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2024/5 Vol.127

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取組方針

2024年度取組方針と日本機械学会の現状

2024年度取組方針

1 会員サービスの拡充による本会価値の向上と会員の活躍支援

本会の会員数はこの30年で3分の2にまで減少しています。会員であることの価値が時代とともに変化している中、本会の提供するサービスが会員の求めに十分に応えきれていない可能性があります。そこでいま一度、会員サービスを見直していくことが必要です。会員に毎月届けられている会誌においては、これまでも改善を進めてきましたが、今後も掲載内容の改善を図りつつ、会員にとって魅力的な情報の提供に努めます。特に日頃業務に追われて学会から遠のいている企業所属の会員の皆様にも、最新の技術情報をわかり易く解説した記事を届けてまいります。

部門や支部では多くの講習会が企画されていますが、その体系化された情報を会員にいち早く届けることで、会員が計画的に受講できる仕組みを整えるとともに、若手技術者のキャリア形成の支援を強化していきます。会員個人の技術者としての活動履歴を、会員が相互に認証するジョブキャリア認証制度も導入を検討します。そして学生や若手会員を対象に若手講演発表表彰など、贈賞の機会を増やしていきます。さらには若手の会を中心に、若手会員が主体的に参画できる企画を進め、若手会員が高い意識で価値を共有できる学会を目指します。一方で各支部におけるシニア会の活動を支援し、経験豊富な方々の知識と技術を活かしながら、機械工学の面白さを次の世代に伝える活動も一層強化して行きます。

本会の価値が高く評価されてきたのは、充実した学術誌の質の高さにあります。しかしながら本会の学術誌は1998年に2,000件を超える掲載数を誇りましたが、今やその4分の1にまで減少しています(図1)。この傾向に歯止めを掛けるため、特集号企画による講演会からの投稿促進や、和文誌から英文誌への条件付き再録の推薦、校閲期間の短縮など、いくつもの施策を展開しながら、学術誌の価値向上を目指しています。現在、英文4誌にインパクトファクターが付与されていますが、より多くの方々に閲覧され、引用される機会を増やすためにもレビュー論文の活用も進めて行きます。そして何より、会員の皆様からの積極的な投稿をお願いします。


図1 本会の学術誌掲載件数の推移(1978~2023年度)

2 分野連携による学術活動の更なる活性化

2020年度より試行され、昨年度から本実施となった新部門制は、部門間の交流を促進することで、新分野の開拓や社会的課題の解決に貢献していくことを目指しています。また講演会や講習会における分野連携企画など、部門を横断した活動への支援を強化して行きます。

同じく2020年度から始まった学会横断テーマによる活動は5年目に入ります。機械工学の総合学会である本会の裾野の広さを利用して、より分野を広めた活動を展開していきます。議論の過程で新分野開拓の必要性が認識されれば、新たな分科会活動に移行できるよう支援を強化していきます。支部活動においても各支部の活動事例を共有し横展開することで、機械工学の啓発や社会貢献の拡充につなげます。また地域の企業と本会の連携を一層強化し、産学連携による地域経済の発展を支援していきます。

毎年9月に開催する年次大会は、多くの会員が一堂に会して、学術や技術の情報を交換するとともに、互いにネットワークを築く重要な機会を提供するものです。専門領域での学術を追求する部門講演会に対して、年次大会では多くの分野から会員が集まり、部門を横断して社会課題を取り上げるなど、分野を超えて会員同士が交流できる大会を目指しています。そして年次大会は、社会と研究者・技術者の橋渡しをする場でもあります。大学や研究機関のみならず、企業など各方面で活躍されている会員が、いわばフェスティバルに参加する気軽さで集える大会になるよう努めていきます。

2024年度の年次大会は愛媛大学で9月8日(日)〜11日(水)に開催されます(図2)。非日常の場で多くの会員が参加し、語り合える年次大会になることを期待して、皆様の積極的なご参加をお待ちしています。

図2 2024年度年次大会〔9月8日(日)〜11日(水),於 愛媛大学〕

3 創立130年に向けた本会の体質強靭化

本会は2027年に創立130年を迎えます。そして今後も本会が発展しつづけることが、社会に対しての責務でもあります。そのためには、将来を見据えて大胆な改革を進めなくてはなりません。本会の課題のひとつに代表会員の選挙制度があります。現在、代表会員は支部と部門から推薦された候補者の中から選挙で選ばれますが、支部と部門で定数にアンバランスがあること、また推薦した候補者が必ずしも当選するとは限らない仕組みになっていることから、候補者推薦プロセスや選挙方法の改善が求められています。代表会員制度は本会の骨格を形成する重要な仕組みであり、会員の皆様との合意形成のもとで改革を進めて行きます。

また本会の収益事業に出版事業があります。社会がデジタル変革に進む中で、出版事業の在り方も変えていく必要があります。本会には会員を通して多くの技術情報が集約し蓄積されており、これを出版物に代えてデジタル情報として会員に提供するサービスが考えられます。今年度から出版センターの中に情報の事業化委員会が設置され、デジタル情報のプラットフォーム創りとその提供方法の検討を進めて行きます。

機械工学便覧は機械工学の集大成として1934年の初版発行以来、これまで改訂を重ねてきました(図3)。本会にとって社会に貢献する貴重な成果物でもあります。これからのデジタル時代に相応しい編集方針を議論し、新たな時代に向けて準備を開始します。これから多くの会員の皆様にご尽力をお願いすることになりますが、本会が次の世代に贈る至宝となるべく、ご支援をよろしくお願いします。

図3 10年ビジョンと2023年度重点施策

日本機械学会の現状

1 会員数の状況

2023年度末(2024年2月末)の会員数は個人会員が30,284名、特別員が644社となり、2022年度末より個人会員が906名、特別員が3社減少しました(表1)

表1 会員数の状況

2023年度は個人会員として5,096名(正員777名、学生員4,314名、会友5名)が入会しましたが、会費滞納による資格喪失を含めた個人会員の退会者は6,002名で、会員数は2022年度末より906名減少しました。特に学生員と卒業後3年以内の正員の退会者や資格喪失者数が前年度より約500名多く、減少の主な要因となりました。これは入会時期がコロナ後に本会行事が復活したタイミングで、当時の入会者が前年度より約700名増えたことと符合します。また企業所属会員の減少傾向は続いており、2022年度末と比べ約500名が減少しています(図4)

図4 所属別正員数の推移

企業に所属している会員が減少している理由は、若手の会員が少ないことにあります。企業所属の正員の年齢分布は、40代前半以下の若年層が少ない構成になっています(図5)。この年齢分布は、全体が少し下がりながら毎年1年分右に移動しますが、60歳以降の「定年の壁」は移動しないことから、会員数が大幅に減少する構造となっています。企業所属の会員の減少を止めるためには、若い会員層を増やしていく施策が必要です。

図5 企業所属正員の年齢分布

学生員の多くは卒業して社会人になると本会から離れてしまいます。学生員が卒業して5年後に継続して本会の会員でいる割合はわずか5%強です。若手会員にとっての魅力度を向上することで、学生員の卒業後の継続率を向上することが重要な課題となっています。

2 財務の状況(2023年度決算)

2023年度の経常収益は963百万円、経常費用は911百万円で、経常収支は51百万円の黒字となりました。なお売上部数の多いテキストシリーズの価格改定に伴い、旧版廃却費17百万円を経常外として損失計上した結果、一般正味財産は34百万円の増額となりました。指定正味財産は保有株式評価益と表彰(三浦賞)基金の収入があり100百万円増となりました(表2)。その結果、正味財産は前年に比べ約134百万円増の1,691百万円となりました。経常費用が昨年度と比べて大きく増加した理由は、これまでコロナ感染対策として抑制されていた会議費が104百万円、旅費交通費が15百万円、それぞれ前年度より増加したためです。

表2 2023年度決算

なお会費収入は276百万円となり、会員数減少の影響で昨年度より約9百万円少なくなりましたが、事業全体では収入も支出もコロナ前の規模に戻りつつあります(図6)。事業別には出版事業で19百万円、本部事業で25百万円の収支差プラスとなり、本部特別事業で▲12百万円、会誌事業で▲42百万円、実施事業で▲43百万円の収支差マイナスとなりました(図7)。また部門事業と支部事業は、それぞれ交付金を除いて、▲9百万円、▲46百万円の収支差マイナスとなりました(図7)。

図6 経常収支と正味財産の推移

図7 正味財産変動要因(2023年度、単位:百万円)

 

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