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2024/12 Vol.127

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特集 食の未来

食の未来

村上 則幸〔(国研)農業・食品産業技術総合研究機構〕

はじめに

食料は人間が存在するためには無くてはならないものである。これまで人類は食料不足の恐怖を幾度となく経験しており、今日でも食料の安定供給は世界の重要課題である。かつて日本においても、江戸時代の三大飢饉ききんとして「天明の大飢饉」、「享保の大飢饉」そして「天保の大飢饉」がよく知られているが、冷害や大雨、干ばつなどの自然災害や病虫害の大発生、さらに戦乱などにより突発的・地域的に発生する飢饉の恐怖を経験している。幸い日本は、第二次世界大戦直後の食料不足の後は、治水や農業技術の改良などによる農業生産の安定化、経済発展により外食産業が成長、さらに農産物や食品の輸入が増えたことなどにより、1970年代以降は、食料に不足がなく食べたいものがいつでも食べられる飽食の時代を迎えたと言われ、今日に至っている。

しかし、世界をみると、今なお最大7億8300万人が、気候変動の他、内戦や政治的な失策などにより長期的な食料不足〔飢餓きが〕に苦しんでいると言われている。これは、決して日本にとってもひと事ではなく、さまざまな要因によって、将来日本も現在の食生活を維持できなくなる危険をはらんでいることを示唆している。そこで本稿では、食に関する現状の課題を整理するとともに、情報・ロボット関連技術を中心に次世代に食の安心を引き継ぐために期待される技術開発について展望する。

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