2)」では合計6件,同「冷凍機,熱音響機器及び関連要素と応用システム(1)・(2)」では合計6件,同「模型エンジン・冷凍機並びに教材用熱音響機器(1)・(2)」では合計8件の発表が行われた.

 第30回内燃機関シンポジウム「内燃機関の持続的発展へ-飽くなき挑戦-」では2件の基調講演「Future Vehicle Powertrains – Employing New Engine Architectures and Connectivity – / Chris Atkinson(DOE)」と「SKYACTIVエンジンの進化と内燃機関の将来展望/中井英二(マツダ)」,ふたつのフォーラム「次世代の移動体技術とパワーソース」と「将来の高効率内燃機関/2ストロークと対向ピストンエンジン」が設けられた.また,一般講演セッションとして「SI機関(1)・(2)」,「CI機関(1)~(3)」,「ガス・水素エンジン(1)・(2)」,「2ストロークエンジン」,「ピストン対向エンジン(1)・(2)」,「ガスタービン・新コンセプトエンジン」,「ディーゼル噴霧(1)~(3)」,「着火・燃焼(1)~(3)」,「ノッキング・圧縮自着火」,「冷却・壁面熱損失」,「潤滑(1)・(2)」,「後処理技術」,「エンジン制御」,「計測診断」,「数値計算」というエンジンシステム技術全般にわたるセッションが設けられ,合計99件の発表が行われた.

 2019年度,最も注目を集めたエンジンシステム技術として,自動車技術会秋季大会学術講演会(10/9(水)~10/11(金),仙台国際センター)で火花点火制御圧縮着火エンジンに関する3件の発表が行われたことを追記しておく.

〔桑原 一成 大阪工業大学〕

参考文献

(1)自動車新時代戦略会議 中間整理,経済産業省ホームページ
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosha_shinjidai/20180831_report.html(参照日2020年7月15日)
(2)2019年度の研究テーマ概要,自動車用内燃機関技術研究組合ホームページ
https://www.aice.or.jp/about/pdf/5.1_2019年度の研究テーマ概要r1.pdf(参照日2020年7月15日)

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8.2 各種エンジン

8.2.1 乗用車用エンジン
a.全体概要

 2019年の乗用車の世界市場は,2018年比で5.7%減となり,日本で2.1%減,中国で9.5%減,北米で10.9%減,欧州で1.8%減と主要地域で減少に転じた. EV, PHEV, HEV, FCEV等の電動化比率は,2018年から1%pt増加して8.8%になり,拡大傾向にある(1). パワートレインの電動化を推進する動きは引き続き強く,内燃機関と電気駆動を組み合わせた時の総合効率を上げるため,エンジン本体の効率を高めることも進められている. また,将来の排出ガス規制,オフサイクル規制適合に向けて,低エミッション化の開発も進められている.

 

b.日本の動向

 日本の2019年販売実績は前年比2.1%減の430万台であった. 小型車と軽自動車が双方1.1%減となり,全体の実績を落としている(2). 一方,電動化比率は26%と横ばいであるが,他の地域と比較して際立って高い. 新エンジンとしては,マツダが世界発のSPCCI(火花点火制御圧縮着火)燃焼を行う高圧縮比リーンバーンガソリンエンジンを商品化した(3). SPCCI燃焼は,火花点火で燃焼開始時期を制御し,火炎伝播燃焼で未燃部を圧縮して圧縮着火を起こす燃焼である. 将来の動向としては,2030年に向けて内燃機関正味熱効率は,燃料特性の改善も含めて50%超が期待されるとしており(トヨタ,日産),熱効率を改善した内燃機関をHEV化したパワートレインは,LCAの観点からBEVと同等以下のCO2削減ポテンシャルがあると発表している(トヨタ)(4).

 

c.ヨーロッパの動向

 EUROPEAN UNIONで見ると,販売台数は前年比でほぼ横ばいである. ディーゼル車離れの流れは歯止めがかからず,前年比3.9%減,一方で電動化比率は前年比42.9%増となっている(5). 2019年4Qの新車に占めるディーゼル車比率は29.5%,電動化比率は13.2%となっており,数年前に50%超あったディーゼル車比率は30%以下になった. これは,パリ,ローマ,マドリードなどの都市が2020年代半ばにディーゼル車走行禁止とする目標を掲げていることも少なからず影響していると見て取れる. ディーゼル車台数減とSUV車台数増の結果,乗用車の二酸化炭素排出量は3年連続して上昇している(6). 技術的には,WLTCモードの導入に合わせ,ダウンサイジングからライトサイジングで高効率化へ舵を切る動きが引き続き見て取れ,e-fuelの研究も精力的に行われている. 新エンジンではVWがPassat 2.0TDI Evo ディーゼル車でSCRを2個装着した”twin dosing”を採用し,約80%のNOx低減が可能としている(7).

 

d.北米の動向

 北米の乗用車販売は10.9%減と先に述べたが,小型トラックは2.8%増で,ガソリン価格の低位安定や好調な景気を背景に小型自動車に占める小型トラックの比率が拡大傾向にあることから,小型自動車の販売台数は前年比1.4%減となった(8). GHG規制に関しては,連邦政府と加州の対立が深まっており,将来規制の動向は不透明さを増している. 新エンジンでは,GMがシボレーシルベラード(Chevrolet Silverado 1500)のV8気筒ガソリンエンジンで,ランダム気筒休止”Dynamic Fuel Management”を採用した(9).

