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2024/10 Vol.127

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絶滅危惧科目-基盤技術維持のための再考ー

第10回 溶接・接合工学のさらなる発展

平田 好則(大阪大学)

溶接技術の実用化の過程

溶接学会は2026年に100周年を迎える。材料を局部的に溶融させるアーク放電の発見が1801年、溶接部を大気から遮断し、酸化などを防ぐ被覆アーク溶接棒の発明が1904年、そして、1920年には全溶接船ESAB IVにおいて溶接工法が世界最初の保険会社ロイドにより認定された。奇しくも1920年は日本においても補剛材を溶接した船が建造されており、筆者はものづくりにおける溶接技術のはじまりと考えている。それまでは鋼板同士の接合には鋲(リベット)が使用されており、鋼板の穴あけ、リベットの焼鈍、リベット打ちなど1本あたりに作業員を4~5名要していたのが、一人の溶接士で鋼板をつなぐことができるようになった。このことは生産性が画期的に向上したことを意味し、当時、艦艇製作への適用が進められた。さらにブロック建造方式が開発され、製造工程の大幅短縮がなされた。

しかし、溶接変形によってプロペラ軸が通らず、船体を切断し、リベットによる再組立などが行われ、実製作を通して溶接の問題が明らかになった。その典型的な例がアメリカの戦時標準全溶接船の脆性破壊事故である。

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