学会賞受賞論文のポイント
高次元のデータ解析で振動モードを分解する
2022年度日本機械学会賞(論文)受賞
ベイジアンCP分解を用いた劣決定系の実稼働モード解析
富田直,神保智彦
日本機械学会論文集, 2021, 87巻, 899号, p .21-00134.
DOI: 10.1299/transjsme.21-00134
振動モード解析
本論文で取り組んだのは、「実稼働モード解析」と呼ばれるモード解析手法である。一般的な「実験モード解析」は、ハンマなどで加振力を入力してセンサで構造物からの出力を計測する。つまり入力と出力の両方の情報が必要となる。しかし、「実稼働モード解析」は入力情報を必要としない。これにより、インフラ構造物のセンサを設置し、共振周波数などのモード特性を抽出して観測することで、その変化から故障などの異常検出などに役立つ。
本論文では、実稼働モード解析において、センサ数がモードの数より少ない劣決定な状態でも振動モードを抽出する方法を取り扱った。中でも、事前に計測する構造物のモード数を設定する必要がないフレームワークを構築した。
以上の特徴をもつ実稼働モード解析の実現に至ったポイントは、音声分野で発展した暗中信号源分離(音源分離の手法)の問題と振動モード解析の間にアナロジーが成り立ち、その周辺で発展したアルゴリズムを取り入れることで達成できた点である。このような数理に基づいた研究は、その構造からさまざまな問題を横断的に取り扱うことができる点が有意義であると感じる。
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