学会賞受賞論文のポイント
二重回転管の自励振れ回り
2023年度日本機械学会賞(論文)受賞
Unstable inner cylinder whirl of concentric double rotating cylinder system
吉住文太,入谷昌徳
Mechanical Engineering Journal, 2023, 10巻, 1号, p. 22-00103.
DOI: 10.1299/mej.22-00103
はじめに
両方の管が回転する二重回転管をもつ機構として、フライホイールバッテリーの風損低減機構(1)などが提案されている。これらの機構では、円筒状の回転体のまわりに同心でつれ回り管を設置した構造が採用されており(図1)、著者らも高速回転機器における二重回転管の研究に関わった。その過程で、高速で回転する管どうしが接触する問題に遭遇し、毎分数万回転以上の差回転数のあるアルミ管どうしが接触する状況を、「ギヤァ~」という接触音を聞きながら恐ろしく感じた記憶がある(安全のため保護カバー内で実験したことを付記する)。
管どうしの接触は高回転数域で突発的に生じ、自励的な振れ回り、もしくは静的発散が生じたものと推察された。このような不安定現象の基本原理は、すべり軸受や環状シールの不安定問題と同種であろうと推定はしたものの、すき間量が軸受より大きく(すき間/回転体半径~10%)、かつ両管とも回転している場合の不安定問題に取り組んだ文献が見当たらなかった。
現象の本質を数理モデルで説明し、それを実証したいという思いから、両管とも回転する場合の振れ回りを、理論と実験の両面から調べる研究方針を決定した。
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