〔寺沢 保幸,山本 寿英 マツダ(株)〕

参考文献

(1)MARKLINES, https://www.marklines.com/ja/vehicle_sales/search
(2)日本自動車工業会, http://www.jama.or.jp/stats/m_report/pdf/2020_01.pdf
(3)2019年マツダ技報, https://www.mazda.com/ja/innovation/technology/gihou/2019
(4)JSAE/SAE 2019 International Powertrains, Fuels and Lubricants
(5)European Automobile Manufacturers Association, http://www.acea.be/
(6)JATO 2019年欧州二酸化炭素排出量レポート, https://www.jato.com/japan/202030301/
(7)VW Newsroom, https://www.volkswagen-newsroom.com/en/press-releases/innovative-twin-dosing-reduces-nox-emissions-by-approx-80-percent-5281
(8)(株)フォーイン 世界自動車調査月報 2020年2月号
(9) Chevrolet Pressroom, https://media.chevrolet.com/media/us/en/chevrolet/news.detail.html/content/Pages/news/us/en/2018/may/0518–silverado-dfm.html

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8.2.2 トラック・バス用機関
a.市場動向

 2019年の小型四輪車,軽四輪車も含めた国内トラック販売台数は,2018年比1.5%増の88万539台であった.車種別としては,軽四輪車は同0.6%増の43万1141台,小型車は同3.3%増の26万7007台,普通車は同1.2%増の18万2391台と,各車種とも増加した.国内バス販売台数は,同0.9%減の1万3586台であった.小型バスが同1.6%増に対して大型バスが同5.0%減となったことが影響している.輸出車は,トラックが同7.2%減の32万4973台,バスが同10.0%増の12万514台であった.トラックについては,アジアで同14.6%減,ヨーロッパで同20.8%減,バスについては,南米で33.9%増,アフリカで同34.6%増,と大幅に変動した地域もあった.

b.国内の動向

 2019年より適用となる車載式故障診断装置搭載の義務化「J-OBDⅡ,Japan On-board diagnosisⅡ」に対応して,各社から既設定エンジンをベースとした車両が発表された.また,低燃費仕様として,いすゞ自動車(株)は4JZ1で,ハイブリッド仕様を設定した.いすゞ自動車(株)と日野自動車(株)は共同開発による大型連接バスで,A09Cのハイブリッド仕様を設定した.日野自動車(株)はN04Cで,ターボチャージャ,燃料噴射系,ピストン燃焼室の改良などにより燃費基準+10%を達成した.

c.海外の動向

 2018年に対して各社のエンジンラインナップに大きな変化はなかった.VOLVOは北米に投入しているD13TCで,ターボコンパウンドの改良,ピストン燃焼室の改良及び高圧縮比化などにより,標準ターボ仕様のD13に対して燃費を6%改善した.SCANIAはDC13で,ボールベアリングターボの採用,高圧縮比化などにより,高出力化と共に燃費を3%改善した.

〔佐野 貴弘 日野自動車(株)〕

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8.2.3 オートバイ用機関および船外機
a.オートバイ用機関

 2019年の国内二輪車生産台数は,小型二輪車,軽二輪車,原付一種,原付二種の各クラスで前年を下回り,全体では2018年比13%減の56.7万台となり,4年ぶりの減少となった(1).日本二輪車メーカー4社(以下,ホンダ,ヤマハ,カワサキ,スズキと表記)が2019年に発売したエンジンについて簡単に紹介する.

 ホンダは,新設計の1082cm3・水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ,直列2気筒エンジンを搭載した新モデルを発売した.ピストン形状,クランクシャフト形状など細部にわたって見直しを行い,排気量アップを図りながら軽量化を実現した.またシリンダヘッド,スロットルボディー,インジエクター等の刷新により,吸気効率の向上,燃焼効率の向上を追求した.マフラは,出力,ドライバビリティーと迫力のサウンド,パルス感を両立するために,排気バルブシステムを採用している(2)

 ヤマハは,新設計の449cm3・水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ,単気筒エンジンを搭載した新モデルを発売した.シリンダヘッド周りの構造やレイアウト変更など細部にわたるまで見直しを行い,約300gの軽量化を図っている.また燃焼室形状やピストン形状,バルブ挟み角変更と吸排気ポートの見直し,さらにはカムプロファイルを改善し,バルブオーバラップを変更することで,燃焼効率を向上し,エンジンのコントロール性を高めた.圧縮比は従来の12.8:1から13.0:1に変更している(3)

 カワサキは,スーパーチャージドエンジンをスポーツツアラー用に変更した998cm3・水冷・4ストローク直列4気筒エンジンを搭載した新モデルを発売した.最高出力に合わせブレード形状や角度を最適化したインペラを採用し,スーパチャージャの回転数や吸気量もモデル特性に合わせて最適化している.小径エキゾーストパイプと360°集合(1-4,2-3),ジョイントパイプを採用し低中回転域での力強いトルクと優れた燃費性能に貢献している.燃費は,WMTCモードで17.9km/Lを実現した(4)

