日本機械学会サイト

目次に戻る

2024/6 Vol.127

バックナンバー

特集 電力供給の一端を担う原子力のさらなる発展への歩み

カーボンニュートラルを実現する高温ガス炉の実証に向けたJAEA の取組み

稲葉 良知・佐藤 博之・角田 淳弥・大橋 弘史・西原 哲夫・坂場 成昭〔(国研)日本原子力研究開発機構〕

はじめに

高温ガス炉は、その優れた安全性と高温熱が供給できることから、水素製造や蒸気供給などにより、2050年カーボンニュートラルに向け、脱炭素化に貢献するエネルギーとして大きな役割が期待される。

高温ガス炉において、セラミックスで被覆した被覆粒子燃料は核分裂生成物の閉じ込め性能に優れ、原子力級黒鉛で構成する炉心は出力密度に対して熱容量が大きく、かつ耐熱性に優れ、冷却材であるヘリウムガスは化学反応を起こさず、また炉心の冷却ができない事故などで原子炉出力は物理現象(負の反応度フィードバック)のみにより自然に低下する(1)。高温ガス炉は、これらの理由により炉心溶融を起こさない設計が可能である。

日本原子力研究開発機構(JAEA)は、高温ガス炉技術基盤および熱利用技術の確立を目指して、我が国初かつ唯一の高温ガス炉であるHTTR(高温工学試験研究炉)を用いて冷却機能喪失事故などを模擬した安全性実証試験を行うとともに、5つのプロジェクトを推進する。①HTTRの核熱を用いて水素製造技術を確証するHTTR-熱利用試験、②2030年代後半の運転開始を目指す高温ガス炉国内実証炉、③2030年代前半の運転開始を目指す英国高温ガス炉実証炉、④英国高温ガス炉燃料開発、⑤ポーランドの高温ガス炉研究炉である。本稿は、これら取組みの概況を示す。

会員ログイン

続きを読むには会員ログインが必要です。機械学会会員の方はこちらからログインしてください。

入会のご案内

パスワードをお忘れの方はこちら

キーワード: