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2024/12 Vol.127

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特集 食の未来

月面農場の実現に向けた取組み

大熊 隼人(JAXA)

現在有人宇宙開発において、これまでの国際宇宙ステーション(ISS)を拠点とした活動から月や火星などより遠方へと活動圏を広げようとしている。これにより本格的な深宇宙探査が行われることになるが、それを実現するための宇宙における食料生産は、持続可能な深宇宙探査を支える重要な技術として位置づけられている。地上とは違う特殊な環境に対応するためには、ICT(情報通信技術)やバイオテクノロジー、ロボティクスなどの先端技術を活用することが重要となる。例えば各種センサーなどで取得した作物の生育状況を解析し、栽培環境をリアルタイムで制御することで作物にとって良い環境を作り出し、さらにロボットを活用した自動化技術により効率的な農業が可能になる。また、遺伝子編集技術を用いた収穫量や栄養素の最大化および耐環境作物の開発も進行中である。これらの技術は宇宙での農業のみならず地球上でも応用可能で、食料問題や環境問題の解決にも寄与する。

はじめに

人類の歴史において、農業は私たちの文明の基盤となり、社会の発展と繁栄を支えてきた。農業は人々の食料生産において最もベースとなる手段であり、野菜や果物などは健康的でバランスの取れた食事を取るためにいまや不可欠な存在となっている。農業の発展により食料安全保障が向上し、飢餓や貧困の削減にも役立つ。また持続可能な農業を推進することにより、生態系の保護や土壌の健康を維持することにも繋がる。さらに農村地域において農業に従事する人々が地域社会の基盤を形成し、地域経済を支えるという産業活性の役割も果たしてきた。

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