 スズキは新設計の249cm3・油冷・4ストローク・SOHC・4バルブ,単気筒エンジンを搭載した新モデルを発売した.最高出力は,19.5kW/9000rpmとなっている.シリンダヘッドだけではなく,シリンダにもオイルを流すことで,冷却性を改善している.バルブ駆動方式には,ローラロッカアームを採用するとともに,ピストンスカート部には,複合円テクスチャコーティングを採用し,フリクションの低減を図っている(5)

〔二宮 至成 スズキ(株)〕

b. 船外機

 船外機の主要市場であるアメリカと欧州の船外機販売台数は,NMMA(アメリカマリン工業会)によると,リーマンショック後は経済回復と共に回復し,2010年以降連続して9年間,前年販売台数を上回っていた.しかし,2018年の30万台に対し,2019年は28万台となり,前年比93%となった.欧州市場の販売台数についても,ICOMIA(舟艇工業会国際評議会)によると,2018年20万台に対し,2019年は19万台となり,前年比95%となった.

 以下に,2019年に発売を開始した各社の新モデルを紹介する.ヤマハは,V型8気筒 5559cm3・DOHC・32バルブを採用したF375(375馬力)を販売.4ストローク船外機として初となるダイレクトフューエルインジェクションや内蔵型電動ステアリングシステムを採用し,燃費性や操安性の向上を実現した.アメリカのマーキュリーは,V型8気筒 4600cm3・DOHC・32バルブを採用した450R(450馬力)を発売.ベースモデルである300馬力にスーパーチャージャを取付け,高出力化を実現した.トーハツは,直列3気筒 866 cm3・SOHC・9バルブを採用したMFS60(60馬力)を発売.クラス最軽量を実現した.スズキは,V型6気筒4390cm3・DOHC・24バルブを採用したDF300B(300馬力)のモデルを発売.このモデルは,2重反転プロペラを採用し,加速性や操安性の向上を実現した.

〔佐藤 卓弥 スズキ(株)〕

参考文献

(1)自動車統計月報VOL.53 N0.11 一般財団法人 日本自動車工業会
http://www.jama.or.jp/stats/m_report/pdf/2020_02.pdf

(2)ホンダ CRF1100L Africa Twin,https://www.honda.co.jp/CRF1100L/

(3)ヤマハ YZ450F,https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/yz450f/

(4)カワサキ NINJA H2 SX SE,https://www.kawasaki-motors.com/mc/lineup/ninjah2sx/

(5)スズキ GIXXER250,SUZUKI TECHNICAL REVIEW VOL.46(2020) 「GIXXER250」用新型油冷エンジンの開発
https://www.suzukimotorcycle.co.in/product-details/gixxer-sf-250#features

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8.2.4 汎用機関
a.エンジン生産の動向

 日本陸用内燃機関協会の統計によると2019年(1月から12月)の汎用の国内ガソリンエンジンの生産は218万台,前年比108.7%,金額ベースで500億円前年比87.8%である.ディーゼルエンジンは174万台前年比94.3%,金額ベースで523億円前年比99.4%である.ガスエンジンは9.3万台で,前年比98.2%で金額ベースでも15.9億円108.2%に増加している.国内生産台数は,2019年はガソリン,ディーゼルエンジンで縮小する傾向がうかがえる.海外工場での汎用機関の生産は,ガソリンエンジンは959万台前年比97.6%で出力ベースで44806万馬力,前年比106.1%でありディーゼルエンジンは36.8万台,前年比77.8%で,出力ベースでは1037万馬力で,前年比75.3%である.ディーゼルの海外生産台数は2019年の傾向は縮小となっている.

 通常来年度の見通しも示されるが,新型コロナウイルスの影響が大きく,見通しは不明とされている.

b.排気ガス規制の動向

 国内の大気汚染防止法の定置用ディーゼル,ガソリンとガスエンジンのNOx 規制値は比較的厳しくなく,唯一GHP(ガスエンジンヒートポンプ,小規模低NOx機器) 用ガスエンジンの推奨ガイドラインが12モードで100ppm以下と低い.推奨ガイドラインに適合した機器は,環境省適合ラベルを表示することが出来る.地方自治体の条例による排気ガス規制が厳しいので,定置用エンジンはガスエンジンしか生産されていない.小形汎用ガソリン19 kW 以下では,陸用内燃機関協会の自主規制が行われ,2014年からさらに厳しい規制が行われている.さらに小形汎用火花点火エンジン排出ガス自主規制(3次)の改正が行われた.非携帯用エンジンクラスⅠの排気量80ccを超えて140cc未満のエンジンに対するHC+NOxの当初基準値(13.1 g/kW・h)は2019年12月31日までが適用期限となり,2020年1月1日より当該クラスのHC+NOxの基準値は10.0 g/kW・hに変更された.

 排気ガス総量の傾向は,ディーゼルエンジン生産台数が減少したものの,ガソリンエンジンの生産が大形に移行したことから,総排出量は前年に対し増加傾向となった.全体の排出量は,(NM)HC+NOxが2,438トン/年(前年比104.2%),COが2,0294トン/年(前年比106.2%)と増加した.ちなみにCO2の総排出量は128,493トン/年(前年比101.2%)でやや増加した.

c.新技術の動向

 汎用ガソリンエンジンに始動用セルスタータとリチウムイオン電池を搭載したモデルが発売された.自動で自己充電することができる.電池は小形軽量で,メンテナンスフリーで放電割合が低く長期保存が可能とされている.

