特集 応用広がるモーションキャプチャ
マーカレスモーションキャプチャから筋活動解析までを完全自動化したクラウドサービス≪計測技術≫
はじめに
モーションキャプチャー(モーキャップ)の技術はCGやゲーム制作に広く利用され、近年では映像メディアのアバター生成にも使われるようになっている。スポーツにおいてもオリンピックやプロスポーツのアスリートの強化に使用され、データに基づくトレーニングが広がりを見せている。
人間や動物の運動を客観的に観察する技術は写真を用いて始まった(1)。光学式モーキャップはマーカを身体に取り付けてカメラで撮影し、画像処理をマーカの検出に限定することで実用化に成功した。1990年代後半に英国のVicon Motion Systems社、米国のMotion Analysis社がマーカの3次元座標をリアルタイムで計算するシステムの販売を開始した。
マーカレスモーキャップは、名前の通りマーカを取り付けずに身体の特徴点を見つける画像処理の高度化によってモーキャップを可能にしたものである。ドイツのSimi Reality Motion Systems社はカメラでシルエットから3次元再構成を行うシステムを開発した。カナダの Theia Markerless社は2021年にAI(ニューラルネット)を採用したものを発売した。2018年に東京大学のマーカレスモーキャップの論文発表(2)と特許出願がなされた。Kinescopic社は東京大学の技術をもとにマーカレスモーキャップによるヒューマン・デジタルツインサービスのDigi2を2024年に開始した。ナックイメージテクノロジー社のカメラシステムAIREALが撮影した映像をインターネットでクラウドに送り、運動解析、バイオメカ解析までを全自動で行う世界で初のサービスである。
本稿では、モーキャップとバイオメカ解析の技術の現状と動向を説明し、技術的な課題の一つを指摘した後に、その課題解決を目的としたサービスであるDigi2とその技術を紹介する。
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