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2024/5 Vol.127

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特集 自動車用エンジンの現在と未来

世界初 可変圧縮比エンジンVC-TURBO 用マルチリンク式クランク機構の開発

大熊 悟・塩飽 紀之〔日産自動車(株)〕

はじめに

日産自動車では、2018年より自動車用量産エンジンとしては世界初となる直列4気筒可変圧縮比エンジン VC-TURBOの生産を開始した。さらに、シリーズハイブリットシステム e-POWERに直列3気筒可変圧縮比エンジンの適用とバリエーションを拡大し、現在に至るまでさまざまな車両に搭載され高い評価をいただいている。本VC-TURBOは可変圧縮比機構を備えることで、従来エンジンでは変化させることができなかった圧縮比を高効率運転時は高圧縮比、高負荷運転時は低圧縮比と運転シーンに応じて変化させることにより、相反する高効率化と高出力を両立していることが特徴である(1)。VC-TURBOの量産化は、エンジンのさらなる可能性を示す大きな一歩と考える。

可変圧縮比を実現させるための機構については、古くから多くの提案がなされてきたが(2)、車両への搭載性、フリクション抑制、さらに熱効率に優れるロングストローク化への拡張性といったさまざまな副次的なメリットが得られるマルチリンク式クランク機構を採用した(3)。マルチリンク式クランク機構の開発では、従来機構の約2倍にも達する荷重に耐え得る強度を確保しつつ、軸受の局部面圧を抑え込むといった一見相反する事象を両立させる必要があった。本稿では、本機構特有の物理現象を正確に捉えることで成立解となる構成部品の形状、量産可能な仕様を見出していった開発内容について紹介する。

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