 50kW級のLPG用ガスエンジン発電機が開発された.2点点火による急速燃焼及び,高圧縮比と遅閉じミラーサイクルを組み合わせている.熱効率は49.5%程度に達したとされている.

 小型汎用ガソリンエンジンの使用できる傾斜角度が20度から30度まで可能になったとされている.

 従来,小出力の動力として小形2サイクルエンジンが使用されてきたが,年々生産台数が減少する傾向が見られ,電動モータに置き換わる傾向がある.今後も電池やモータの改良が進むにつれ,ガソリンエンジンの電動化が進むと考えられる.

〔中園 徹 ヤンマー〕

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8.2.5 建設機械および鉄道車両用機関
a.建設機械の市場動向

 2019年度,国内は排ガス規制による旧型機需要の反動減からの回復に加え,増税前の駆け込み需要により増加.輸出は台風の影響により減少するほかアジア向けが減少したが,北米向けが堅調であった.全体としては,2019年度の出荷金額は,2兆2,871億円(前年同期比7%減少)の見込みである.また主要建機の2019年売上台数は,油圧ショベル80,707台(前年度比2.1%増),ミニショベル111,496台(前年度比1.7%増),ホイルローダ10,972台(前年度比9.3%減)である.

 2020年度は各市場とも不確定な要素はあるものの,国内・輸出ともに微減に留まり,出荷金額は2兆2,294億円(前年度比3%減)と予想される.

ただし上記は2020年1月14日時点の調査に基ずいており,新型コロナウィルスの影響は考慮されていない.

b.建機用機関の技術動向

 建設機械用機関の排出ガス規制については,欧州で2019年よりStageVが実施されている.第四次規制に対してNOx規制値は同様であるが,PM規制値が0.015g/kWhとなりPN(粒子数)規制も導入された.一方日米については第四次規制が継続されている.

 日米欧以外の地域では,カナダ,韓国,オーストラリア(New South Wales州)で第四次規制が実施されており,インド,トルコでも2020年~2021年頃に導入予定である.一方中国では,中国四次規制の検討が進められており,規制レベルは欧州StageIIIbに加えてPN規制が導入される.実施時期はまだ確定していない.

 また建機においても実稼働中の排出ガス規制の動向がある.欧州StageVでは,PEMS (Portable Emission Measurement System)を用いて,一定数の建機の実稼働中排出ガスをモニターすることが要求されている.また中国四次規制では,建機の実稼働中排出ガスを規制値の2.5倍以下に抑えることが検討されている.

 技術動向としては,欧州StageV規制対応と同時に,各社で新しい機関の導入が発表されている.

 キャタピラー社ではC9.3B(排気量9.3L)に続いてC13B(排気量12.5L)を発表している.C9.3Bと同様,EGRを廃止し機関の簡素化を図るとともに,出力を従来機に対して20%アップして,430kW(出力比34kW/L)としている.

 ジョンディア社からは排気量18Lの新エンジンが発表された.出力は650kW(出力比36kW/L)と非常に高い.技術的には,高圧コモンレール,ク-ルドEGR,2ステージターボチャージャを採用している.2022年量産予定とのことである.

 国内メーカーからは,クボタ社がV5009(排気量5.0L)に続いてS7509(排気量7.5L)を発表している.出力225kW(出力比30kW/L)の高出力化と同時に,エンジン前後から出力100%取り出し可能,ワンサイドメンテナンスなど,使い易さをアピールしている.2023年市場導入予定とのことである.

 一方小型エンジンでは,FPTインダストリアル社からF28(排気量2.8L)が発表されている.特長は,ベースエンジンを共通としたまま,ディーゼルとCNGのバージョンをもち,ディーゼルはDOC+DPF(欧州向け)とDOC(北米向け),CNGは3元触媒付きとして各地域の排出ガス規制に対応している.さらにハイブリッドバージョンが追加されたが,これはエンジン(出力54.4kW)に電動モータ(連続出力19.9kW,最大出力29.4kW)を組み合わせたシステムである.

c.鉄道車両用機関の技術動向

 鉄道車両用機関については,ハイブリッドシステムの営業運転が開始されて以降,更なる開発の促進と共にハイブリッド車両の営業エリアが拡大している.また国鉄時代に製作した一般気動車の老朽取替用として,新型一般気動車の新製が計画されている.JR北海道,JR東日本,JR九州では,車両および機関を一新させて電気式気動車として,営業運転を開始したところである.またJR貨物でも電気式機関車の営業運転を開始した.

〔飯島 正 (株)IPA〕

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8.2.6 舶用および発電用機関

 舶用ディーゼル主機関を生産している国内主要ディーゼルエンジンメーカー9社の2019年1月~12月の生産実績は753台,723万馬力であった.(2018年は690台,720万馬力)2015年から4年連続減少を記録していたが,5年ぶりの増加となった.また,2019年末時点の手持ち工事量は9社合計で626台,806万馬力となった.2018年末の729台,889万馬力に比べて,大幅な減少となった.
2019年の新造船マーケットは,本格的な回復が期待されたが,依然として船腹過剰感が拭えない中,船主が2020年1月から開始されるSOx規制への対応に追われ,商談は進まなかった.さらに,今後強化が見込まれるGHG排出規制に対して,船の陳腐化リスクへの懸念から,船主が様子見の姿勢をとっていることが市況低迷に拍車をかけており,年間を通じて低調な一年となった.

 2019年には強まる環境規制を背景に,各エンジンメーカーからは,環境対応技術に関する開発や受注の発表が相次いだ.

 ジャパンエンジンからは,実証試験中のUEC50LSJ-EGR機関が公開された.MGO専焼機関とすることで,環境規制への対応,低燃費化とともに,運航コストおよび乗組員への負荷低減を図っている.日立造船からは,同社の SCR(選択的触媒還元法)システムの第二世代型となるHitz HP-SCR Mk-IIが発表された.蒸発器をエンジンの排気管と統合することにより,システム全体の設置面積を約4割コンパクト化することに成功している.
また,川崎重工業では,同社で建造する大型LPG運搬船向け主機として,国内初となるLGP焚きディーゼルエンジン7S60ME-C10.5-LGIPを受注,さらにIHI原動機(旧ディーゼルユナイテッド)では,国内初のLNG燃料船向けとして,自動車運搬船向けにデュアルフューエルエンジン8X52DFを受注したとの発表があった.
国内造船所でも,ようやく三次規制対応船の建造が本格化する.三井E&Sマシナリーからは,三次規制対応機関が,2019年の14台から2020年には81台まで,飛躍的に増加するとの発表があった.

 IMO(国際海事機関)では,国際海運のGHG削減戦略の2030年目標である燃費効率40%改善に向け,短期対策の検討を開始した.さらに,将来のゼロエミッションを見据えた水素,アンモニア,合成メタン,バイオ燃料などの代替燃料の開発プロジェクトが,世界で相次いで結成されている.

〔東條 温司 (株)三井E&Sマシナリー〕

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8.2.7 ガスタービン

 パリ協定に基づき2020年から世界各国においてCO2の排出量削減が進められる予定となっており,ガスタービンを用いた石炭火力発電はさらに縮小していくことが予想される.しかしながら,今後大量に導入されることが見込まれる再生可能エネルギーは基本的に不安定な電源であり,起動速度や負荷変化速度に優れるガスタービン発電設備がバックアップ電源として重要な役割を担っていくと考えられている(1).また,すでに再生可能エネルギーの導入が進んでいる諸外国では,その余剰電力を活用したPower-to-gas(P2G)として水素や水素キャリアへの関心が高まっており(2),それを利用した火力発電の試みが行われている.米国のユタ州では,出力84万kW級のガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電プロジェクトが実施される(3).これはM501JAC形2基を中核とするGTCC発電設備を用いたプロジェクトで,2025年に水素混焼率(体積比による混合比率)30%で運転を開始し,2045年までに水素100%での運転を目指している.オランダのフローニンゲン州では44万kWの天然ガス焚きGTCC発電所を対象として,2025年までに100%水素専焼に転換するプロジェクトも進められている.国内においても,水素キャリアであるアンモニアを火力発電の燃料として利用するための技術開発がNEDOプロジェクトとして実施されている(4)

 航空業界でも低炭素社会を実現するために電動推進システムの開発などが進められているが,バッテリーの質量エネルギー密度と体積エネルギー密度の低さから,特に長距離を飛行する航空機では今後もしばらくの間はガスタービンを用いたエンジンが利用されると考えられている(5).米国のゼネラル・エレクトリック社は世界最大の推力を発生させるGE9Xエンジンの開発を進めている(6).同エンジンはバイパス比が約10で,エンジン外径が3.4 mほどにもなるが,AM技術やセラミック基複合材などを用いて軽量化が図られている.ガスタービンエンジンの軽量化に関連して,国内では内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「統合型材料開発システムによるマテリアル革命」の一部として,セラミックス基複合材料の航空機エンジン部材化技術の開発が実施されている(7).また,宇宙航空研究開発機構(JAXA)では2030年代に就航が予想される次世代航空機エンジンの開発への参画を見据えて,超低NOxリーンバーン燃焼器と高温高効率タービンの研究開発(En-Coreプリプロジェクト)が実施されている(8)

 学術分野では,ASME TURBO EXPOが米国のアリゾナ州で開催され,発電用と航空用のガスタービンによるCO2排出量の削減を基調としたキーノートパネルやプレナリーセッションなどが実施された.論文件数は例年並みであったが,スポンサー企業の参画は業界の最近の状況を反映してか後退している.

