特集 競技スポーツのためのスポーツ工学
オリンピック・パラリンピックとスポーツ工学―これまでとこれから―
はじめに:特集企画刊行にあたって
この度、日本機械学会誌2024年7月号「競技スポーツのためのスポーツ工学」特集を刊行する運びとなった。スポーツ工学・ヒューマンダイナミクス部門(以下、本部門)を代表し、室伏広治スポーツ庁長官をはじめ、執筆者各位および本部門出版編集委員各位に感謝申し上げたい。
本部門では、日本機械学会誌2016年7月の小特集「勝利・記録に挑むスポーツ工学 ― リオからピョンチャンそして2020東京へ―」(図1)(1)、同じく 2018年4月の特集「オリンピック・パラリンピックに貢献するスポーツ工学」(2)を企画してきた。後者では星奈津美選手(オリンピック競泳バタフライ2大会連続メダリスト)と座談会をさせていただいたことを思い出す。先日、本部門の前部門長が出演したTV番組を視聴していたところ、現在、パラアスリートの指導をされている星コーチの姿を拝見した。ご活躍の様子を嬉しく見ると同時に、世の中、いろいろな縁が繋がっていることを実感した。
本部門として担当した先の二つの特集に加えて、1992年には「スポーツ工学のすすめ」(3)、1998年には「スポーツ工学」(4)がそれぞれ小特集として企画されている。本誌では30年以上、スポーツと機械工学の関係を探ってきたことになる。
2024年夏には、オリンピック・パラリンピックのパリ大会がある。最新の話題を提供したいところではあるが、競技団体や関係機関との契約があるため、情報を公開できない場合がある。
筆者は、10年以上前にドイツ・ライプツィヒにある国立応用トレーニング研究所(IAT)、同じくボンにあるスポーツ用具研究所への訪問を試みたことがある。前者とは約束を取り付け、訪問した。ベルリンの壁崩壊の際には、ライプツィヒでも40万人の人々が市内の中心部に集まり、デモをしたそうである。エリートアスリートと薬学の関連研究が活発に行われており、旧東ドイツの雰囲気を感じた。一方、ボンのスポーツ用具研究所への糸口は、FAX番号のみであった。それを頼りに連絡したが、結局、連絡は返ってこなかった。スポーツにおける用具開発は秘匿性が高いようである。
今回の特集号でも研究開発事例:車いすラグビー用スポークガード、競技用シューズ、ラグビージャージなどが紹介されているが、一部、オブラートに包まれていることをご容赦いただきたい。
キーワード:特集 競技スポーツのためのスポーツ工学