特集 自動車用エンジンの現在と未来
正味熱効率55%超の次世代ディーゼルエンジン- 画期的な熱効率改善を得るための天の邪鬼的研究アプローチ -
今後もエンジンという選択肢は必要か
包括的なCO2排出抑制や将来エネルギの観点から
答えはYes。欧米では近い将来にエンジンの生産そのものを廃止する可能性もあるが、これは政治家の「エンジン不信」による部分が大きいと思う。近年のさまざまなLCA(ライフサイクルアセスメント)解析結果からは、速やかなCO2排出量削減と持続可能な社会の実現に対して、電気で走る車だけが解とは言えないことが示されつつある。無論電動車を否定しているのではなく、将来の車の動力源には「折衷」が求められる。
例えば、現在でも宅配やコンビニ配送、塵芥車などは、発進停止の多い部分負荷運転のため排出ガスの後処理触媒の温度が上がらず燃料を無駄に消費することになっている。このような使われ方に対しては航続距離も短いこともあり、むしろ電動車の方がエネルギーの無駄が減る。
一方で国内物流の中核を担う大型車を中心とした長距離トラックでは、現状から輸送効率を低下させないためには、バッテリーやインバータが重くかさばる(例えば無充電で500kmを走行するトラックの場合、軽油の燃料タンクに対してバッテリーパックの重さは30倍、体積は21倍という試算がある(1))電動車ではなく、従来の燃料と同等に扱える再生可能燃料を用いるエンジン車が望ましい。
さらにバッテリー製造や充電インフラ(給油スタンドの50倍(2)以上の急速充電スタンド)の建設に伴うCO2排出量の急増や、そもそも運輸部門が使える再生可能電力総量がはっきりしないことも問題である。日本は自活できる自然エネルギーには決して恵まれてはおらず、再生可能エネルギーの大半は将来的にも外国から輸入せざるを得ない。そういった少量でおそらく高価なエネルギーを最大限活用するためにも、電動車だけでなくエンジン車もエネルギー効率(エンジンであれば熱効率)を高めることが延いてはCO2排出量の削減に繋がる。
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