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2024/9 Vol.127

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特集 航空機産業およびその関連分野の成長と展望

機体構造への炭素繊維複合材料の適用

吉岡 健一〔東レ(株)〕

はじめに

航空機の機体構造は、軽量化が大きな価値を持つことから、古くからその観点で材料の探索と適用が進められてきた。近年では経済的な観点に加えて社会的要請としてのサステナビリティの観点でも軽量化の意義が注目されている。また、軽量化以外にも航空機とその製造工程から材料に必要とされる要件が存在し、それに対応する材料開発が進められている。本稿では、民間機を中心に炭素繊維複合材料適用の歴史と現在、また将来に向けた研究開発についてレビューしたい。

航空機への複合材料の適用

黎明期

航空機への繊維強化複合材料の適用は第2次世界大戦中の1940年代にアルミニウム不足のために始まったとも言われるが、当初はガラス繊維強化複合材料(GFRP)が主体であった(1)。ガラス繊維の弾性率の低さから、期待された軽量化効果はなかなか得られなかったが、1950年代末、ユニオンカーバイドが高弾性率の炭素繊維フィラメントの製造に成功した頃から炭素繊維が注目され、1960年代から軍用機を中心に構造材への炭素繊維複合材料の採用が拡がった。もともと高強度・高弾性率の強化繊維としてはボロン繊維が本命視され研究開発や適用検討が進められていた。一次近似として実際に元素単体の密度と弾性率を整理すると、図1のとおりボロンはベリリウムや炭素(ここではダイヤモンドであるが)とともに他の金属よりも優位であることがわかる。しかしながらボロンやベリリウムは繊維製造技術の諸課題が克服されず、それにとってかわる形で炭素繊維に主役の座が移ったといえる(2)

 

図1 各種材料の密度と弾性率

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