特集 航空機産業およびその関連分野の成長と展望
特集にあたって
今後20年の航空機産業の動き
航空機産業は2019年に発生したコロナ禍により、前例のない需要の落ち込みを経験した。コロナ禍後の需要の回復についても、同時多発テロ、SARS、リーマンショックに比べて時間がかかっているように見受けられる。これには機体製造メーカーにおける度重なる品質問題、あるいは欧州や中東における政情不安によるエネルギー価格の上昇も関与していることが想定される。2023年以降、コロナ禍が収まりを見せ始め、我々の生活が元の状態に戻るにつれ、航空需要も回復し始めており、それに応じて航空機の生産・出荷が増加することが期待されている。ただしこの間、サプライチェーンはかなりのダメージを受けており、業界全体としての完全なる回復には依然として未知数の部分が多い。そもそもコロナ禍前までは、「航空需要は指数関数的に増加することが予想されており、国として取り組むべき重要課題である」という趣旨の内容の説明を各所で目にしていた。コロナ禍という未曽有の事態がこのような業界全体を巻き込むような大きな変化を起こすとは、25年以上航空産業に寄り添ってきた筆者にとっても晴天の霹靂であった。とはいえ、経済状況が落ち着き、人の移動が活発になれば、元の成長曲線に漸近し、成長力のある魅力ある分野としてのポジションを取り戻すと思われる。
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