特集 電力供給の一端を担う原子力のさらなる発展への歩み
三菱重工の革新炉開発
はじめに
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、原子力は技術的に確立したカーボンフリーかつ大規模・安定電源であり、エネルギーセキュリティの観点からも重要なベースロード電源である。三菱重工は、世界最高水準の安全性を実現する革新軽水炉「SRZ-1200」の開発を推進し、その先の多様化する社会ニーズに応じてさまざまな炉型の開発に取り組んでいる。本稿では、2050年カーボンニュートラル実現に向けた当社の原子力事業の取組みについて紹介する。
革新炉開発ロードマップ
カーボンニュートラル実現と電力安定供給に向けた貢献
世界的な気候変動問題への対応状況を踏まえ、日本では“2050年までにカーボンニュートラル”を目指すことが宣言されている。脱炭素化の取組みを進める中で、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う資源価格の高騰によって世界的にエネルギーセキュリティ上のリスクが顕在化し、国内でも2022年3月に電力需給ひっ迫警報が発令されるなど、電力安定供給の課題が浮き彫りになっている。こうした状況を踏まえ、日本政府は、温室効果ガスの排出量削減と経済成長をともに実現するための方針(GX実現に向けた基本方針)を閣議決定した。その中で原子力の活用として、既設炉の再稼働推進とともに、次世代革新炉の開発・建設に取り組むことが示された。
原子力はカーボンフリーかつ大規模・安定電源であり、エネルギーセキュリティの観点からも重要なベースロード電源であり、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて原子力の活用は必須と認識している。一方、国内においては、東日本大震災以降、原子力の稼働率が低下した状態が続いている。2023年夏までに、新規制基準に適合したPWRプラント12基が再稼働を達成したが、エネルギー安定供給や2050年のカーボンニュートラル実現を見据えると既設プラントの活用に加えて、新設・リプレースが必要である。