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2024/5 Vol.127

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特集 自動車用エンジンの現在と未来

燃料のライフサイクルアセスメント

工藤 祐揮〔(国研)産業技術総合研究所〕

はじめに

2020年10月に宣言された「2050年カーボンニュートラル」を受けて、我が国では脱炭素に向けた取組みがよりいっそう強化されてきている。カーボンニュートラルを実現するための「経済と環境の好循環」をつくるための産業政策として2020年12月に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021年6月に改訂)(1)では、今後の成長が期待される重点分野として14分野の実行計画が作成された。これらのうち、政策効果が大きく社会実装までを見据えて長期間の継続支援が必要な領域について、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援していくため設立された「グリーンイノベーション基金」(2)の元で、水素や燃料アンモニア、またCO2(二酸化炭素)を原料として水素と反応させることにより製造できる、合成液体燃料や合成メタンなどに関する国家プロジェクトが実施されている。

これらの燃料がカーボンニュートラルに貢献するクリーンな燃料と目されているのは、水素やアンモニアは燃焼する際にCO2を発生せず、また合成燃料はその使用によって新たな化石燃料の燃焼を回避できるからである。確かにこれらの燃料を使用すると、化石燃料を使用する場合と比べて燃焼に伴うCO2排出量は削減される。しかし、カーボンニュートラル実現に重要なのは、それらの製造や流通の段階も含めたサプライチェーンまたはライフサイクル全体で、化石燃料を使用した場合と比べてどれだけクリーンか、という点である。

本稿では、「カーボンニュートラル燃料」「クリーン燃料」と呼ばれる燃料の環境負荷の考え方を、ライフサイクルアセスメント(LCA)の観点から解説する。

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