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2024/10 Vol.127

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特集 社会経済活動を支える気象予測技術

機械学習による局所風速予測

道岡 武信(近畿大学)・瀧本 浩史・佐藤 歩〔(一財)電力中央研究所〕

はじめに

詳細数値シミュレーションの課題

数値シミュレーション手法および計算機の飛躍的な進歩により、複雑地形や建物などを詳細に再現した数値シミュレーションが実施できるようになってきた(1)。しかしながら、気象場を考慮した局所地点における実際の風を予測するためには、数km以上のオーダーの気象場を考慮した数値シミュレーションを実施する必要がある。現在、実際の気象場をメソ気象モデルなどで解析することが可能であるものの、数mオーダーの高解像度で解析するには限界があり、複雑地形や建物を再現した解析を実施するのも困難であるといった問題点がある。図1に詳細数値シミュレーションによる複雑地形上の風の様子を示すが、地形の影響を強く受け、地表面近傍の風が増速する領域や地形後流で風の方向が上空とは逆になる逆流領域が現れるが、このような風の流れをメソ気象モデルで再現することは現状では難しい。また、メソ気象モデルから得られた気象場のデータを境界条件として詳細数値シミュレーションを実施する方法もあるが、解析時間が膨大となる(2)(3)。このように詳細数値シミュレーションを適用する場合、特定の気象条件のみを再現するには非常に有効であるが、年間予測など長期間の風速を予測するのは計算負荷の観点から困難である。

近年、流体力学の分野にも機械学習が適用される事例が増えてきており、メソ気象モデルから得られた風速をダウンスケールして局所的な風速を再現できる可能性を秘めている。機械学習は解析時間が長い詳細数値シミュレーションとは違い、非常に短時間で局所風速を予測できる点も長期間の年間予測などに適している。そこで、本稿では地熱発電所地点の複雑地形上の風速を例に、筆者らが実施している機械学習を適用した局所風速予測の事例(4)を紹介する。

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