日本機械学会サイト

目次に戻る

2024/5 Vol.127

バックナンバー

活動報告

2023年度の活動報告

中期的課題への取り組み

(1)新部門制の本実施スタート

2020年度から3年間の試行期間を経て、2023年度から本実施がスタートしました。この新部門制は、分野を横断した新しい学際的な領域・技術を創成していくことを目指しています。今後、3年毎に部門活動をレビューしながら、将来に向けた新分野創出や部門の統廃合も視野に、総合力としての学術的価値を高めるための活動を進めます。

(2)分野連携企画

新部門制の神髄となる部門間連携を促進するため、2020年度から分野連携委員会が設置されました。これまでこの委員会に申請された連携企画は、2020~2022年度の3年間に合計53件、2023年度も25件に上り、積極的な連携企画が講演会、講習会、国際会議等で実施されるようになりました。

(3)分科会・研究会の見直し

本会にとって学術の基盤強化、新領域の創出、人材育成のための分科会・研究会活動は極めて重要です。しかしながら、これまでの分科会、研究会は新テーマが少なく、また部門間連携が低調なことから新分野の開拓やイノベーションの創出には必ずしも結びついていませんでした。そこで本会における分野連携や産学連携の位置付けを整理し、ミッションを再定義するとともに、新部門制とリンクすることで活性化し、会員への情報共有を進めます。この改正案は2023年度に各方面から意見をいただいた上で理事会承認され、2024年度から実施することになりました。

(4)学会横断テーマ

気候変動や少子高齢化などの社会的課題の解決や開発目標に、分野横断で取り組むために、2020年度より学会横断テーマとして議論を始めています。2023年度は年次大会において、「少子高齢化を支える革新技術の提案」、「持続可能社会の実現に向けた技術開発と社会実装」、「循環経済の実現に向けた機械工学の役割」、「未来を担う技術人材の育成」の各テーマがフォーラムを開催しました。また学会横断テーマとして活動してきたテーマのひとつが、「機械・インフラの保守・保全,信頼性強化に関する連携分科会」として2024年度より設立されることになりました。

(5)ワーキンググループ(WG)からの答申を受けて

2021年度より経営企画委員会のもとに3つのWGを設置し、2年間の議論を受けて2023年3月にそれぞれ答申が出されていました。

(5-1) 情報の事業化検討WGからの答申

これまでの書籍販売に代わる電子情報の有料配信サービスのコンテンツや課金方法などを具体化するため、出版センター内に情報の事業化検討委員会を設置することが決まりました。また機械工学便覧の次期改訂については、機械工学便覧発刊準備委員会を設置し、目次編成や電子版を前提としたプラットフォームについて検討することになりました。

(5-2) 技術者継続教育検討WGからの答申

講習会の一覧はホームページ上で、レベル別、分野別に掲示されていますが、年度内に計画されている講習会の全体を体系的に把握することはできません。これは各部門や支部での講習会企画のタイミングがまちまちであるためです。WGからの答申を受けて、人材育成活躍支援委員会内に講習会企画を統括するための小委員会を設置し、各部門や支部と連携を密にし、より計画的で体系的な講習会情報を提供していきます。

(5-3) 年次大会活性化検討WGからの答申

年次大会の課題は、この20年の間に参加者も講演発表件数も減少傾向が続いていることです。専門領域で学術的な交流を目的とする部門講演会と、分野横断で広く社会課題の解決を議論し、領域を超えた会員同士の交流を目指す年次大会の両立を目指して、2023年度より年次大会企画委員会を設置して検討を開始しました。

図8 年次大会の講演数と参加者数の推移

(6)機械工学振興事業の見直し

機械工学振興事業は会員の皆様からの寄付金を原資に、主に小中高校生を対象として機械工学に親しんでいただくための各種イベントを開催してきました。2023年度からは事業範囲を拡大し、従来の事業を「メカライフ振興事業」に位置付けて推進するとともに、さらに広報や社会貢献も含めた新しい事業の提案も実現できる体制としました。そして会員の皆様には、寄付金の使途をよりわかりやすく報告してまいります。

(7)その他の取り組み

(7-1) 若手の会

「若手の会」は40歳位までの会員による組織です。若手会員の増強並びに活性化を推進するため、若手会員自身により本会の魅力度向上に資する施策の立案・実施、若手会員の交流ネットワークの構築を行うことを目的としています。2023年度は退勤後の時間を活用したオンライン若手技術者交流会や、博士課程の学生やポスドクを対象にしたコースドクター交流会を開催し、博士人材が活躍する企業との交流を通してキャリア形成を支援しました。

(7-2) 若手会員の資格継続施策

2023年度は新たに「若手会員のための資格継続キャンペーン」を実施しました。これは、本会主催の講習会に有料参加した40歳未満の正員を対象に、申請により翌年度の会費を免除するもので、110名(企業所属55%、学校所属27%、官公庁その他18%)の申請がありました。

(7-3) 多様性

世界に開かれた多様性に富んだ学会の実現に向け、Ladies’ Association of JSME(LAJ)やJSME International Union(JSME-IU)などの委員会が活動しています。LAJ委員会では、各支部とダイバーシティ交流会、女性エンジニア交流会を開催するとともに、同委員会が中心となり「メカジョ未来フォーラム2023」をオンラインにて開催しました。機械系女子学生50名が集まり本会特別員企業19社と交流しました。また、JSME-IUでは、「Symposium for International Students」や「海外研究者による研究紹介」等のイベントを開催し、積極的な情報発信を行いました。

(7-4) 広報・情報活動

毎月の会誌のほか、学生員を対象とした情報誌「ねじあわせ」を春・夏・秋に発行しました。本会WEBサイトは、年間約500万アクセス・50万ユーザーの利用があり、若手会員減少とは対照的に多くの20代~30代(年間16万ユーザー)に利用されています。

