日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第95号
田瀬ダムの高圧放流設備
ダムは治水、利水、発電など多目的に利用されており、ダム下層部からの放流は、貯水の用途を大幅に拡げた。
1954(昭和29)年に竣工した国土交通省が管理している田瀬ダム(岩手県)では、中核をなす高圧スライドゲート本体(4門)は、米国からの輸入品である(1門当たりの吐出量120m3/s)。しかし、我が国初の設備の設置・運用を行うことから、その方法に関して、メーカーと密接に連絡を取りつつ、理解を深めようとしていたことが、残された手紙などの通信記録から垣間見られる。この努力の成果が、世界最深位置(当時)に取り付けられた、国産初の栃木県五十里ダム放流管の技術面での基礎となり、我が国のスライドゲートシステム普及の原動力となった。これ以降、ダムの多目的化が一気に進み、国民生活向上に役立った。
一方、スライドゲートの放流管の設計も重要であるが、ゲートメーカーは機械の製造者であって、放流管はその対応範疇にはない。従って、国内で独自に高圧放流管を設計する必要があった。そこで建設省(当時)土木研究所では、模型実験、解析解の導出を経て、その理論を作り上げた。このような、田瀬ダムの建設過程でなされた流体力学的な機械システムの設計手順の確立も国民に大きな恩恵をもたらした多目的ダムの普及には欠かせないものであった。
《写真提供:国土交通省 東北地方整備局 北上川ダム統合管理事務所》
公開
①田瀬ダム 堤体内(事前予約要)
②田瀬ダムものしり館(事前予約不要)
- 開館時間:
- ①平日9:00~16:30 ②9:00~16:30
- 入館料:
- 無料
- 休館日:
- ①土、日、祝日、年末年始
②休館日なし(施設点検等臨時休館日を除く) - 住所:
-
〒028-0123
岩手県花巻市東和町田瀬39-1-3 - 電話番号:
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- 交通機関:
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