〔金子 雅直 東京電機大学〕

参考文献

(1)日本ガスタービン学会調査研究委員会,調査研究委員会報告 NEDOプロジェクト「再生可能エネルギー大量導入時代の系統安定化対応先進ガスタービン発電設備の研究開発」について,日本ガスタービン学会誌,Vol. 44,No. 6(2016),pp. 506-526.
(2)柴田善朗,我が国におけるPower to Gasの可能性,エネルギー経済, Vol. 42,No. 1(2016),pp. 32-49.
(3)米国ユタ州で再生可能エネルギー由来の水素を利用したGTCC発電プロジェクト インターマウンテン電力(IPA)向けに84万kW級水素焚きJAC形設備を初受注,https://www.mhps.com/jp/news/20200312.html(参照日2020年4月6日)
(4)「次世代火力発電など技術開発/次世代火力発電技術推進事業/アンモニア混焼火力発電技術の先導研究」に係る実施体制の決定について,https://www.nedo.go.jp/koubo/EV3_100187.html(参照日2020年4月6日)
(5)Langston, Lee S.,AS THE TURBINE TURNS…,GLOBAL GAS TURBINE NEWS,Vol. 60,No. 1(2020),pp. 54-55.
(6)Special Delivery:世界最大推力のエンジン,ボーイング777Xの実用化に向け一歩前進,https://www.gereports.jp/special-delivery-the-worlds-most-powerful-engine-one-step-closer-to-liftoff-in-boeings-777x-jet/(参照日2020年4月6日)
(7)統合型材料開発システムによるマテリアル革命,https://www.jst.go.jp/sip/p05/index.html(参照日2020年4月6日)
(8)En-Core(コアエンジン技術実証)プロジェクト,http://www.aero.jaxa.jp/research/ecat/encore/(参照日2020年4月6日)

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8.2.8 スターリング機関

 2019年はStirling InternationalによるInternational Stirling Engine Conferenceが開催される年ではなかった.日本国内では,スターリングエンジン(SE)を主たる議論の対象として,日本機械学会によりスターリングサイクルシンポジウムが開催された.スターリングサイクルシンポジウムでは,冷凍機や模型エンジンに関する発表と共に,SEの宇宙利用に関する考察やコジェネレーション(Combined heat and power: CHP)用スターリングエンジンの発表があった.目新しいものとして,熱音響エンジンでは,フライホイルを備えたクランク機構の導入やフルイダインを複数連結させる影響の議論などがなされた.

 英文の研究報告では,例年通りSEを熱エネルギを動力に変換する構成要素として熱収支などの計算の中で扱うエネルギー変換システムの計算が多く,また2010年代の傾向としてスターリングエンジンを題材にComputer fluid dynamics (CFD)を実施した報告も増えている.フリーピストンスターリングエンジン(FPSE)を議論する文献が多い点で,日本のシンポジウムと傾向が異なる.

 CHPの議論では,SE導入にかかる費用の回収期間(payback period)について議論した技術系の学術論文があり(1)(2),またCHPを実運転した報告もあった(3)

 CFDの利用に関しては,簡素な形状の熱交換器を検討した報告(4)ピストンやディスプレーサとシリンダの隙間に焦点を当てたCFDを有効に用いた議論(5)(6)があった.ただしスターリングサイクルの研究にCFDを用いたとする報告の多くは,熱交換器の伝熱面積が十分に大きいスターリングエンジンに対して無駄にCFDを適用しており,目新しい結論は無い.SEの一種であるヴェルミエ機関を対象にしたCFDの計算も同様であった.

 FPSEについては実験結果も交えて,制御の議論(7),フレクシャースプリングの損失の議論が(8),なされていた.またFPSEの構成要素や関連部品について,金属を3Dプリンタで成形する独自形状の再生器(9)-(11),リニア発電機について(12)(13),研究報告がなされた.FPSEは利用用途もCHP関係で報告があるが,印象の強いものとして中国で宇宙利用の議論がなされていることを記しておく(14).

 機構型のSEの研究報告は,FPSEに比べると発表件数が少ない印象を受ける.しかし目新しい項目として動力学的な解析(15)や機構型SEの自己起動(16)が挙げられる.また,再生器の議論は実験と計算の双方で行われている(17).
 珍しい形式のSEでは,ロータリータイプのディスプレーサを採用した小型の低温度差スターリングエンジンの実験(18)と,セミフリーピストンSEの熱力学的な解析(19),報告された.

 熱源も多様な取り組みがなされているが,冷熱利用の議論(20)-(22)や,太陽熱利用の実験(23),太陽熱で冷凍機を駆動する構想(24)が発表された.