主な事業

(1)年次大会

2023年度年次大会は9月10日(日)~13日(水)の4日間にわたり東京都立大学で開催しました。講演件数は813件(口頭発表456件、ポスター発表357件)、有料参加者数は1,599名(正員880名、特別員63名、会員外97名、学生員536名、一般学生23名)でした。技術展示には19社が参加し、学生対象の企業セミナーは3日間にわたり開催され、31社が参加しました。

図9 年次大会の様子(左:フォーラム会場、右:ポスター会場)

(2)部門活動

2023年度には部門主催の国内講演会が26件、国際会議8件が開催され、有料参加者数は延べ9,500名に上りました。また2023年度は20件の行事が分野連携企画として開催されました。部門主催の講習会は66件開催されました。また分野連携企画は20件が実施され、年々活動が拡がっています。そのため部門間連携行事における表彰制度も新たに設けました。

図10 部門講演会の開催数と有料参加者数

(3)支部活動

2023年度も各支部では支部講演会や学生員卒業研究発表講演会が開催され、8支部総計では、支部講演会で1,038件、卒業研究発表会で1,253件の講演発表がありました。7~8月に実施された会長の各支部訪問や支部協議会では、各支部の課題と対応策、各支部の特別行事の紹介や横展開を、また本会の課題である会員減少や学術誌掲載数の減少などについて意見交換されました。各支部のシニア会からも、小中学生を対象とした機械工学に親しむ活動などに支援いただきました(表3)

表3 シニア会

(4)学術誌

学術誌への投稿数や掲載数は減少傾向が続いています(図11)。この減少を抑制し、増加に転じさせるための施策を検討しています。ひとつは部門講演会や年次大会の講演発表から学術誌への論文投稿を促すことで、そのために特集号の企画を活性化していきます。学術誌の国際性を高めるためにも、海外の研究者にエディタに加わっていただくことも検討します。また昨年度はMechanical Engineering Reviews(MER)誌を休刊としましたが、レビュー論文の有用性に鑑み、特集号にレビュー論文と原著論文を掲載することとしました。また論文投稿から採択までの平均審査期間は100~160日と長く掛かっているのが課題です。審査期間を1~3か月程度に短くするため、校閲の仕組みを見直していきます。

図11 学術誌の投稿数と掲載数

(5)機械の日

2023年8月7日に、都内御茶ノ水駅近くの商用施設ワテラスコモンにおいて、記念講演、機械遺産認定式、絵画コンテスト優秀作品展示を行いました。絵画コンテストには68件の応募がありました。

(6)機械遺産の認定

機械遺産として新たに4件を認定し合計120件になりました(図12)。また「機械遺産の総合的な見直しWG(主査:長島 昭)」の答申を受けて、認定の対象・指針の見直しを検討する「機械遺産事業委員会(第1期:準備会)」を設置しました。

図12 2023年度機械遺産

(7)表彰事業

2023年度本会会長名による表彰は表4の通りです。

表4 2023年度表彰

(8)出版事業

今年度の新規出版物として新刊3点、重版32点を発行しました。ここ数年新刊が少ないことから出版事業の売上は減少傾向にあるため、テキストシリーズの価格改訂、表紙デザインのリニューアルを行い収益の改善を図りました。2023年度の売上高は2022年度と比べて約180万円の微増となりました(図13)

図13 出版事業売上の内訳

さらなる書籍の発行数増加が必要であるため、新刊「やさしいテキストシリーズ」の発刊を企画しています。また、情報の事業化委員会を立ち上げ、電子出版等を含めた今後の発行形態の検討を進めます。

(9)資格認定・認証事業

機械状態監視診断技術者試験では、振動分野は2回(受験者310名,合格者256名)、トライボロジー分野は1回(受験者60名,合格者56名)の資格認証試験を実施しました(図12)。その他、更新認証を行いました。計算力学技術者資格認定試験では、1,2級認定はCBT(Computer Based Testing)を導入し、上級アナリスト認定、初級認定(書類審査)を行いました。固体力学(受験者859名,合格者364名)、熱流体力学(受験者516名,合格者308名)、振動(受験者282名,合格者122名)の3分野にて認定試験を実施しました(図14)

その他、国際相互認証、更新認定を行いました。また2024年3月24日には、計算力学技術者資格認定事業20周年式典が開催されました。

図14 認定・認証受験者推移

(10)JABEE事業

JABEE事業委員会では機械関連分野についての審査委託を受けています。2022年度の残りの審査7件(継続6件,中間1件)に加えて、2023年度は8件の審査のうち1件(継続1件)をオンラインで実施しました(残り7件の審査完了は2024年度になります)。JABEE新人審査員の講習会は、本会の年次大会で対面にて開催しました。また2024年11月にはJABEE創立25周年記念行事が計画されています。

(11)発電用設備規格

火力および原子力発電プラントの機械設備(機器、配管等)を安全に設計、製造、運転、維持するために発電用設備規格の制定(改定)を行っています。2023年度は本会から3件の規格を新刊として発行しました。2022年度から規格の電子化も行い、サブスクリプション方式での閲覧サービス(日本規格協会より)およびダウンロード販売を行っています。

10年ビジョンとアクションプラン(2016年度制定)

日本機械学会は、国際的な視野から学術界・産業界をリードし、今後ますます複雑化する社会の要請に応えていきます。広範な分野を取り込みイノベーションへとつなげていく横断的総合技術としての機械工学の強みを活かし、社会を変革する場であり続け、それを担う人材育成に貢献します。そのため、今後10年間に本会が目指すべきビジョンを以下に定めます。

キーワード: