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2024/5 Vol.127

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絶滅危惧科目-基盤技術維持のための再考ー

第5回 「金属工学科」の消滅と「金属工学」の進展、学びの課題

芹澤 良洋〔日本製鉄(株)〕

はじめに

金属工学科の消滅といささか刺激的な題名とした。ご存じだろうか、今の日本の大学において金属工学科の名称は存在していない。「金属」の名を冠する学科もほぼない。東北大学には、金属材料研究所、金属フロンティア工学科があるが、国立研究所であった金属材料技術研究所も無機材質研究所と統合され、物質・材料研究機構となっている。なお、1989年の金属学会誌によると当時の「全国大学金属系教室協議会」加盟団体の名称は、41団体のうち半数は「金属」を冠していた(1)。絶滅危惧科目として冶金学を扱った記事の作成依頼を受け、現況を調べてみると確かに、金属工学、冶金学(この名前こそもう存在していない)の衰退? と思われるデータを種々見出している。一方、代表的な金属産業である鉄鋼業の製造プロセスに携わる機械工学出身の筆者は、業界に身を置いているためか、鉄鋼業を始めとする金属関連産業が、世間的な認知度はさておき、衰退しているとは言えないと考える。例えば、日本の鉄鋼業は世界的な企業競争の中で、世界トップの技術力を維持発展させており、さらにカーボンニュートラル達成のための技術開発を官民挙げて推進している。しかし、この記事のきっかけとなった2011年の関西経済団体の報告によると冶金学科・金属学科の減少に伴い、専門的な知識を持つ学生が減り、産業界の技術基盤維持が困難となるため、特定分野の拠点大学化、大学による社会人教育プログラムの提供などでの絶滅危惧科目のサポートが必要であると提言されている。

そこで、ここでは、金属工学の動向、鉄鋼業の状況、大学・企業における教育などの現状から、改めて今後の提言について述べる。

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