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2024/5 Vol.127

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特集 自動車用エンジンの現在と未来

副室ジェット燃焼による熱効率向上への挑戦

安藤 博和〔(株)本田技術研究所〕・鳥居 建史〔本田技研工業(株)〕

はじめに

昨今、カーボンニュートラル実現のため、従来の内燃機関自動車から化石燃料に頼らない電動自動車への転換が加速している。電動自動車への完全移行には、十年単位の時間を要するため、その移行期においては内燃機関自動車の燃費改善が重要である。ガソリン火花点火(Spark Ignition: SI)燃焼はエンドガス自着火が原因で起きるノッキングを回避するため、点火時期をMinimum advanced for best torque (MBT)よりも遅角せざるを得ず、時間損失が増大し、熱効率向上を図る上での課題となっている。その対策として、副燃焼室(以降、副室と略す)を用いた急速燃焼(以降、副室ジェット燃焼と呼ぶ)によって火炎伝播面の乱流運動エネルギーを高めることで、燃焼期間を短縮し、ノッキングを抑制する方法が検討されている。これは圧縮比を高めた際に低下する耐ノッキング性能を、副室ジェット燃焼で補うことで、熱効率を改善することが狙いである。この燃焼方法は、昨今F1を代表としたレース用エンジンを中心に適用が進んでいる(1)。これらも参考にしつつ、筆者らは、量産自動車用ガソリンエンジンに副室ジェット燃焼を適用する研究を進めている(2)~(6)。自動車用ガソリンエンジンは熱効率向上に加え、振動騒音性能やコスト競争力なども商品要求として重要となる。そこで本研究では、既存量産エンジンへの適用を容易にするため、副室に燃料噴射装置を備えないパッシブ型を選択し、量論比における熱効率向上効果および相反問題になりがちな振動騒音低減策について検討した。

本稿では、副室ジェット燃焼の燃焼期間短縮とノッキング抑制の現象解明、ノッキング抑制効果を利用した圧縮比増大による熱効率向上効果に加え、急速燃焼によって増大する燃焼騒音の対策技術について紹介する。

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