特集 ジョブ型雇用社会の人材育成
ジョブ型雇用に関する労働市場の動向
ジョブ型雇用社会を巡る状況
ジョブ型雇用社会とは何か
まさに、本特集のテーマとして掲げられている「ジョブ型雇用社会」をタイトルに持つ書籍がある。濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か』(2021)(1)である。濱口によれば、ジョブ型とは日本以外の社会でみられる労働契約であり、労働者が遂行するべき職務が明確に規定され、必要な人員のみを採用し、職務によって賃金が決まっている。一方で、メンバーシップ型とは日本の雇用契約にみられる特徴であり、雇用契約は「その都度遂行すべき特定の職務が書き込まれる空白の石板」であることから、人事異動によって他の職務に異動することがある。そして職務とは切り離したヒトを基準として賃金が決められる。濱口は、日本における雇用の本質が、職務ではなくメンバーシップにあると指摘する。
日本におけるジョブ型を巡る議論は、決して目新しいことではない。濱口(2023) は、1950年代から1960年代に至る時期に、経営者団体は年功的な生活給から職務給への移行を衝動し、政府も同一労働同一賃金に基づく職務給や企業を超えた労働移動の推進を意図していたという。その後、日本企業が世界を席巻するなかで、メンバーシップを重視する日本的な雇用管理が賞賛されようになったものの、バブル崩壊後の低迷期には高賃金を是正するための成果主義や非正規労働者の低賃金が課題となり、なかなか浮上しない日本経済に対する打ち手として、再び職務が注目されるようになったと指摘する(2)。
キーワード:特集 ジョブ型雇用社会の人材育成
表紙:経年変化してグラデーションに紙焼けをした古紙を材料にコラージュ作品を生み出す作家「余地|yoti」。
古い科学雑誌を素材にして、特集名に着想を受け、つくりおろしています。
デザイン SKG(株)
表紙絵 佐藤 洋美(余地|yoti)