〔加藤 義隆 大分大学〕

参考文献

(1)Sheykhi, M., Chahartaghi, M., Balakheli, M.M., Hashemian, S.M., Miri, S.M., Rafiee, N., Performance investigation of a combined heat and power system with internal and external combustion engines, Energy Conversion and Management, 185(2019), pp. 291-303.
(2)Sheykhi, M., Chahartaghi, M., Balakheli, M.M., Kharkeshi, B.A., Miri, S.M., Energy, exergy, environmental, and economic modeling of combined cooling, heating and power system with Stirling engine and absorption chiller, Energy Conversion and Management, 180(2019), pp. 183-195.
(3)Cardozo, E., Malmquist, A., Performance comparison between the use of wood and sugarcane bagasse pellets in a Stirling engine micro-CHP system, Applied Thermal Engineering, 159(2019), art. no. 113945.
(2)竹内芳美, 超精密マイクロ切削加工, 日本機械学会論文集 C 編, Vol.71, No.701 (2005), pp.1–4.
DOI: 10.1299/kikaic.71.1
(3)Keer, L. M., Lin, W. and Achenbach, J. D., Resonance effects for a crack near a free surface, Transactions of the ASME, Journal of Applied Mechanics, Vol.51, No.1 (1984), pp.65–70.
(4)García, D., Suárez, M.-J., Blanco, E., Prieto, J.-I., Experimental correlations and CFD model of a non-tubular heater for a Stirling solar engine micro-cogeneration unit, Applied Thermal Engineering, 153(2019), pp. 715-725.
(5)Graefe, P., Kuehl, H.-D.Evaluation of appendix gap losses in stirling cryocoolers, AIAA Propulsion and Energy Forum and Exposition(2019), 13 p.
(6)Sauer, J., Kuehl, H.-D.,Theoretically and experimentally founded simulation of the appendix gap in regenerative machines, Applied Thermal Engineering, 166(2020), art. no. 114530.
(7)Zare, S., Tavakolpour-Saleh, A., Shourangiz-Haghighi, A., Binazadeh, T., Assessment of damping coefficients ranges in design of a free piston Stirling engine: Simulation and experiment, Energy, 185(2019), pp. 633-643.
(8)Zamani Meymian, N., Clark, N., Subramanian, J., Heiskell, G., Johnson, D., Mahmudzadeh, F., Darzi, M., Musho, T., Famouri, P., Quantification of windage and vibrational losses in flexure springs of a one Kw two-stroke free piston linear engine alternator, SAE Technical Papers, 2019-April.
(9)Li, R., Qiu, S., Gao, Y., Yanaga, K., Development of an advanced free piston stirling engine of space power system, AIAA Propulsion and Energy Forum and Exposition(2019), 8 p.
(10)Yanaga, K., Qiu, S., Experimental investigation of stirling engine robust foil regenerator, AIAA Propulsion and Energy Forum and Exposition(2019), 8 p.
(11)Li, R., Gao, Y., Yanaga, K., Qiu, S., Design of a free piston Stirling engine power generator, ASME International Mechanical Engineering Congress and Exposition, Proceedings (IMECE) (2019), 6p.
(12)Hadžiselimović, M., Srpčič, G., Brinovar, I., Praunseis, Z., Seme, S., Štumberger, B., A novel concept of linear oscillatory synchronous generator designed for a stirling engine, Energy, 180(2019), pp. 19-27.
(13)Chen, H., Zhan, Y., Wang, H., Nie, R., A tubular permanent magnet linear generator with novel structure, IEEE Transactions on Plasma Science, Vol.47, No.6(2019), pp. 2995-3001.
(14)Chen, X., Cui, H., Simulation and Analysis of Magnetic Field of Free-Piston Stirling Generator Under No-Load[自由活塞斯特林发电机空载磁场模拟及分析], Shanghai Ligong Daxue Xuebao/Journal of University of Shanghai for Science and Technology, Vol.41, No.6(2019), pp. 540-545.
(15)Karabulut, H., Okur, M., Halis, S., Altin, M., Thermodynamic, dynamic and flow friction analysis of a Stirling engine with Scotch yoke piston driving mechanism, Energy, 168(2019), pp. 169-181.
(16)Daoud, J.M., Friedrich, D., Design of the multi-cylinder Stirling engine arrangement with self-start capability and reduced vibrations, Applied Thermal Engineering, 151(2019), pp. 134-145.
(17)Nielsen, A.S., York, B.T., MacDonald, B.D., Stirling engine regenerators: How to attain over 95% regenerator effectiveness with sub-regenerators and thermal mass ratios, Applied Energy, 253(2019), art. no. 113557.
(18)Bagheri, A., Mullins, W.C., Foster, P.R., Bostanci, H., Experimental characterization of an innovative low-temperature small-scale Rotary Displacer Stirling Engine, Energy Conversion and Management, 201(2019), art. no. 112073.
(19)Karabulut, H., Okur, M., Ozdemir, A.O., Performance prediction of a Martini type of Stirling engine, Energy Conversion and Management, 179(2019), pp. 1-12.
(20)Stanek, W., Simla, T., Rutczyk, B., Kabaj, A., Buliński, Z., Szczygieł, I., Czarnowska, L., Krysiński, T., Gładysz, P., Thermo-ecological assessment of Stirling engine with regenerator fed with cryogenic exergy of liquid natural gas(LNG), Energy, 185(2019), pp. 1045-1053.
(21)Buliński, Z., Kabaj, A., Krysiński, T., Szczygieł, I., Stanek, W., Rutczyk, B., Czarnowska, L., Gładysz, P., A Computational Fluid Dynamics analysis of the influence of the regenerator on the performance of the cold Stirling engine at different working conditions, Energy Conversion and Management, 195(2019), pp. 125-138.
(22)Katooli, M.H., Askari Moghadam, R., Hajinezhad, A., Simulation and experimental evaluation of Stirling refrigerator for converting electrical/mechanical energy to cold energy, Energy Conversion and Management, 184(2019), pp. 83-90.
(23)Mendoza Castellanos, L.S., Galindo Noguera, A.L., Carrillo Caballero, G.E., De Souza, A.L., Melian Cobas, V.R., Silva Lora, E.E., Venturini, O.J., Experimental analysis and numerical validation of the solar Dish/Stirling system connected to the electric grid, Renewable Energy, 135(2019), pp. 259-265.
(24)Dai, D., Liu, Z., Yuan, F., Long, R., Liu, W., Finite time thermodynamic analysis of a solar duplex Stirling refrigerator, Applied Thermal Engineering, 156(2019), pp. 597-605.

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8.2.9 燃料電池

 再生可能エネルギーで得られたエネルギーを貯蔵,輸送できる水素は地球温暖化対策および我が国のエネルギー安全保障において重要であり,水素を高効率に利用できる燃料電池は次世代自動車などの移動体用電源として期待されてる.我が国では水素基本戦略(1)や水素・燃料電池戦略ロードマップ(2)に基づいて燃料電池自動車や燃料電池バス,燃料電池フォークリフトなど水素利用システムの普及に向けた活動が各方面で進められている.

 燃料電池自動車としては2014年12月にトヨタ自動車がMIRAIの一般販売を開始し,2016年3月には本田技研工業がCLARITY FUEL CELLのリース販売を開始した.燃料電池自動車の国内保有台数は2018年度末時点で3000台を超えている(3).MIRAIとCLARITY FUEL CELLが搭載する燃料電池はいずれも固体高分子形燃料電池であり,燃料電池スタックの体積出力密度は3.1kW/Lを実現している.70MPaの高圧水素を122.4L(MIRAI)または141L(CLARITY FUEL CELL)のタンクに充填することで650km以上(JC08モード)の走行が可能である.経済産業省では,水素基本戦略や水素・燃料電池戦略ロードマップに基づいて,水素ステーションの整備を進めており,2018年には世界に先駆けて100か所を超える商用水素ステーションを国内に整備した.今後,2025年までに320か所,2030年までに900か所整備することを目標に掲げている.水素ステーションの整備が進めば従来のガソリンエンジン乗用車と同様の使い方が可能となると考えられ,今後,燃料電池自動車の更なる普及が期待される.

 燃料電池バスとしてはトヨタ自動車が2017年から市場投入を開始した.東京都は2017年3月に乗車定員77名の燃料電池バスを導入し路線バスでの営業運行を開始した.2018年3月には量販型燃料電池バスSORAを新たに導入している.2019年3月には京急急行バスもSORAを導入しており,燃料電池バスの導入が進んでいる.量販型燃料電池バスSORAは国内で初めて型式認証を取得した燃料電池バスであり,車両サイズは10,525×2,490×3,350mm,定員は79名である.車両のルーフ部分に70MPa高圧水素タンクを10本(タンク内容積: 600L),114kWの固体高分子形燃料電池スタックを二つ搭載しており,ニッケル水素バッテリーと組み合わせて最大出力113kW,最大トルク335N・mの交流同期モーターを2基駆動できる.この燃料電池バスは外部給電システムを搭載しており,災害時などに最高出力9kW,電力量235kWhの供給が可能である.

 燃料電池フォークリフトは従来から実証実験が行われてきており,豊田自動織機が2016年に2.5トン積燃料電池フォークリフトの販売を開始した.2019年にはラインナップを拡充し1.8トン積燃料電池フォークリフトを市場に投入した.燃料電池フォークリフトは燃料電池自動車や燃料電池バスと同じく固体高分子形燃料電池が搭載されている.水素の充填圧力は35MPaであり,8時間の稼働が可能である.燃料電池フォークリフトにおける水素の充填時間は3分と短く,充電時間が約8時間と長い従来の鉛バッテリーフォークリフトに比べ作業効率が向上する利点があり,今後の普及が期待される.海外では,物流倉庫への大量導入の動きもある.

 近年では鉄道への導入も進められている.JR東日本は2019年6月に燃料電池ハイブリッドシステムで駆動する鉄道車両を開発し,営業路線で走行実証を開始すると発表した.燃料電池ハイブリッドシステムは燃料電池と蓄電池の両方から主電動機および補助電源装置にエネルギーを供給するシステムである.蓄電池には回生ブレーキから電力が供給され,主電動機などの負荷電力が小さい時には燃料電池からも電力が供給される.開発される車両は2両1編成であり,180kWの固体高分子形燃料電池スタックが二つ,25kWhのリチウムイオン電池が二つ搭載される.70MPa高圧水素タンクを搭載し,最高速度100km/h,航続距離140kmを目標としている.2021年度には鶴見線,南武線尻手支線,南武線(尻手~武蔵中原)での実証試験が計画されている.

 燃料電池はさまざまな製品に適用され始めているが,更なる普及のためには燃料電池システムのコスト低減が不可欠である.2019年3月に策定された水素・燃料電池戦略ロードマップでは2030年までに燃料電池自動車80万台,燃料電池バス1200台,フォークリフト1万台という普及目標が設定されており,これら目標の実現には燃料電池自動車とハイブリッド電気自動車の価格差縮小,燃料電池バスの車両価格低減,燃料電池スタックや水素貯蔵システムのコスト低減などの必要性が示されている.燃料電池システムの低コスト化を実現するために,今後,貴金属の使用量低減や水素貯蔵システムにおける炭素繊維の使用量低減などさまざまな技術開発が求められる.

〔境田 悟志 茨城大学〕

参考文献

(1) 水素基本戦略,経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2017/12/20171226002/20171226002-1.pdf (参照日2020年4月1日)
(2) 水素・燃料電池戦略ロードマップ,経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190312001/20190312001-1.pdf (参照日2020年4月1日)
(3) EVなど 保有台数統計,一般社団法人 次世代自動車振興センター
http://www.cev-pc.or.jp/tokei/hanbai.html (参照日2020年4月6日)

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