絶滅危惧科目-基盤技術維持のための再考ー
第4回 化学工学は「絶滅危惧学科」か
化学工学と化学工学科の歴史
時代とともに大きく変遷してきた
本シリーズのテーマは「絶滅危惧科目」であるが「絶滅危惧学科」という語もあり、「絶滅危惧学科」が論じられる際には必ずと言っていいほど化学工学について言及される。そこで、本稿ではまず化学工学・化学工学科の歴史をたどり、その変遷の原因と教育内容に与える影響について考えたい。
化学工学の最初のテキストは、W.H.Walker, W.K.Le wis, W.H.McAdamらによる「Principles of Chemical Engineering」(1923年)と考えてよいだろう。彼らはMITの教授であると同時に石油産業のコンサルタントでもあり、「Principles of Chemical Engineering」では石油産業や化学工業における装置設計・運転の経験や技術が、単位操作の概念で整理され体系づけられている(1)。単位操作とは、製造プロセスを構成する諸操作を分類し、共通の機能でまとめたもので、蒸留、混合、抽出、撹拌、反応などの要素から成る。化学工学は単位操作を体系化した学問として誕生したと見ることもできる。単位操作の確立やWalkerらのテキスト出版の背景には、19世紀後半からの米国での大規模油田の発見・開発、20世紀初頭のガソリンの発明、自動車の大量生産、石油化学産業の勃興があった。
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